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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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148/847

生きるためなので。①

それぞれの部屋を調べに行っていたメンバーが戻ってきた。


白衣の老人3人は、手のひらサイズの魔物に魔力結晶を与えて、実験をしていたらしい。

その内1匹を小さな箱ごと持ってきて、アイザックが老人達に質問を重ねていた。


難しい話はわからないけど、爆炎のガルフとファルーアが中心になって、シュヴァリエとアイザックが加わり、白衣の老人達とドーアを交えてゾンビ化の原因について話しているみたいだ。


グランとボーザック、俺は暇をもてあましていたので、ディティアとラムアルに付き合ってお茶を飲んでいた。

菓子白薔薇は最後のひと箱で、俺はラムアルにそれを差し出す。


「とりあえず、ドーアはギルドで保護するわ」

ラムアルが言い出すので、頷いておく。


彼女は菓子をひとひら摘まむと、驚いた。

「何これ、美味しい」

「すごいだろ」

笑ってみせると、2枚3枚と摘まんで、ラムアルがほっ、と息をつく。

「ディティアが言ってたわね、お菓子になったって」

「あっ、うん!そうなの!」

「落ち着いたら、城でお茶をしないとね。これに合うお茶を淹れるわ!」

うふふ、と笑い合う2人に、ボーザックが不思議そうな顔をした。

「そういえば水と油みたいだったのに、仲良くなったね」

彼の足元には、銀狼がぴったり寄り添ってもふられている。


そっちも随分仲良くなったと思うけど。


そっと手を伸ばしたら、フェンがフンっと鼻を鳴らして身体を捻った。

……酷い待遇である。


******


「ドーア、ドーア。いるー?」


その声がしたのは翌日。

俺達はそのまま根城の一画に泊まり込んでいて、昼食の準備を済ませたところだった。


まさにテーブルを囲んで食べようとしていたので、そこには生温い空気が漂っている。


「お、何かいい匂い…………ってお兄さん!?何してるのさ!?」

「よおフォルター」


ひょいひょいと軽い足取りでやって来た、白に金を混ぜたような金髪に明るい鳶色の眼の青年は、あどけなさを残した顔で盛大に驚いてくれる。


中々いい反応だ。


「やあ、その節は世話になったね」

何故か俺の横に座っているシュヴァリエが、爽やかな空気を撒き散らしながら、ふふっと笑った。

「げっ、ちょっとお兄さん!その人は反則だって!!」

「あれ?フォルター、知り合いなんだね?」

ドーアがフォーク片手に眼をぱちぱちさせる。

「ドーア……君、自分の状況わかってる?」

「うん。この人達はギルドから来たんだって」

「そうだけどそうじゃなくて……」

フォルターは頭を抱えて首を振ると、はあー、とため息を付いて、空いていた席に座った。


「まあ、どうせ?この人数相手じゃ良くて相打ち……十中八九オレ助からないし。お兄さん、オレも交ぜてよ、お腹空いた」

はあー、とため息をつきながら、フォルターは隣にいたディティアに眼をやった。


「……………」


「うん?……な、何かな?」

ディティアが首を傾げて、眼をぱちぱちする。



「って、ええー!?疾風!疾風のディティアだよね!?本物!?いや、白薔薇だとは知ってたけど!どうしよう、オレ、ファンなんだよね!」

転がり出そうな程眼を見開いて、フォルターは仰け反った。



「ほお、ご指名だぞディティアー」

「ぐ、グランさんっ、そういうのは茶化さなくてもいいんです!」

ディティアがわたわた手を振り、グランが笑う。

「さ、触ってもいい?」

そろそろと手を出すフォルター。

ディティアは困惑したのか同じようにそろそろと手を出す。

フォルターはそれをぎゅっと握ると、項垂れた。

「やばい、お兄さん、オレ今すごい」

「いや別にすごくないから。早く放せ」

思わず突っ込んで顔をしかめると、フォルターはいやいやするように首を振った。

「やだよ放さないよ」

「さすが、疾風のはやるね。けれど、そろそろ放してもらおう。彼女は将来グロリアスに入るのだから」

何故かシュヴァリエの援護射撃?が入ったけど、俺はさらに顔をしかめたはずだ。

「入らない!」

「入りません!」

ディティアも自分で否定して、手を引っ込めた。

「白薔薇辞めるつもりはないんだねぇ」

フォルターが名残惜しそうに手を握ったり開いたりしながら言うと、ドーアが声をあげた。


「ねえ、とりあえず食べようよ。うちらお腹空いたんだけど。……あと、白薔薇ってどういうこと?」


******


「君達白薔薇だったの!?何で言わないのさ!!」

「わしらは違うしのお」

ガルフが楽しそうに言うと、ドーアはわなわなと肩を震わせた。

「うちら、昨日の夜を無駄にしたんだ……」

「大丈夫よ。白薔薇だって名乗ってても、貴女が知りたい情報は何一つ教えないわ」

ファルーアがいじめっ子みたいな発言をする。


いや、事実ではあるんだけどさ。


「そんな!これから絶対に役に立つ薬になるのに?」

食い下がるドーアに、今度はラムアルがふんと鼻を鳴らす。

「これから?……武勲皇帝にも、あたしの弟達や妹達にも、もうこれからなんてないわ?」

「…え…弟、妹……?」

「そういえば名乗ってなかったわね。ラムアル・ヴァイセン。新しい皇帝を継いだわ。あたしの兄弟姉妹達は、2人を残して死んだのよ」

聞いていたフォルターが、口の中いっぱいに食べ物を詰め込んだまま、あーあ、と言う。

「……それでもまだ言えるのかしら?」

「そ、それは……でも」

「んぐ。……ぷっはあ、まあまあラムアル皇女、いや、もう皇帝なんだね?それくらいにしてやってよ。ドーアは、何も知らないんだから」

フォルターは葡萄酒で満たされた杯を、一気にあけた。

そして、自分の杯だけでなく、ラムアルの杯にも継ぎ足す。

とぽ、とぽ、と、液体を注ぐ音が食卓に響いた。


他の皆は黙々と食べることを選択し、俺もそうすることにする。


「ふん、いいわ。それじゃああんたが聞かせてくれるのね」

ラムアルはその杯を一気にあけると、葡萄酒の瓶をフォルターに向けた。


フォルターは、同じように杯をあけ、にやりと笑うとグラスを差し出した。



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