何故活動してるのですか。⑥
サンプルは持っていても仕方ない。
約束だからと渡すことにした。
ドーアと老人達は反抗する気配も無く、しょんぼりと肩を落としながらも、手に入ったサンプルを大切に大切にしまった。
今実験をさせるわけにもいかないしなあ…。
とりあえずフォルターが来るまで、俺達もここに籠もることになる。
「それで、うちらはどうなるのかな……」
ドーアが言うので、ラムアルを見た。
ラムアルは俺を見て首を竦める。
「な、何か思ってたのと違うのよ!……この子処罰しても、何か違うっていうか……」
隣にいたディティアが、くすくすと笑った。
「ディティア、笑うことないじゃない」
リンゴみたいに赤くなるラムアル。
「ふふ、ごめんごめん。……確かにドーアさんは何も知らなそうだしね。…ラムアルは優しいなあと思って」
優しいねえ…。
潰すわ、とか言ってたけどなあ。
心の中で突っ込みを入れて、俺は聞いた。
「なあドーア。ダルアークって何人くらいいるの?」
「え?……うーん。うちらみたいに実験してるのは全部で……10人くらいかなあ。魔力結晶について知りたいだけの変人ばっかりだから、ここは害は無いと思う。ダルアーク全体はわからない」
「ふーん。実験担当は皆薬を作ってるのか?」
「ううん。発掘されるのは古代都市からばっかりで、色々と謎な結晶だから、何で出来ているとかどうやって造るとか、そんなのをやってるのが殆どだね。むしろうちらが薬に集中してるだけ」
「やっぱり大半は魔力結晶を造りたいんだな」
「うん。……でも、何ていうのかなあ。皆、研究がしたい、造ってみたいってだけでダルアークにいると思うよ。待遇いいんだ、ここ」
「へえ……じゃあ造って何かしたいとか無いの?」
「うちらは、薬にしたい。世界中の病気の人が助かるはずなんだ!って思う。……でも、他の人は違うと思う。……本当に、変人ばっかりだから」
「ふーん……」
言いながら、俺はゆっくりと考えを巡らせた。
ドーアは、特殊だ。
ダルアーク本体が考えていることはわからない。
けれど、少なくとも魔力結晶を欲していることはわかる。
それを何に使うつもりでいるんだろう?
「白薔薇がここに連れてこられたら、何を聞きたいの?」
そこに、ディティアが割って入る。
ドーアは、顔を上げて、唸った。
「魔力結晶の造り方は聞くよね。……でも、うーん。王族や皇族に会って、何をしようとしてたのかな、とは思う」
「皆で仲間になろうって言ってたとしたら?」
「……仲間?魔力結晶で?」
「うん」
「……無理だね。魔力結晶は、たぶん古代都市のライフラインだったはずだよ。今は廃れてるし理由はわからないけど、そんな凄い力なんてさ、仲良く分け合うふりをしながらお互いを監視するためのものでしょ」
ディティアは、その意見に目を見開く。
俺も、半分は納得してしまった。
「でもさ、お互いの抑止力になるってことだろ。ダルアークみたいに国を1個潰しそうになるよりいいんじゃないか?」
残りの半分を言葉にすると、彼女は笑い出した。
「ふはっ、なるほどね!物は言いようだよね。ふははっ」
「そ、そんな変なこと言ったか?」
「ううん、うちは捻くれてるなーって思ってさ。確かにそうだね。そっちに賭けて国をまわってるなら、白薔薇はお人好しだと思うけど。どっかの国と組んで研究すればいいのにさ」
「……そうかなあ?」
「そうだよ」
ドーアは、ゆっくりと指をテーブルの上で動かした。
「国ってやつと仲良くなんて、早々出来ないことだから。それなら利用すればいいのにって思うよね?ただ、何で全部の国を回ってるかわからないけど、もし仲良くするためなら、ちょっとくらい応援するかも」
俺はディティアと顔を見合わせた。
国同士が仲良くするために、俺達はまだ魔力結晶の造り方を開示していない。
それは、ドーアが言うように、それぞれの国を利用していることになるんじゃないか?
本当に、俺達で国同士を取り持つことが出来るのだろうか?
……答えは出なかった。
5月9日分の投稿です!
遅くなりました!
毎日更新していますが、見ての通りずれることも。
申し訳ないです……。




