何故活動してるのですか。④
程なくして。
ボーン、ボーン!
派手な爆発音が洞窟を震わせた。
ぱらぱらと砂が落ちてきて、ちょっと不安になる。
「大丈夫かな、この洞窟」
ボーザックが顔をしかめて、アイザックが笑い飛ばした。
「崩れたときは一緒に骨になろうな!」
「洒落にならないわね…」
ファルーアが心底嫌そうな顔をする。
「何でも良いわ!とりあえずボス以外は5人未満!ふたりでひとりやっちゃえばいいなんて楽勝ね!」
ラムアルがにやりと笑みをこぼし、レイピアを抜き放つ。
俺達もそれに倣って、武器を構えた。
「暴れるわよ!」
本来の目的と違う気はするけど、まあラムアルだしな。
俺は白薔薇の皆と眼を合わせ、頷く。
「反応速度アップ、肉体強化、肉体硬化!」
「持久力アップ、威力アップ!」
最初の反応速度アップは全員に。
肉体系を前衛、持久力と威力アップをメイジふたりとアイザックに。
「行くとするか!」
俺達は、グランに続いて走りだした。
……石の階段を駆け上ると、いるいる。
どう見ても実験してましたって感じの白衣姿が3人。
彼等は上がってくる俺達に気がつくと、くひゃぁ!と変な声を上げて逃げ出した。
「って、逃げるのかよおい」
グランの突っ込みが聞こえる。
「速度アップ!」
俺は反応速度アップをかき替えて、彼等を追いかけた。
「や、やめろぉ!何だお前達は!」
「わ、わしらは金なぞ持っておらん!他をあたれ!」
白衣姿の3人は全て男。
しかも、だいぶご高齢である。
上がった先は広場になっていて、俺達が出てきた道の他に三本、通路が延びていた。
1番大きな道は上り坂になっていて、突き当たりには一際大きな扉が見える。
ごちゃごちゃと箱やら瓶やらが散乱した広場は、資材置き場なのかもしれない。
「ちょっと、何だか私達、賊扱いされてないかしら?」
ファルーアが呆れた声で言いながら、ロッドを振り上げる。
ぼ、ぼん。
「くひょあ!!」
白衣姿の先頭にいた男の足元で、炎が弾ける。
3人の老人は転げるように壁際に逃げた。
「わかった、わかったから!命だけは!」
「いや、別に命もお金も取らないけどさあ……」
何だか想像と違う。
振り返ると、皆も……あのシュヴァリエでさえ苦笑していた。
「どっちもいらないわ!ボスはどこ!」
そんな中ひとり、勢いそのままのラムアルがふんっと鼻息荒く仁王立ちして問い掛ける。
3人の老人は壁際に身を寄せ合って、上を指した。
あの、1番大きな扉だ。
「さっき、ちっこいのが2人、走って行った!突き当たりの部屋だ!」
「わかったわ!」
ラムアルがいち早く走り出してしまう。
おいおい、この3人どうするんだよ。
「逆鱗の。この人達は僕らで受け持とう。上は面倒そうだからね」
シュヴァリエがさり気なく押し付けてきた。
「困ったわね、爆炎のガルフ。どうもここでは見せ場は無さそうよ?」
「ほっほっ、運もまた実力の内かのう」
楽しそうなメイジふたりに、グランが声をかける。
「仕方ねぇな……ファルーア、行くぞ」
「ええ」
俺達白薔薇は、グロリアスを置いてラムアルを追いかけた。
******
扉の先は……うん、何て言うか、そうだな……魔女の家だった。
紅く光る石が大量に転がっていて、火に掛けられた中身がこぽこぽと沸騰する巨大な器が3つ、中央に並んでいる。
中身も真っ赤だったし、部屋全体が紅い感じだ。
彼方此方に吊り下がるのは骨だったり、ドライフラワーだったり、何かの羽根だったり。
うっすらと靄が立って見えるのは気のせいなのか、甘いような苦いような奇妙な臭いがしていた。
そして、その中央の釜と思しき器の横に、すっぽりと黒ローブを被った性別もわからない奴がひとり立っている。
その横では、先に行ったシャルアルと疾風のディティアが、武器を構えたままじっとしていた。
……何か、変な空気だ。
「シャルーー!!」
「って、おい、待てラムアル!」
そこに、先行していたラムアルが素晴らしい速度で突っ込んでいく。
グランの制止なんてこれっぽっちも聞いてない。
「…………ッ!!」
驚いたのか、びくりとした黒ローブの手から何かが跳び上がり、落ちて…。
「あっ!」
「あ」
ディティアと、シャルアルの声が聞こえた。
とぷん。
「あああーーーーッ!!」
黒ローブの、絶叫がこだました。
******
「どうすんの?ねえ、どうすんの!」
「だ、だからごめんってば……」
「ごめんで済むなら皇帝はいらないっ!」
「た、確かに武勲皇帝は謝っても許してくれないこともあっけど!あたしは違う……」
「あんたのことは聞いてないっ!」
かれこれ30分はこうしているだろうか。
よくわからないけど、黒ローブの話の断片を拾うとこんな感じだ。
魔力結晶を薬にすることで、不治の病すらなんとかなる可能性がある。
魔力結晶に魔物の血を吸わせて使うことで身体能力の回復、向上が確認出来た。
しかし実験してみたら中毒者ばっかりで使い物にならない。
しかもゾンビ化?ふざけんな!
その症状がおきないようにする薬を作っていた。
そのためのサンプル、最後の1つがラムアルのせいで釜にとぷん。
黒ローブお怒り。
まあこんな感じだろう。
呆れて見守っていた(情報もぽろぽろこぼすし)けど、そろそろ皆も面倒そうだ。
俺は口を挟むことにした。
「えーっと、黒ローブさん。声からして女の人?……あんた、ダルアークの……えぇっと」
「ドーア」
シャルアルが小声で教えてくれる。
「そう、ドーアだろ?俺達はギルドから来たんだけど、ダルアークの討伐依頼が出てる。……えっと、協力してくれたら何もしないけど……そのサンプルって何なの?」
気になって、最後は聞いてしまった。
黒ローブは状況がわかったのかわからないのか、肩を怒らせて言った。
「サンプルは魔物の血を吸わせた魔力結晶!もう無いの!帝都もおかしくなったし!!」
「…………あー」
グランは、懐から包みを取り出した。
そう。
俺達は、それを持っていた。
本日分の投稿です。
ヴァイス帝国編から、ダルアーク編へと移りましたー。
毎日更新していますので、良かったらまた来てあげてくださいね!
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