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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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144/847

何故活動してるのですか。③

日は既に暮れかけ。

海へと沈んでいく太陽が、あらゆるものに長い影を落とさせている。

オレンジ色の夕焼けは、ラムアルとシャルアルの炎色の髪と混ざり合って、なんとなく2人が太陽に特別愛されている様に見えた。


根城はひっそりと静まりかえっている。


砂浜沿いにぽっかりあいた巨大な洞窟が見えるんだけど、その奥がそうだという。


多少高い波もシャルアルが言うにはいつも通り。

それなのに、人影ひとつ見当たらない。


五感アップもかけているけど引っかかるような気配も無かった。


「朝まで待っても良いし、このまま攻めてもいい」

シャルアルが、岩陰に身を潜ませて、小さくささやいた。

「そうね……閃光のシュヴァリエ、こういう時はどっちがいいのかしら」

ラムアルが、後ろにいたシュヴァリエに確認を取る。

「おや、僕の助言でいいのかいラムアル皇帝」

「いいから聞いてるのよ。悔しいけど冒険者としては貴方の方がすごいもの」

「それはいい傾向だね。ただ、それ以外でも僕は君に負ける要素は無いよ、皇帝」

「そんなこと無いわ。未来の婿には不自由させないつもりよ」


……。


聞いてる方は面倒くさくなる会話である。


「いいよどっちでも……ほら、行こうぜラムアル」

俺はどうでも良くなって口を挟んだ。


「俺も賛成だ、待ってるのは性に合わねぇし」

グランが援護射撃。


「逃げる準備とかしてるかもしれないし、とりあえず中の様子は知りたいな」

ディティアも言うと、ラムアルが苦虫をかみつぶしたような顔をした。

「ディティアがそう言うなら……」


あ、俺の意見はスルーですか、そうですか。


「ははは、さすがだね逆鱗の」

「お前、馬鹿にしてるだろ……」


「はいはい、とりあえず行くわよ皆。シャルアル、先導をお願いね」

ファルーアがまとめて、俺達はそろそろと洞窟へと入った。


******


〈これは……〉

入口から少し進むと、すぐにそれが目に飛び込んできた。


ぼんやりと光る、親指ほどの紅い石。


それがガラスのコップみたいなのに入れられて、通路の彼方此方に置いてあったのだ。


〈ランプの代わりにしているんだわ……明るい〉

ファルーアがささやく。


血結晶。

それに魔力を込めて、光らせているのだ。


根城の中はごつごつとした岩場かと思いきや、意外にも滑らかな岩肌を晒していた。

増水した時には、俺がすっぽり隠れるくらいは浸かるようで、俺の頭くらいの高さから壁の色が違う。


通路は3人並んでも余裕があるほどで、天井も大分高い。

シャルアルが船もあるって言ってたし、水が入ってくる間は船で移動出来るようになっているんだろう。


〈あ、そうか……これが魔力だとしたら……魔力感知〉

俺はバフを広げる。

総勢11人はすっぽりと入れることが出来るようになっていた。

まあ、フェンには申し訳ないけど。

すました顔で前を歩く美しい銀狼に、心の中で謝っておく。


奥の方に向かって、魔力が濃くなっているのが見える。

つまり、奥にはもっと多くの結晶があるはずだった。


〈へえ、こんなバフあるのね!〉

魔力の集まりを視覚化するこのバフに、ラムアルは興味津々できょろきょろした。

〈あっ、ハルトの腕輪、すごいわね。……宝石、エメラルド?……何これ綺麗〉

俺は苦笑した。

目聡いなあ、ラムアル。

〈ハイルデン産のエメラルドに魔力がすっごい含まれてるんだ。こいつを軸にしたらメイジやヒーラーはすっごく助かるらしいぞ〉

〈ほー、そりゃあ、高く売れるな〉

アイザックが会話に参加する。

〈……すごい、あの国、そんなもの隠してたの?〉

〈なるほどな。それで奴隷業からすんなり足を洗えたのか〉

アイザックは納得したのか、俺の背中をばしりと叩いた。

〈いっ……!〉

痛い、すごく痛い。

〈やるな逆鱗の。そうか、そりゃあ奴隷制度廃止の英雄だなんて言われるよなあ!〉

〈何だ、知ってたのアイザック?〉

ボーザックが小さく笑う。

〈ああ。英雄白薔薇っつー噂はすぐ耳に入った。けど上手くいかないんじゃないかと疑ってたんだよな。製鉄しかない国で、重要な労働者だった奴隷達がいなくなるんだぞ?〉

〈誰が金払って雇うのかって話になるだろうしな。この宝石見付けたのはハルトだ。ハイルデン王も喜んでたぞ〉

グランも参戦。

奴隷制度なんて無いほうがいいって、俺は思ってるし。

新しい産業として、ハイルデン王マルベルがやってくれる。

だから、きっと大丈夫だ。

〈中々やるじゃないハルト〉

ラムアルからもお褒めの言葉をもらった。


敵の根城のど真ん中で、緊張感に欠けている気もするけど。


そうしている内に、シャルアルが、横穴を指差した。

〈ここ、部屋になってるから。いったん入って〉


入口からは上り坂になっていて、途中らせん状の坂も登った。

ここは水が入ってきても、もう浸かることがない高さにある。


中に入ると、シャルアルが音を立てずに扉を閉めた。


〈この先から、人がいる気配がする。私が人数を見てくる。合図で、突入してほしい〉

〈シャルひと…んぐ!?〉

ラムアルが眼を見開いて大声を上げそうになるのを、ディティアが制した。

〈私も一緒に行くねシャルアル。……合図は?〉

シャルアルはディティアに頷いて、手に魔力結晶を転がしながら、合図を教えてくれる。


ボスひとりなら爆発1回。


ボス以外に5人未満なら爆発2回。


ボス以外に5人以上なら爆発3回。


ボスがいなかったら、戻ってくるらしい。


〈もし、30分何も無かったら、突入して〉


〈わかった。……五感アップ、反応速度アップ、魔力感知〉

俺は2人にバフをかけなおして三重にする。


〈ありがとうハルト君。じゃあ、行ってくるね〉

〈行く〉


俺達は頷いて、そっと出て行く2人を見送った。


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