何故活動してるのですか。②
投稿再開です!
連休中はまちまちになりそうですが、
投稿はいたしますのでまたお読みくださるとうれしいです!
翌日。
太陽が昇り、帝都にも活気が出てきた頃。
俺達白薔薇は宿で朝食を済ませて、ギルドへと向かった。
「ふあぁ」
かみ殺すこともせず、盛大に欠伸をすると、少し前にいたディティアが首を竦めた。
「うう、やっぱり眠いよね?」
振り返るその表情は、申し訳なさそうだ。
ハの字になった眉毛の下、エメラルドグリーンの眼が潤みそうなほどだった。
俺は昨夜のことを思い返す。
…………
……
「まだ、ここが濁ってる」
「はい」
「こっちはちゃんと磨けてるね!こっちはどう見える?」
「はい、もう一回やってみます」
ディティアの徹底っぷりときたら、夜中まで続いた。
「先に寝るからなー」
グラン達はさっさと寝ちゃうし、恨めしいような顔して見たけどボーザックに笑顔で頑張れハルトー!と言われて諦めたのだ。
……
…………
こうして、ようやくディティアの合格を頂戴して眠る頃には、夜はとっぷりと更け、フェンでさえすっかり寝入っていたのである。
「でもほら!双剣のメンテナンスは完璧だから!」
意気込むディティアに、頷きながらまた欠伸を返すと、彼女は肩を落とすのだった。
******
「それじゃあ出発するわ!」
白い革鎧に、大きな弓矢を背負い、腰の辺りに細身の剣を下げたラムアルが声をあげる。
集まった面々は思わず突っ込んだ。
「おいおい、皇帝自ら行くのはちょっとどうなんだ」
「ラムアルに何かあったらどうするの!?私に任せてラムアルは待っててね」
「言っても聞かないとは思うが、大人しくしてはもらえないのかなラムアル皇帝?」
ラムアルは紅い眼をぎゅっと細めて、不満いっぱいの顔になる。
眉間にひどいシワが寄っているくらいだ。
「嫌よ、何であたしが置いていかれるわけ?やられないわ、皇帝とだってやりあったのよ?」
いや、ごもっともだとは思う。
思うけど……。
「だってさあ、お前、もう皇帝だよな?皇帝に何かあったら、今度こそヴァイス帝国が続かないけどどうするんだよ」
俺も呆れて言う。
ラムアルはぐっ、と潰れたような声を上げて、いやいや、と首を振った。
「そ、それでも!あたしは、自分で何かしたいの!武勲皇帝だってそうしてたわ?」
だよなあ。
聞くわけ無いよなあ。
すると、黙っていたひんやり系のシャルアルが、ラムアルと同じ炎色の髪の毛をふわふわさせながら言った。
「ラムアルが死んだら帝国はラナンクロストに降る」
「あらあら、物騒なこと言うわねえ」
ファルーアが思わずといった感じで笑うと、アイザックも苦笑する。
「大した補佐官だな」
「まあね!あたしの自慢の妹だからね!」
うん、褒めてないけどね。
結局、ラムアルも行くことで決まった。
メンバーはラムアル、シャルアル、グロリアスと俺達白薔薇。
ちなみに、迅雷のナーガはシュヴァリエの横でぎらぎらと眼を光らせるだけだ。
喋らないからなあ…余計に恐いんだよなあ。
まあ、考えてることはわかるんだけど。
ぎらぎらした視線が向かうのはラムアルとディティアだからな。
ファルーアだけは興味無さそうだからか対象外らしい。
そうこうしてる間に、出発の見送りのためにギルド前までギルド長のオドールと、ジャスティが出てきた。
……どうもジャスティは、オドールが近くで見ているらしい。
「おお、そうじゃ。オドール」
「何だ、爆炎のガルフ」
「この戦いで娘ッ子の成長を見るのでな。2つ名の登録準備を頼むぞ」
「……っえ!?そこまで話進んでたのか!?」
思わず突っ込んだら、白髭をゆったり撫でてガルフが笑った。
「ほっほ、あの武勲皇帝も倒したことだしの。至極当然、必然じゃよ逆鱗の」
「あら、随分高評価ね。まあ、期待は裏切らないわ」
さらっと言うファルーアは、ローブの裾を揺らしてふふっと妖艶な笑みをこぼす。
「ほー、これで白薔薇も2つ名パーティーになるな」
アイザックがにやりとする。
グランはちらりと俺を見て、笑った。
「そうだな、ひとりを除いてまともな名付け親ってのがついた」
「グラン…」
俺が肩を落とすと、シュヴァリエがやたらキラキラしながら言い放った。
「僕ほどの者から名前を付けられたんだ、誇ると良いよ逆鱗の」
「ふん」
あははと笑い声があがったところで、俺達は歩き出した。
******
海岸線は切り立った崖になっていた。
その下に砂浜が広がっているのが見える。
崖沿いに進むとやがて低くなり砂浜まで降りることが出来て、砂浜沿いに折り返すと、この崖の下にある洞窟が根城になっているそうだ。
「ここからは、身を隠す。付いてきて」
シャルアルが先導し、俺達は防砂林を隠れながら進む。
「洞窟まで水が入ることは無いのか?」
聞いたら、シャルアルが答えた。
「水が増えたら砂浜が隠れる事がある。洞窟は広いから、中にも船が用意されてるし、食糧も用意してあった」
そっか。
そこまで調べてあるなら安心か。
「あいつ等は実験ばっかりで外にあまり出てこない。見張りも少ないから、楽」
俺は念のために音も立てずに進んでいく彼女を含め、全員に五感アップをかけておく。
波の音がはっきりと聞こえてきた。
「なんか、海ってさー。飛龍タイラントを思い出すね」
ボーザックはそう言うと、小さくよし、と言って集中したようだ。
俺も、
「そうだな。今回も大仕事だよなあ」
と答えて、気合いを入れ直した。
ダルアーク討伐…。
長くなるであろう戦いが始まった。




