何故活動してるのですか。①
ヴァイス帝国は落ち着いた。
後は、ダルアーク。
ラムアルとシャルアル、当然のようにグロリアス、そして俺達白薔薇。
戻ってきたギルド長オドールと、抜け殻のままのジャスティ。
集められた面々は、もちろんダルアーク討伐のための主要メンバーだった。
「さあ皆。帝国はもう大丈夫よ、今日はダルアーク討伐の依頼をギルドに上げるために集めたわ!」
ラムアルがしなやかな筋肉を見せ付けるかのような軽装備で腕を組み、にやりと笑う。
「もうお馴染みだねー」
ボーザックが苦笑する。
グランの2つ名の件は既に快諾されていて、ラムアルからラナンクロスト王とルクア姫にも手紙を出してくれたらしい。
シュヴァリエの見立てでは、これが断られることは無いそうだ。
「4国の王に認められた2つ名か……ふふ、やるじゃないか」
シュヴァリエがグランを見て言うと、グランは眉をひそめて困った顔をした。
「いや……閃光に言われてもな。2つ名ついたら、存分に名前を呼ばせてやるよ」
確かに、シュヴァリエは2つ名でしか名前を呼ばない気がした。
意外と気にしてたのかな、グラン。
「はは、これは手厳しい。流石、君の仲間は面白いな、逆鱗の」
「無理矢理俺に振らないでいいよ…」
「ラムアル皇女…いや、皇帝ヴァイセンは、新しく称号を、という話よりよっぽど気に入ったようだしね、よかったじゃないか」
スルーして語るシュヴァリエは、今日もまた有り得ない程の爽やかな空気を纏っている。
ラムアルがはいはい、と制して笑った。
「閃光のシュヴァリエ?あたしが皇帝ヴァイセンになったんだから、貴方も敬意を払って婿入りしてもいいわよ?」
「光栄だが君の元にいかずともそれなりの地位なのでね」
うわー嫌味だなー。
中々進まない話に、とうとうオドールが重い腰…いや、軽そうだな…を上げる。
「とりあえず本題に行くぞ、皇帝ヴァイセン。……今回の件を引き起こしたダルアークを、国家の敵として討伐対象とする。目的はボスの生け捕りと、組織の解体だ」
「人を相手にした討伐依頼なんて出せるのね?」
ファルーアが、金の髪をくるくると弄びながら聞き返す。
「過去にも、悪質な宗教の駆逐はおこなっておる」
オドールはそれに答えて、ガルフを見た。
「そこの、爆炎のガルフが一役買っていたはずだ」
ガルフは白髭をゆっくりと撫でながら、ほっほ、と笑う。
「人を贄にする宗教での。暴れたもんじゃ」
「そう聞くと安心だね!」
ディティアが言うので、俺は首を傾げた。
「え?物騒なんだけど…」
こうして。
全く締まらない形で、ダルアーク討伐依頼は始まった。
******
シャルアルが地図に印をつける。
帝都から南西、海岸線の一画に、ダルアークの根城があるらしい。
丸一日もあれば移動できるその場所は、美しい砂浜を有するそうだ。
ただ、波が荒く、数メートル先で急に深くなっていることから、泳いだりするには全く向いてないんだってさ。
そんな場所だから、特に訪れる人もいない。
根城にするにはもってこいだろう。
俺達は翌日には出発することにして、その日は宿に戻った。
もちろん、フェンも一緒に。
「ハルト君」
「うん?」
「双剣、見せて?最近磨いてなかったでしょう?」
「あー。確かに。…これ」
抜いてみせると、ディティアはそれを受け取ってじっくりと見つめた。
そりゃあもう、柄から鍔から刃の付け根、先の先まで。
「思った通り。こんなんじゃ駄目だよハルト君!」
「ですよねー…」
俺はあははとから笑いして、受け取った双剣を見つめた。
「とりあえず磨くよ。後でチェックしてもらえる?」
「うん、任せて!」
隣で、グランとボーザックも大盾と大剣を磨き始める。
そうだな、明日は俺達にかかってる…と思う。
それなら今から装備は万全にすべきだ。
俺は念入りに、剣を磨いた。
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