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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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何をしていたのですか。②

シャルアルに名乗り終えると、眼を少しだけ大きく見開いたシャルアルが繰り返した。

「白薔薇……彼の飛龍タイラントを屠りし、あの」

「トドメは俺達の自称最高のバッファーだけどね」

ボーザックがふふっと笑う。


表情は薄いが、ちゃんと驚いてくれているらしい。

グランはそう判断した。


皇帝に会いに来たのはラナンクロストからの書簡を届けるためで、帝都民を守るように言われたことを話す。

シャルアルは納得したのか頷いて本題に入った。


「それで、皇帝はどうして」


「お前もわからないのか…。俺達にもよくわからん。次男は見ていたんだろうが……俺達とラムアルが到着したときには長男と三男はやられた後。双子は、目の前で飛び出していって…皇帝に斬られた」


グランは、淡々と説明した。

シャルアルは取り乱すことなく、しっかりと受け止めてくれる。


こいつは、見た目よりずっと大人だ。


グランはシャルアルが冷静であることを確信して、評価を書き換えた。


「背中に魔力結晶があったのが見えたな?あれが原因だってのはわかってるか?」

聞くと、シャルアルはまた頷く。

「私も、調べていた。だから、ダルアークの根城を見付けてきた」

聞き慣れない単語に、眉をひそめる。

「ダルアーク?」

「…魔力結晶を皇帝に持ってきた集団の呼称。奴等の頭は、ラナンクロスト方面に向かった」

「…頭?…今日広場に来なかった奴のことか?」

「そう」

「………ねぇ、それだとラナンクロスト方面に逃げた人達は」

ファルーアの表情が曇る。

グランは首を振った。

「大丈夫だろ。まさか全ての帝都民を狩るなんてことはしねぇよ」


ゆっくりと腕を動かす。

だいぶ動けるようになってきた。

ボーザックが次の質問を投げる。


「その、ダルアークの目的は?」

「よく、わからなかった。……魔力結晶を造るとか、なんとか…」

「!!」

グランは、その瞬間ぎくりとした。

ボーザックもファルーアも、グランを見る。

当然、シャルアルが気付いて眼を細めた。

「…どうしたの」

「はあ、まあお前皇族だしな。……俺達白薔薇は、魔力結晶の造り方を知って、ラナンクロストからギルドを通して遣わされたんだよ」

「……造る、魔力結晶を?」

「そう。詳しい内容はまだ話せねぇが……お前が次の皇帝になったら話すことになるだろうよ」

シャルアルは、それを聞いてゆるゆる首を振る。


「次は、ラムアル。次男のジャスティは、ダルアークの息がかかっていたはず」

「何だって?」

「……皇帝がああなったのは、たぶん……ジャスティが皇帝を斬ったから。私はそう、判断する」


だから反対だったのに、と。

小さな呟きが聞こえた。


何てこった。

グランは動くようになった手で、目元を覆った。


あの偉そうな皇帝のことだ。

ただでは死ぬまいと、自ら魔力結晶に飛び込んだんじゃないか?


それこそ、帝国の終わりかもしれないというのに。


******


『ラナンクロストへ帝都民を連れて行く。

合流求む。

最高のバッファーと、最強の双剣使いより』


次の日の夕方。


ギルドに辿り着いたところで眼にしたのは、貼り紙だった。


ファルーアが動けるようになるのを待ってからの出発だったから、それなりに遅くなったのだ。


ギルドに張られた罠を解除してくれたシャルアルが、貼り紙を眺めている。

顔に表情は無いが、なんとなく楽しそうに見えた。


「……あいつ等、ちゃんと動いてるじゃねぇか」

グランは貼り紙を剥がして、にやりと笑った。


通路を抜け、広場の真ん中に隠されていた出口から出てきたのだが。

ギルドを目指して帝都を歩きながら、食糧の確保に立ち寄った商店に保存食が残っていなかったことを思う。


どの店にもラムアルの署名入りで、借りることを書いたメモが遺されていたので、立て籠もってるのか?とも考えていたのだ。


街中に人がいなかったのも考えると、一緒に避難したと考えていいだろう。


「どうする?追い掛ける?」

ボーザックが笑うと、グランは食事が先だ、と答える。


とりあえずまだ食べられる肉やら野菜やらは回収していたので、グラン達はギルドに入って、内側から鍵をかけた。


これからはゾンビや魔物の時間だ。


……そもそも、城に俺の白薔薇の大盾を放置してる。


そいつを置いていくかと聞かれたら、答えはいいえ、だ。

ハルト達は援軍を連れて、必ず戻ってくるという確信があった。


考えを巡らせながら食事を広げると、空腹で腹が鳴る。


「とりあえず食うぞ」


グランは、一日ぶりの食事にかぶりついた。


******


「残ろうと思うがどうだ」

「賛成」


一も二も無く返事をしたのはシャルアル。

ボーザックとファルーアも苦笑するだけで、反対では無さそうだった。


食事を終えて、作戦会議と称して話を再開。


一瞬で方針は決まった。


「ダルアークが使っていた家を調べたい」

シャルアルが言う。

グランは頷いてから続けた。

「俺の盾も回収しねえと」

「え、言っておくけどグランの盾が無いと、俺だけじゃ受けきれないよ?拾うまで押さえるのは無理だと思ってね?」

「そうね、地下通路も塞いじゃったし、進入方法が無いわね。ハルト達を待つ方がいい」

「誰かに盗まれたらどうすんだよ」

「誰もあの皇帝相手に出来ないでしょ、死にたいのかしら?」

「……ううむ」


髭がばらばらに伸びてきている。

擦りながら、すぐ整えよう、とグランは思った。


「ざっと見積もって、3ヶ月はかかるかな?」

ボーザックが、窓から外を見る。


ハルトのバフが無いからなんとも言えないけど、まだ何かの気配が街に蠢いている気がする。


「だろうな……その間、シャルアルに協力して情報を集めておくか」


……こうして、グラン達も動き出した。


「長い戦いになるだろうな」

ハルト達は思いがけず、たったひと月程で戻ってくるわけだが。




本日分の投稿です。

21時から24時を目安に毎日更新しています!


連休が始まった人もいるでしょうか。


そんな折にようこそ、お読みくださってありがとうございます!


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