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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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136/847

何をしていたのですか。①

―――白薔薇 グランサイド―――


走って行くハルト、ディティア、引っ張られるラムアルと皇子を見送る余裕は無く。


グラン達はゾンビ化した皇帝ヴァイセンと対峙した。


「何撃いける」

隣で大剣を構えるボーザックに問う。

黒髪の青年は珍しく難しい顔で答えた。

「ハルトの強化バフが無いからね…グランと一緒に受けて3回」

「だな。……ファルーア」

「ええ。タイミングは任せる」


……相変わらず頼もしいメイジだ。


グラン達のやることはふたつ。

しばらく…せめてハルト達が離れるまでの時間を稼ぎ、自分達も逃げ果せること。


たったそれだけが、ありえない難易度を突き付けてくる。

久しぶりに、身体が震えた。


『……ウォォォオオ』


この世の物とは思えない、おぞましい呻き声がこだまする。


速さアップバフのおかげで、速く走ることは出来るだろう。

これが切れる前に、ここを離れなければ。


「行くぞ、武勲皇帝!」


『ルゥオオオオオ!!』


ガキィッ


上空から振り下ろされる巨大な塊。

グランとボーザックはそれを一緒に受け止める。


腕に伝わる重みが、凄まじい力を表していた。


皇帝ヴァイセンの体勢は整っている。

……まだ駄目だ。



ファルーアは辛抱強く、すぐ後ろで構えていた。

グランの合図で、皇帝へと目眩まし…もとい、そんな甘くはないだろうから、全力の一撃を撃ち込むこと。

それだけに集中する。


グラン達は皇帝との交錯を少しでも避けながら時間を稼ぐよう、じりじりと位置を変える。

ファルーアも、その後ろを行く。



……2撃目。



ガゴオオオッ!


先程より重い音。


「ぐ、ううぉぉ」

「くううぅ」


ぶるぶると震えるグランとボーザックの腕。


押し潰されそうだ。


その時。

「その後、魔法撃って下がって。そこの2人も、後ろに全力疾走」

冷ややかで場違いな、落ち着き払った声がした。


けれど、考えてる暇は無かった。


「うっおぉお!らあっ!」

グランが皇帝ヴァイセンの大剣を弾いて、すかさず叫ぶ。

「走れ!!」


「こっち」


女の子だった。

皇帝ヴァイセンの椅子の向こうから、ひょこりと覗くオレンジ頭。


「燃えなさい!」

ゴオオオオッ!!


ファルーアの魔法が炸裂し、熱風が吹き寄せる。


椅子の向こうは、ぽっかりと地下への穴。


女の子は、皇帝ヴァイセンを指差した。


「その盾、投げて。……貴女は、その後ろから魔法を叩き込んで。……皇帝を押し戻す、急いで」


「……!」

迷ってる暇は無かった。


仲間の命がかかっている。


「くそっ……ファルーア!」

グランは、白薔薇の大盾を、迷わず投げた。


いや、迷った。

迷ったが、選択肢が無いだけだ。


ファルーアが放った大きな火の玉が、グランの盾にぶつかり、こっちに向かって走りだしていた武勲皇帝に直撃する。


『グオオオ!』


「早く」

オレンジ頭に急かされ、穴に飛び込む。

「走って」


すぐさま、少女は紅い光を穴に投げ付ける。


その光がちらちら瞬き、穴の縁に当たって……


パリッ……ドゴオオオォンン!!


「うおお!?」

「な、何!?」

「きゃ……!」


爆風が背中から押し寄せてくる。

視界が一気に真っ暗になり、土煙と埃の臭いが鼻をついた。


「……皆、大丈夫!?」

ファルーアが、手元に炎を灯す。


しゅたっ、と。


オレンジ頭の少女が近くに着地した。


******


オレンジ頭の小柄な少女は、シャルアルと名乗ってさっさと歩き出した。

見た目と名前で、ラムアルの妹だと判断した。


実際間違ってなかったが。


投げたのは魔力を込めてある魔力結晶で、割って爆発させ、穴を塞いだらしい。


ここは皇族が使う緊急の隠し通路だそうだ。

至る所に松明があるので、ファルーアがつけながら歩く。


色々なことが起こりすぎて、皆の口数は少ない。


それでもしばらく進んでいたものの、

「……待って、もう駄目……」

最初にへたったのはファルーアだ。


五重バフが切れて、動けなくなったのだ。


「俺も、ちょっとつらい……」

ボーザックもよろよろと座り込む。


「悪いなシャルアル……休ませてもらえるか」


かく言うグランも、限界だった。

広い部屋までなんとか…とも思うが、その余裕すらない。


シャルアルは眼をぱちぱちして、頷く。

「わかった。……でも、どうしてそんなに?」


グランは、苦笑した。


******


落ち着いてくると不思議なもんで、ハルト達は大丈夫だろうか、これから帝国はどうなるんだろう、一般人を逃がさないと、等々、人のことばかり気になって。


隣で寝ているシャルアルをぼーっと見ながら、グランは考えた。


シャルアルが起きるまで、事情も聞けないだろう。


「……ハルト達はどうしたかな」

グランを見透かしたように、ボーザックが呟く。

「逃げてるわよ、問題なく」

ファルーアも起きていたのか、落ち着いてゆっくりとした答えが返ってきた。


「もう夜だろうなあ……帝都民達も逃げてるといいが」

「そうね。どう考えても危険だわ」



その時。


ごごご、と地鳴りが聞こえた。


ぐらあっ!


「うおっ、こんなとこで地震とか…」

「大丈夫、そんなもろくない」

「ってシャルアル!お前起きてたのか」

「今起きた」


シャルアルは地震がおさまると、まだ動けなさそうな3人を見て座り直した。


「少し元気出た。……情報交換」

「おお、そうこなくちゃな。……とりあえず、ラムアルと……兄貴の内1人は逃がしたぞ」

グランが苦笑すると、シャルアルはゆっくり頷く。

「なら、逃げたのはジャスティ。次男」

「そうか……悪かったな、その2人しか、助けられなかった」

「いい。少なくとも、これは皇帝達が始めた。貴方達こそ、巻き込まれただけ」

グランは唸った。

こんな幼い少女まで、皇族としての責任を背負っているのか。


薄暗い通路で座り込んだまま、いたたまれない気持ちになる。


「ところで、貴方達は誰」

「はっ?……ああー、そうか、悪かった」


「わーお、俺達名乗ってすらいなかったっけ」

ボーザックが笑った。



本日分の投稿です。

21時から24時を目安に毎日更新しています!


いつもありがとうございます。


春っぽくなりましたねー、

むしろもうすぐ暑くなりそうですね!


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