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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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131/847

意志はここにあるので。①

翌日。


夜が明けたと同時に偵察隊が帝都へ派遣された。

昼を定刻として、帝都内の様子を見ることになっている。


そこには、ずっと一緒に行動してくれていた帝都出身の冒険者のひとりも同行してくれた。


「……」

ラムアルは仁王立ちになって腕を組み、吹き抜ける風に任せるがまま髪を靡かせている。


帝都はまだ薄暗い空気の中、風に煽られて消え始めるだろう朝靄の中に佇む。


その隣には、ディティアとフェン。


組み合わせだけで見ると、相当絵になる風景だ。


当たり前だけど、帝都は夜通し真っ暗で。

見える範囲しかわからないけど、本当に……たったひと月で廃墟のような雰囲気を醸し出してたんだ。


「逆鱗のハルト」

「ん?……おお、イルヴァリエか。どうした?」

「いや、ここ一週間あったのにろくに話もしていなかったのでな」

「そういやそうか」

「……その。グラン殿やファルーア殿、不屈のボーザック殿……無事でいるだろうか?」


俺は思わず、少し笑った。


「何故の笑みだ」

訝しげなイルヴァリエに、ぱたぱたと手を振る。


「悪い、お前らしくて安心してさ」

「どういうことだ?」

「ストレートに言葉に出すところ」

「……む、おかしかったか?」

「いや、いいんだよそれで。……無事でいてくれるさ、あいつら、強いもん」

「そうか。……そうだな」

イルヴァリエは納得したのか、薄暗い中、朝靄のかかる帝都を見やる。


俺も、たくさんの思いがない交ぜになった感情で、街並みを見ていた。


******


偵察隊は昼前には戻った。


皇帝ヴァイセンは、姿こそ確認されなかったものの、謁見の間にいるのは間違いないそうだ。


グロリアスメンバーとラムアル、俺とディティアとフェンで、謁見の間に魔力の流れがあることを予想した。

それを補給しながら、命を保っているんだろう。


「魔力が無ければ、ザラスみたいに彷徨うと思うし」

俺はラナンクロスト王都近くの遺跡で出会った、レイスの上位種を引き合いに出す。


「魔力結晶がすっごく大きかったのもあるかも」

ディティアが付け足した。


「つまり、まずは魔力結晶の破壊からが妥当だろうか」

シュヴァリエの言葉に、アイザックが頷く。

「逆鱗の話からすると、背中にあるんだな?」

「そう。……だから、上手く背後を取る必要がある」

俺が答えると、ラムアルがふむふむと言った。

「誰かが攻撃を受け止める間に回り込む?……でもなあ、皇帝の背後を取れる人なんているかなあ」

「まあでも、それしか方法は無いだろ。あとは、部屋が狭すぎるから外に引きずり出したいんだけど」

言うと、ラムアルは少し考えてから案をくれた。


「入って左側、壁の向こうは庭園だよ。低い位置には窓も無いから、ぶっ壊してもらわないとだけど」


「それなら儂がやろう」

爆炎のガルフが言う。


「なら最初から庭園から攻めようぜ」

アイザックの案に全員賛成。


これで形は決まった。


俺達は、討伐部隊をしっかり分けて、作戦を伝達。


…武勲皇帝、ヴァイセン討伐。


大規模討伐が、始まった。


******


謁見の間に隣接した庭園までは、何の問題も起きなかった。


「……逆鱗の、強化を」

「ああ。……威力アップ!持久力アップ!」


範囲でバフを広げると、白髭を撫でながら爆炎のガルフは頷いた。


「では、いくぞ」


メイジ部隊を指揮するガルフが、頭上に岩を作り出す。

部隊を構成する他のメイジ達が、その岩に肉付けするように岩を重ねていき、巨大な塊に育てていく。


俺はその間に、前衛へと肉体強化と肉体硬化を重ね、後衛に肉体強化と反応速度アップを重ねた。


ディティアには反応速度と脚力アップ二重で三重、ラムアルには肉体強化、肉体硬化、反応速度アップを。


自分には反応速度アップに持久力アップをかけて、この状態を保つために中衛の位置をとった。


「行こう、ハルト君」

「ああ」


グラン達は、まだいない。


あの壁の向こうはどうなっているんだろう。


どっ、どっ、と心臓の音が聞こえる。


「撃てええぇーーーーいッ!!」


ご おっ


巨大な岩の塊は先端が尖らせてある楔状。

爆炎のガルフの合図で、壁に突き刺さる。


ごおおおっ!!


ガラガラガラッ


崩れるのは壁か、楔か。

もうもうと立ち込める土煙に、身構える。


「……っ、来ます!!」

「出るよ!!」

「お供しましょうラムアル皇女」


ディティアの声に、ラムアルとシュヴァリエが続く。


土煙の向こうから、凄まじい雄叫びが轟いた。


『オオオオオォォ―――ッ!!』


びりびりと腹の底から響く。

俺は負けじと声を上げた。


「動きを押さえろ!!無理するな!!いけぇーーッ!」


残りの前衛が駆け出すのと、ガルフの2撃目、風の魔法が土煙を吹き飛ばすのとがかぶる。


「……っ」


皇帝ヴァイセン。


変色しつつある身体に、鈍く光る金の眼。

一部は、恐らく既に朽ちている。


しかし、その威圧感といったら……足が竦みそうになるほどだった。


「はああーーーっ!」

飛び掛かるラムアルを援護するシュヴァリエ。


ガコオッ!!


「うっ、わあ!?」

弾かれるラムアルを、シュヴァリエが素早く引き寄せて下がらせる。


ブウウウンッ!


大剣が空を薙ぐ。


そして、その頭上。

高く高く跳び上がっていた、疾風。


「はあぁーーーっ!!」


ガキィッ!


さすが武勲皇帝。

大剣が引き戻されるのと同時に頭上に振り上げられる。


双剣で受け止めた後、ディティアは大剣の腹に足を着いて、遠くに跳んだ。


ざざっ


俺のすぐ横まで跳んできた彼女は、難なく着地する。


けれど。


「……っ」

ディティアが、眼を見開いていた。


「……ディティア、どうした」

「は、ハルト君……」


ディティアは、前を見据えたまま。


俺は、視線を奔らせる。


武勲皇帝と剣を結んでは飛ばされる前衛を、後衛が必死に援護している。


その、向こう側。


大きく穴の開いた謁見の間の壁。

中には……。


「…………っ、う、あ」

呻き声しか、出なかった。


白い、盾。


大きな、白バラの花びらが、無造作に『転がっていた』。



本日分の投稿です。

毎日更新しています!


21時から24時を目安にしています。

が、目安なだけあって24時まわったりもしています……。


申し訳ないです。


読者数がふえ、ユニーク数もどんどん増加しています!

皆様のおかげです。


よかったらブックマークや評価、お待ちしております!

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