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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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130/847

意を決するので。③

夜には帝都が見える位置までやってこれた。

そして、脚力アップバフも完璧。


元々肉体強化が使えるから、それを絞り込むだけってのは案外簡単だったのである。


あとはクロが、練習を始めた俺に気遣ったのか、より安定した走り方をしてくれたのもでかい。


「ありがとうなークロ」

好物の野菜をあげながら言うと、クロは鼻先をぐいぐいと押し付けてきた。


お前、かわいいなあ。


イルヴァリエがルヴァ…なんとかを可愛がるのもわかるような気がする。


ついでに、腕力アップなんてのも覚えてみた。

たぶん、重たい物を持ち上げるとか、遠くにぶん投げるとか、そういうのに使えるだろう。


持ち上げた時にその重みを足が支えられるのか…は、わからないけどな。


「今日はここで野営して、明日偵察出してから踏み込むって」

ディティアがやってくる。

その足元にはフェンもいて、クロとふすふすし始めた。


「ディティア」

「うん?」

「脚力アップ」

「…!わあ!すごいハルト君、もう?」

「ははっ、これくらいならなー」

「んっ、とっ、…うんうん、いい!ねえねえ三重くらい試していい?」

軽く跳ねながら、ディティアがにっこりする。

ふわふわと揺れる濃茶の髪を見ながら、俺も笑った。

「いいけど、跳びすぎるなよ?……脚力アップ、脚力アップ!」

「ふふ、大丈夫!試してくるね!……ラムアルー!!」


とんっ


「って、うわ!ディティア!?」

ディティアは数メートルを悠に跳ね上がって、駆け?出した。

「あははっ、さすがハルト君!想像以上だよ!あははっ、ねえ、ラムアルーー!」

笑いながらぴょんぴょんする彼女に、どよめきが起こる。


辺りは薄暗く、野営の準備を始めた人から見たら異様だったろうなあ。


それにしても、ラムアルとは随分打ち解けたもんだ。


感心しながら、俺はそっと、自分にも脚力アップバフを重ねてかける。

「ほっ……おっ?……おお!」


そして、感動。


跳べる。

バネみたいだ!


いや、待てよ。

これがあったら、ヒットアンドアウェイが可能なんじゃないか?


速度アップよりもむしろ、速いような気がする。


いや、でも踏み込んだら軌道修正が利かないか。

そうすると……。


飛び跳ねながら、あれこれ考えてたら、呆れ声がした。

「おいおい……何やってんだ逆鱗の」

「ん?ああ、アイザック!」

「なんだそりゃ、バフか?」

「そうそう。敵の武器を足場にしてジャンプするんだってさ、ディティアが」

「疾風……あいつならやれそうな気がするのが恐ろしいな。……で、お前は?」


聞かれて、着地する。


「何か攻撃に使えないかなと思って」


さらりと言うと、アイザックはとげとげしい杖を地面にざくりと刺した。

「ふーん?……ちょっと俺にもかけろよ」

「おっけー、脚力アップ、脚力アップ、脚力アップ!」


アイザックは最初は軽く、やがて大きく跳び始めた。

「おっ、うぉほ!これはやべえな!……中毒性高いぞ!」


こいつでもこんな跳べるのか……。


いや、むしろ元々の脚力があるともっと跳べるのか?


っていうか無邪気ないかつい男とか見ても面白くないような。


「おお、思い付いたぞ逆鱗の!」

「ん?」

アイザックはすぐに、跳びながら言った。

あれこれ考えていた俺は我に返る。


「たぶん、死角から魔法撃てるぞこりゃ」

「えっ、ほんとか?」

「…屋外ならな?」

「あっ、なるほど……」

「あとは、上手くすりゃ、攻撃よりも回避に使える」

「……そうか、何も攻撃まで跳ばなくてもいいのか」

「そういうこったな。……お、見ろよ。早速疾風がやってるぞ」

「え?どれ?」

俺も跳ねると、少し向こうで人だかりが出来ているのが見えた。


そのさらに向こう側、ひらりと跳ねるディティアの姿が見える。


「おお……本当に武器を足場にしてジャンプしてるぞあいつ」

アイザックが感嘆……というよりは呆れみたいな声を上げる。


ディティアは、ラムアルの剣を足で受け止めて、弾くように跳んでいる。


なるほど、上に跳ぶんじゃなく、離れたところに着地するんだな。


「あの使い方は、やっぱ難しそうだな」

思わず呟く。


「まあなぁ。疾風だからだよなあ。……けどよ、逆鱗の。お前、蹴りも使うだろう?」

「え?あー、うん。あれ?どっかで見せたっけ?」

「いや。前にボーザックと話してる時に聞いたんだよ」

「あ、なるほどね」

「このバフで蹴ったら、たぶん相当効くぞ」

「そうか、それもありかも」

……ボーザックも、たまに蹴りを交ぜてたな。

思って、首を振る。

「アイザック」

「何だ?」

「士気を乱すなってシュヴァリエに言われた」

「………そうか、そりゃ、悪かったな」

「いいよ、文句言いたいんじゃないんだ。……何て言うか、意を決するっていうか。俺は万が一なんて考えたくなかっただけで、本当はそうなった時の意思っていうの?……そういうの、決めておかないといけないんだなって気付かされた」

「それならうちの大将に言ってやれよ」

「やだよ!癪だし」


「そうかそうか、ならこの爺が一肌脱いでやっても良いぞ?」


「うわあっ!?」

俺はかなり高く跳ねて距離をとった。

「おおっ!?……爺さん、マジで脅かすなよ」

アイザックも同様。


すっかり暗くなった空気の中、浮かび上がるような白髭が現れる。

く、首が浮いてるみたいだな……。


「ほっほっ、面白い話をしてるもんでな」

爆炎のガルフがそこにいた。


「別にシュヴァリエに言う必要無いって。……あいつだってそんなの求めてないだろ」

ため息交じりに言うと、爆炎のガルフは髭を撫でた。

「そこまで閃光がわかればたいしたもんじゃ」


え、何それ貶してるのか?


「……それにしても、閃光も随分手厳しいのう」

「え?」

「仮にもひとりは二つ名持ち。大盾もすぐ何かもらうじゃろう?娘ッ子は儂が預かっておるしの」

一瞬、何のことかわからなかったけど、グラン達のことだと気付く。

爆炎のガルフが指先に小さな炎を灯して、ゆらゆらと辺りを照らす。


「つまりは、それほど強いのじゃ。武勲皇帝はな」


俺もアイザックも、息を呑む。


その時、ディティアがいる方から歓声があがった。


「もーっ!ハルト!あたしにもバフかけてよー!!」

ラムアルの絶叫が聞こえる。


「まあ、危なくなったら距離を取るのじゃ。最悪、儂が焼き尽くすからの」


……!


爆弾発言を残して、ガルフが指先の炎を消す。


夜に溶けるように離れていく伝説のメイジを、俺はアイザックとふたり、呆然と見詰めていた。


本日分の投稿です。

毎日更新しています!


21時から24時を目安にしていますが、

最近遅いですね……


本当に申し訳ないです。


来週はもう少し落ち着く予定です。


よろしくお願いします!

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