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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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再会を願うもの。③

「そうよ、あたしは皇帝を討って、次のヴァイス帝国皇帝になるわ」


お酒をがんがん空けながら、ラムアルは息巻いた。

テーブルを囲むのは俺とディティア、グロリアスの面々とラムアル、オドールと、虚ろな表情で背中を丸めるジャスティ。


国境の街フルリネのギルドは、酒場と化していた。

酒場から買い付けた食事が並び、別のテーブルにこれでもかと言うほど酒の瓶が置かれていた。


宿と民家、ギルドを駆使して何とか帝都民達を振り分けた。

冒険者達は申し訳ないけど食事や風呂以外を野宿同様に過ごしてもらう。

俺やディティアも例外なく同じ措置、ラムアルだけはちゃんと部屋を確保させた。


馬車の荷台を使えるのは正直ありがたい。


「言いたいことはわかった。つまり、皇女殿下自らの依頼で、大規模討伐を発行して良いな?」

オドールが確認する。


「ええ、もちろんよ。白薔薇とグロリアスには出てもらうけどいいよね?」

「うん」

「もちろん」


ディティアと俺が頷くと、シュヴァリエが涼しい顔をして報酬を要求した。


「……冒険者とはいえ、一国の騎士団を担う身分なのでな。グロリアスにはラナンクロストにも恩恵ある報酬を望むが、どうかなラムアル皇女」


まあ、お国同士の関係性があるのは仕方ないか。

俺は手元の杯を空けた。


「おっ、ハルトもっと飲むよね?……はいはい」

ラムアルに酒を足されて苦笑しながら、足元のフェンに肉をあげる。


「あたしからの条件は考えてあるわ。まずは魔力結晶のこと。ラナンクロストの提案を呑んであげる」

「ほう、なるほど」

シュヴァリエが頷く。

ラムアルはにやりと笑うと、付け足した。

「ついでに、婿入りも考えておいてね閃光のシュヴァリエ」

これに、シュヴァリエの隣に控えている迅雷のナーガがぎらりと眼を光らせる。


やばい、恐い。


ディティアを見たら、口をへの字に結んで、眉はハの字。

身を固くしているのを見ると、ナーガのあのオーラは恐いらしい。


ディティアが怒った時の方が、命の危険を感じるレベルだったけどな。


「……しかし、ラムアル皇女」

「うん、なあにシュヴァリエ」

「失礼を承知で聞くが、辛くはないのか?」


その質問に、ラムアルは眼をぱちぱちしてみせた。


「えっ?……えっと、そうね、いや、シュヴァリエから心配されるなんて思ってなかったなあ、ちょっと心の準備が」

「いや、心配したわけじゃない」

「……そこは心配したと言ってもいいんだけどなあ?……まあいいわ。そりゃあ辛いわね、取り乱したもの。けど、あたしは帝国を護る義務がある」

ラムアルが言い切ると、シュヴァリエは意外そうな顔をした。

「取り乱した?」

「うん。まあ、何かしら。ちょっと暴言も吐いたし……」

ちらりとこっちを見るラムアルと眼が合う。

彼女は首を竦めてから、気を取り直したように手を握り締めた。

「も、もう大丈夫よ!」


はは。

成長ってこういうのを言うのかもな。


「とりあえず大規模討伐はすぐ人を集めよう。今更だけど、帝都の東は封鎖しなくていいのか?商人とかが知らずに帝都まで行ったら危ないだろ」

俺が言うと、オドールが首を振った。

「それは心配いらん。帝都を出る前にハトを飛ばしてある。宿場町カタルーペで全面的に封鎖済みだ。東側は飢えた魔物が多かったのもあって、帝都民達もあっちからはそうそう逃げ出してないだろうよ」

「なるほど」

俺が納得すると、今度は静かに聞いていたアイザックが身を乗り出した。


「それで?大規模討伐までは何日とるんだ?」


俺的には、もちろんすぐにでも発ちたい。

グラン達が何処にいるかわからない以上、少しでも早く帝都へ向かいたかった。

途中で会えるかもしれないし。


それでも、得策じゃない。


それくらいは、わかっていた。


「ふむ……」


オドールは少し考えると、ゆっくり見回した。


「グロリアスの面々と疾風、ラムアルもいる。閃光が連れてきた部隊も使える。……後は、そうだな。2日もあればいい」


シュヴァリエは優雅に腕を組むと、ひとこと。

「ふむ。そこは逆鱗のを入れてやってくれないか、ギルド長」

「い、いいって!お、お前、本当に性格悪いなあ!」


思わず突っ込んだ。


すると、ディティアが首を振る。


「ううん、ここはハルト君も絶対入れてくれないと!ハルト君がいなかったら、私達、ダルアークにやられてたかもしれない」


ええー!


「そうだね、ハルトがいなかったら、あたしは立ち直ってなかったし」

ら、ラムアルまで。


聞いていたシュヴァリエがさらに言葉を重ねる。

「逆鱗の。中々活躍しているようで僕も鼻が高いとも」

「うっ、うるさい!!」


俺はそっぽを向いた。


まだ自分が同じステージに立ててないのくらい、わかってる。


ディティアやラムアルが誉めてくれるのは嬉しいけど、シュヴァリエは馬鹿にしてる…というか、試している。


そんな気がした。



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