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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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117/847

鬨の声を上げますか。①

ラムアルとはすぐに話をした。


俺達、白薔薇の目的が何だったのか。

そして、魔力結晶の製造方法を知っていること。


援軍を呼ぶため、俺が先行すること。


ラムアルが次期皇帝になるのなら、あの書簡はもうラムアルに引き継がれると思っていい。

知ってて良い内容のはずだった。


皇帝になる権利が有るはずの次男ジャスティは、後方の馬車でオドールに監視されながら過ごしている。

ラムアルはそんな弟を、情けないと言った。

「ジャスティは死ぬまで幽閉よ。皇帝を刺したなんて、クーデターものだしね」


そうはあっても弟だ。

処刑はしないと彼女は困ったように笑った。


ただ、ひとつ気になることがある。


確か、もう1人……四女がいるはずだったろ?

俺達は見ていないし、ラムアルも口にしないんだよな。


どこにいるかわからず、生死も不明。

そう思うと、ラムアルは不安で口に出せないのかもしれない。

けど、この先を考えると、ラムアルとの皇帝争いになったりしたら不安材料にしかならない。


…聞いてみるべきか?


頭を悩ませていると、彼女はディティアに向き直る。


「とにかく…ディティア。ディティアはそれでいいの?」

「えっ?」

「…ハルトをひとりで行かせるのは、了承済みなの?」

「それは…、うん。それが、今は最善だって思うから」

「……そうなの?……うーん。…ん?」

ラムアルは何故か考え込み、ふと顔を上げた。

「…………」

目線の先に、フェンが座っている。

「……あんた、戦う眼だね」

「がう」

「うんうん。よしわかった」


俺とディティアは顔を見合わせる。

何だ?


「ハルトにはフェンが同行する。ディティアには、その、あ、あたしがいる!それを前提で、あたしは、その案を認めるわ」

「!?」

驚いて、フェンを見る。

「フェン!いいのか?結構飛ばすつもりだけど」

「がう」

銀色の艶めく毛並みが、フェンの動きに合わせてもふもふと揺れる。

俺は、言葉を失った。

知的な瞳が、私がいるんだから大丈夫と言っている。

「ディティア、その。貴女は強いけど、あたしだって強いから!だからこっちはあたし達で何とかしましょ?……そりゃ、ハルトと行かせてあげたいんだけど、あたしだけじゃ冒険者達の指揮はとれないと思うんだよね…だから、正直一緒にいてほしいと思う」

ラムアルはディティアに向き合って、戸惑ったような声をあげた。

どういうわけか、ディティアはラムアルの崇拝対象になっているように思う。

高栄養バーを食べたあの時から、2人の空気は柔らかい。

「……うん、わかった」

ディティアは笑うと、ラムアルの手を取る。

「約束したからね」

「……ディティア!ありがとう」


感動の雰囲気が漂う中、俺は、おずおずと切り出した。

黙っていても時間が過ぎるだけだ。


「……なあラムアル、ごめん…聞いて良いかわかんないんだけどさ。お前、もう1人、妹がいるよな?」

「うん?あー、いるよ。シャルアルっていうんだー。この子がまた、ちょっとひんやり系なんだけど、可愛くって!」

「えっ?…えっ、と、…」

ディティアを見ると、なんとも複雑な顔。

ラムアルはにまにまと頬を緩めながら、妹自慢を始めた。


ところで、ひんやり系ってなんだ。


「今回のことも、ひとりひんやり見ていてね。けど、協力はするって言って、それっきり見てないんだよね」

「は、はあ??」

思わず返す。

「ふふ、うちのシャルは隠密行動に長けてるの!気配消すのすっごい上手で、あたしもよく驚かされるくらいだったなあ」

「いやいやいや、ちょっと待てラムアル。帝都出て来ちゃったけど大丈夫なのか?妹」

慌てて聞く。

妹自慢が聞きたいんじゃなく、妹はどうしてるんだ?って聞きたいわけで。


ラムアルは頷いた。


「シャルは大丈夫。危険察知はあの子の得意分野だからね。どこかに身を潜めてると思うな。だから、早く帝都を取り返してシャルとも合流しないと」


言いながら、少しだけ遠くを見つめる。


小さな声で呟いた言葉を、俺も、ディティアも、目を閉じて聞いた。


「ルルとリリ、ガルディとトラスティも…早く弔ってあげないと、ね」


******


時刻は夕刻、今日はここらでキャンプを張るとなった辺りで、俺とフェンは動くことにした。


少しだけ仮眠は取らせてもらったし、体力気力共に充電出来た気がする。


馬はフェンが選んでくれた。

何頭か集めたところで、フェンが何事かを囁くようにもごもご鳴くと、一頭が歩み出たのである。


やばい、フェン、なんか格好良いぞ。


出てきた黒い馬は、蹄を鳴らして荒く息を吐く。

さっさと乗れと言われてる気がした。


そこに、ディティアが用意してくれた荷物を持ってやって来る。

「……ハルト君、これ、お水。それと、高栄養バーはまだあるよね?」

「うん。ありがとうディティア」

「わかった。……少しは休めたみたいで良かった。それじゃ、こっちが普通の食糧ね。フェンのは、こっち。……ハルト君をお願いね、フェン」

「わふ、くぅん」

フェンはディティアにすり寄ると、思う存分に甘えた。

その身体は、既にディティアに迫る勢いだ。

「大きくなったな」

笑うと、ディティアはフェンをもふもふしながら笑った。

「うん、でもまだまだ大きくなるんだよね。ふふ、フェン、どんどんおっきくなってね」

「がう」


「……よし、それじゃあ行くとしますか」

夕闇に染まりつつある空を見上げてひとこと。


昼の襲撃から、ダルアークの姿は見当たらない。


内心は、自分に目が行くよう期待していた。


俺を見て、俺に気を取られれば、ディティアやラムアル、帝都民達は楽になるはず、と思ったから。


「……フェン。ありがとうな」

「わふっ」


「頼んだよ、ハルト」

ラムアルも来てくれる。


「任せろ!それじゃ、行くよ」


「…………ハルト君」

馬に跨がった俺に、ディティアが拳を突き出す。

「……ん」

その拳に、自分の拳をコツンとあてた。

「いってらっしゃい」

「おう、早く合流しような!」

「うん!」


こうして、俺とフェンは走り出す。

俺達白薔薇の故郷、ラナンクロストへ向けて。



本日分の投稿です。

毎日更新しています!


21時から24時を目安にしてます。


もうすぐ200ポイント……目標にしてがんばります。


評価、ブックマーク、感想などなどうれしいです。

いつもありがとうございます。

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