見舞い
私は身の回りの世話をしてくれている女性の一人に、行きたい所がある旨を伝えた。
その女性は、すぐさま車いすを取って戻ってきた。
そして他の女性たちに手伝ってもらい、私をベッドから車いすへと移すと、
「どちらにお連れしたらよろしいでしょうか?」
私は車いすを押してもらいながら、周りを警護してくれている衛兵たちの多さに辟易していた。
あの一件の後、私の警護はさらに厳重になった。
仕方がないと思いつつも、手足が自由に動かないことに加え
常時見張られていては
本当に気が休まらない………
リンが早く復帰してくれることを願わずにはいられなかった。
それにしても、自分の行きたいところへ
誰かに連れて行ってもらわないと行けないのが歯がゆくて仕方がない。
―― 医師の話によると、かがされた薬のせいで手足に痺れが残ってしまっているが、
数日間でそれも消え、正常に動かせるようになる、とのことだった。
自分の足で歩けないのがこんなにも不便だとは。
私は医務室のドアをノックした。
「王女様のおなりです」
とお付きの女性が告げると、中から私のことも診てくれた初老の医師が出迎えてくれた。
「王女様、お加減は…」
「大丈夫です。昨日に比べたら、痺れは大分軽くなりました。本当にありがとうございます」
「い、いえ、とんでもない……」
この城の人は、私が丁寧な物言いをすると、なぜかすぐ狼狽する。
「今日はリンのお見舞いをしようと思って…」
「そうですか…」
突然、医師の顔が曇った。
「まさかリンは…」
その先は、怖くて言えなかった。
青ざめた顔の私に気づくと、医師は慌てて
「いえ、大事はございません!」
と言うと、私を案内して部屋の奥へと歩き出した。
「ただ…」
「ただ?」
歯切れの悪い話しぶりに、私の不安は募る。
「回復が、なぜかめっぽう遅いのです」
「回復が遅い…?」
「はい、特に理由は見あたらないのですが…」
「悪化している、というわけではない…のですか?」
「はい、傷は治りつつあります。
ただ…そのスピードが遅いので、少し心配しております」
「そうですか……」
ここで、医師は足を止めた。
窓から射し込む日の光に包まれ、
リンはベッドに横たわって眠っていた。
包帯に、もう血が滲んでいないことを確認し、私は安堵した。
治りが遅いのは気になるが、回復しつつあることが分かり、来てよかったと心から思った。
だが、リンの寝顔を眺めると、疲労が滲み出ているように思った。
まるで、徹夜でもしたような……




