面会
マークは数人の衛兵を引き連れ、城の深部にある牢を訪れていた。
他のものよりひとまわり大きな檻の中に、黒衣の男はつながれていた。
少しやつれてはいたが、その眼光は鋭さを失っていない。
反対勢力の手先として動いてきた集団をまとめていた、リーダーの男。
その威厳を感じさせた。
結局、あの騒動で捕らえることができたのは、この男のみだった。
なぜなら―――
「仲間を逃がすために、ひとりだけ残るとは、たいしたものです」
マークは素直に思ったことを口にした。
男は足につながれた鎖をジャラジャラ言わせながら、マークの方へ歩み寄った。
鉄格子をはさんで、二人の視線がぶつかり合う。
「王女様は元気にしてるか?」
男がマークの言葉など聞こえていなかったように、軽い調子で言った。
それが皮肉なのかどうか、マークがはかりかねていると、
「…あの薬は、手足を動かせなくしちまうものだ」
「何…!?」
「心配するな、数日間で元に戻る。それまでは不便だろうがな」
マークは安堵した。
それにしても……
「王女様の御身を気遣うとは、どういう風の吹き回しだ?」
すると、マークが驚いたことに、男はふっと笑みを浮かべた。
「あの女……
ほっときゃいいのに、怪我した小僧をかばってよ……
仕事をこなしただけ、だと……
ったく、それ言われちゃあなぁ…」
「?」
「そうだよなぁ、皆飯食うのに必死なだけなんだよなぁ……」
話が見えない。
王女様がリンをかばったということ以外、ほとんど理解できない。
まぁ、いいか。今、この男から聞き出さねばならないのは……
「なぜ、あの部屋に王女様がいらっしゃると分かった?」
男は、笑みに意地の悪さを滲ませた。
「答えてやってもいいが、条件がある」
「…言ってみろ」
「その前にひとつ教えろ。
あんたらは、このつまらねぇ喧嘩を終わらせる気はあんのか?」
「何…?」
マークの顔がこわばった。
「どっちなのかはっきりしろよ」
「…もちろんだ」
苦い顔でそう言ったマークを、男は面倒臭そうに見下ろした。
「ふん。…まぁいい。そんなことだろうと思ってたよ」
「……それで、条件は?」
「俺の部下を殺すな。誰ひとり、だ」
「………」
陰気な牢に、重い沈黙が続いた―――




