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所有者


その日の夜半。


皆が寝静まった頃―――


入り口の方がにわかに騒がしくなり、

私は目をハッと覚ました。

横ではリンが、がばっと起き上がるのが分かった。


「何があったんですか?」

近くに慌ただしく物を取りに来た看護婦に尋ねてみる。

彼女はしどろもどろになりながら、

「ま…マーク様が……」

と、か細い声で言った。

「え…!?」


マークに何かあったの…???


いてもたってもいられず

ベッドから降りようとした私を、

すでにベッドから出ていたリンが制した。

「俺が見てくる。待ってろ」

私は、小さく頷いた……



マークは、私を襲ったグループのリーダーからの情報を元に

密告者を捕らえようとしたところ、

衛兵たちの中に潜んでいた、別の裏切り者にナイフで刺されてしまった……


あまりにショックな話に、私は身がすくんだ。


むごい。

醜い。


様々な表現が頭をよぎる。


それから、悲しみと、怒り。



自分の持ち物を、自分で捨てたり壊したりするのは、かまわない。

誰にも、それを止める権利はない。


だけど、他の人の物を壊す……

傷つけるのは、タブーだ。

私は、そう思う。




「助かるかどうかは、五分五分だそうだ……」

辛そうに言うリンの声。

私は何も知らないけれど、

その様子だと、リンはマークと付き合いが長いようだった。



励ましてあげたい。

何か助けてあげたい。


そう思うのだけれど…

けれ、ど。



誰かのために心を動かすこと。



それは私が今までずっと嫌悪し、避けてきたことだったということに、

私は思い至った。



工場で働いているときも、仲の良い同僚は、いた。

でも、自分をさらけ出したり、

相手のことをきちんと知ろうとは、しなかった。

“普通の”人を演じるためだけに、“友達”として付き合った。


だから、離れても、特に何も感じない。



誰かに自分の心が奪われることが、嫌だと思っていた。



そんな私には、リンにどう言葉をかけていいのか、

何をしてあげればいいのか、

見当がつくはずもなくて………





でも、今は?


―――もう一人の私が、問いかけてくる。



今、あなたの心は、誰のもの……?




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