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私はコレで煙草を辞めました?  作者: 白い黒猫
第四種接近遭遇
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相方は語りだす

 金曜日にお菓子メーカーのレティーさん主催のチョコレート試食イベントが行われた。それに私も雑用としてお手伝いをする。

 レティの広報部の方へのご挨拶を済ませた後、私は設営作業を行うことにする。まだ今日のイベントの打ち合わせをしている田邊さんに先立って、私はテーブルや椅子を並べる。

「煙草さん、それ重いですよ! 俺がやりますから、此方の椅子お願いします」

 私がパラソルの束を気合い入れて運んでいると、マメゾンの相方(さかた)くんが慌てたように声かけてくる。相方くんは積まれた椅子の台車を視線で示す。

 相方くんは、昨年清酒さんの下に入った新人で、妙に睫毛の長いパッチリとした瞳が特徴の男の子。

 男の子と言っても私より一歳下。そう変わらないのだが、このつぶらな瞳が彼を、実年齢よりも幼く、可愛らしく見せていた。

 清酒さんが動けない時など、代わりに編集部に訪れる。『さん』よりも『くん』で呼ばれてしまうキャラで、編集部の皆からも可愛がられている。

 井上(いない)先輩のお気に入りで、来ると弄って楽しんで構い倒されていた。今もレティーさんの女性社員にもスッカリ気に入られている。早くも楽しそうに打ち解けて作業を行っている。今日会ったばかりのレティーさんから、『トモくん』と名前で呼ばれ可愛がられて皆のアイドル状態。コレはコレで凄い才能を感じてしまう。

 性格は明るく人懐っこい感じ。スマートに対応する清酒さんとは異なり、真っ直ぐ全力で仕事をする事で取引先から愛されるタイプの営業マン。

 突然駆り出されたイベントのお手伝い作業。本来ならば珈琲サーバ等の設置し、珈琲を淹れて配付がお仕事の筈。しかし嬉々として会場造りのお仕事を手伝ってくれていた。

「重いよ、コレ。それに相方くんの方作業は大丈夫なの?」

 私の言葉に相方くんはニッカリ笑う。

「俺の方は、箱からモノを順番に出すだけで、大丈夫ですから! それに重いモノだからこそ、俺を使って下さいよ!」

 私はその笑顔と言葉が可愛いなと、見つめ返していた。

 私の弟がこんな感じだったら、もう滅茶苦茶可愛いがっていたのだろうなと思う。

 顔が可愛いだけでなく、性格もすごく可愛い。井上先輩がつい構いたくなるのも良く分かる。

「重くない? 大丈夫?」

 私はコロのついた台に載った積まれた椅子を運びながら気にしてそう声をかける。

 代わりにパラソルを運んでくれている相方くんに話し掛けると嬉しそう笑ってくる。

「俺ガタイは大きくないですが、男ですよ! それに学生時代テニス部で鍛えてましたから楽勝です!」


『ウチの相方よこしますから、遠慮なくこき使ってやってください。頑丈と元気だけが取り柄なので』

 清酒さんは、そう言っていたけれど、清酒さん同様、回りを見て仕事が出来る良い営業マンだと分かる。

 面倒な作業や重い物の運搬を率先して行い、私やレティーさんに声をかけながら作業をスムーズに進めている。

 珈琲サーバも手際良く設置して動作確認をしいる。それが終わると珈琲を淹れて、会場で一段落してホッとしている皆に珈琲を振る舞う。

『このように、今日はチョコレートが引き立つコチラの商品をご用意させて頂きました』

 ちゃっかり営業活動もしている。流石に一年清酒さんの下で学んで来ただけある。いや、元々気遣いが出来て、人当たりの良い性格なのだろう。初めて会った時からなんか可愛くて、良い感じだった。

「煙草さんも、一休みしてくださいよ」

 私が給湯室の流しで雑巾を洗っていたら、後ろから相方くんが声をかけてきた。手に珈琲の入った紙コップを、二つもっている。

 私は頷き最後の雑巾を絞り、手を洗いタオルで水気を拭き取り珈琲を受けとる。

「あ、今レティーさんから頂いたんですよ。だから、お裾分け♪」

 相方くんは今日試食する予定のチョコレートを私にくれた。

 私はなんか嬉しくてフフフと笑ってしまい、包みを早速開け口に放り込む。口の中で濃のある甘味が広がり、珈琲がますます美味しく感じた。

 清酒さんが淹れる珈琲より、やや薄い感じだけど珈琲も美味しかった。思わず笑みが溢れる。

 相方くんも同じようにチョコレートを口に放り込み嬉しそうに笑う。

「今日は本当にありがとう。相方くんがいて助かった」

 私の言葉に相方くんは照れたように笑う。

「その言葉を貰えたなら来た甲斐があったという感じです!

 それに最近、会社でゴタゴタ多すぎて、彼処から逃げられたし、だから俺も助かりました」

 『ゴタゴタ』と言うことは、清酒さんも大変なのだろう。

「あら、そんな忙しいのに、悪かったかも。ごめんなさい」

 やはり、今マメゾンさんは忙しいようだ。そう言葉を返すと相方くんは慌てて首を横に振る。

「嫌々、仕事が忙しいわけではないので!

 掻き回されて職場が荒れているたけで、逆にここに呼んで貰えて助かった感じで! 煙草さんと会えたし……」

 私は微妙な言い回しに首を傾げ、相方くんを見つめる。

 清酒さんとは違い、小柄なので目が合わせやすい。私の前で相方くんは大きく溜め息をつく。

「今、職場の空気が壮絶で、気疲れが凄くて大変なんですよ……」

 ポツリとそんな事をつぶやく。

 顔を悲しげに曇らせる相方くんを見て、心配になってしまう。

「どうして? 何かあったの?」

 私の質問に、また溜め息をつく。

「歩くだけで、地雷を無邪気に置きまくるヤツがいるせいで、職場が掻き回されて。清酒さんや鬼熊(きぐま)さんもキレまくりで職場もピリピリしていて」

 鬼熊さんは確か清酒さんと同じグループの女性でキャリアウーマンという感じの格好良い方。

 清酒さんにしても鬼熊さんにしても感情的になるという印象が全くない。

「ただでさえ、四月五月は清酒さん機嫌が悪いというのに。それを刺激しまくるアイツ……何とかしてもらいたいですよ」

「清酒さん、機嫌悪いの?」

 私の質問に、相方くんはしまったという顔になる。しかし相方くんは相当ストレスを溜めていたのだろう。

 誰かにその苛立ちを聞いて貰いたかったところに居合わせたようで、止まらず語り出す。


相方さんは、全国で15301位で92世帯数の苗字なそうです。

サカタ サガタ サガカタ アイガタ アイカタ という読み方をするそうです。

こちらの相方くん、同じシリーズ内において『相方募集中!』という作品で主人公として頑張っています。どんな子かご興味のある方はどうぞご覧になって下さい。

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