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私はコレで煙草を辞めました?  作者: 白い黒猫
第一種接近遭遇
3/35

偶然か? 運命か?

因みに、初めての恋人は三位の名前を持つ人でした……

 私が、清酒さんからの誘いにここまで動揺したのは、いきなり恋人が降って湧いたからである。

 今までの恋愛は、恋愛がスタートする前にそれなりの空気があった。それを感じた周りや自分達で盛り上がる。その気分があるレベルまで達した時に、二人で恋愛状態に突入してきた。

 清酒さんの場合は職場で知り合った事もあり、完全にノーガードだった所を連打された気分。決して清酒さんを男として認めてなかった訳ではない。寧ろ結構格好良い人だなと思っていた。私の職場の人からも評判も良い。

 『彼氏にしたら、彼女を大切にしそうなタイプの人よね~』とも話していた。

 清酒さんは、端正な顔立ちをしたイケメンという訳ではない。

 顔に悪目立ちしたパーツが無い為に全体的にバランスが取れていて、シュっとしてスマートな男性見えるタイプ。

 所作がスマートな為に、イケメンな空気を纏った、所謂雰囲気イケメンである。しかし『素敵な人』イコール『惚れる』という訳にはいかないのがこの世界。

 彼の何を理解しているという訳ではない。しかし清酒さんから見て、そもそも私が恋愛対象になり得るとは思えなかった。

 清酒さんはなんというか、大人っぽくて知的な会話を楽しめるような女性が好きそうに見える。それに比べ私は、まだ社会人三年目で、見た目はまだまだ大学生でも通じるくらいで、中身も子供。

 集団の中でも賑やかし担当で、彼に似合いそうな女性とは真逆のタイプである。

 唯一男性ウケの良い所は無駄にある胸くらい。

 高校時代からからかいのネタにされてきた。だからそこを隠すような身体のラインがあまり出ない服を着ていた。

 胸があるのを見抜いて告白してきたとしたら、逆に気持ち悪いとは思う。でも清酒さんからそういったエロい視線を受けてきた事はないからそれもないだろう。そういう視線に私はかなり敏感な方だから。


 そして、今回はそういう空気があったのだろうか? 考えてみるが、頭の中が混乱しているから、上手く記憶を辿れない。

 巻き戻し過ぎて高校生の時の記憶が甦る。彼は、高橋君。

 クラス替えがあったのに関わらず、何故か三年間同じクラスになった。その当時は『当に運命の相手だからだ!』と馬鹿な事を考えたものである。ティーンの時代はとかくどんな偶然も運命と位置づけたいもの。

 出席番号が近い事から、席が近く話しをするうち仲良くなった。その様子をクラスメイトから茶化される程。

『もう、お前ら本当にラブラブだよな~付き合あっちゃえば!』と周りからひやかされ、そのノリでお付き合いを始めたという感じ。

 流されたような感じではあるものの、互いに満更でもない相手。恋愛そのものは非常に平和で上手くいっていた。私にとって最高に幸せで楽しい思い出でもある。互いに初めての恋愛だっただけに、その恋愛は今になって考えると小っ恥ずかしいモノがある。

 思い返すだけでムズ痒くなる程のモジモジとしていた初デート。互いにテンパリ過ぎて頭突きに近い事になった初キッス。初々しすぎて焦れったい程、様々な事に手間取った初体験。

 何とも青く、可愛い思い出の詰まった恋愛である。二人は恋愛状態にある自分に盛り上がり一年と二年は、愛と若さと馬鹿さで乗り切った。

 三年に入り受験の影が二人の日常に落ちた事で、段々とクールダウンしていく。

 頭の中は恋愛よりも将来の事と勉強の事に塗り替えられていったから。大学にも異なる事もあり卒業と共に自然消滅した。

 傷つけられる事もなければ、傷つける事も無い、本当に甘酸っぱくて優しく他愛ない恋愛だった。


 しみじみと過去を振り返っていると、目の前のパソコンがサスペンド画面に変わっていた。

「どうしたの? 今日は、なんかボーとしてない? そんなに悩む企画だったっけ? あんたの担当」

 ボワンボワンとした思考で過ごしていたら、井上先輩が声をかけてきた。彼女は『井上有子』と一見普通の名前に見えるが、実は『イナイ ユウコ』と読みが捻っているという隠れ珍名をもつ人物だったりする。名前が『イナイ』なのに、名前が『有る』なのでよくからかわれたようだ。

「うーん、『地元でデート』って、『地味にデート』じゃ駄目ですよね?」

 井上先輩は苦笑し、首を横にふる。

「あんたの若さで、もっとワクワクキャピキャピとした、楽しい感じの企画作りなさいよ!」

 そろそろキャピキャピって年でもなくなってきているのかな? とも思い溜息をつく。

「私って、好景気を一度も知らずに育った、シブチン世代。だから家中デートとかカラオケボックスとかそんな地味なデートしてきた世代なんですよ」

 井上先輩はヤレヤレといった感じで眉を寄せる。

「それを言うなら、私はバブルは幼すぎて分からない。ゆとり世代でもないさらに過酷な時代に育ってきているわよ!」

 そう言った後、井上先輩は彼女らしいニカっとした明るい笑顔を私に向けてくる。

「今は引きこもり時代だからこそ、素敵なデートを提案する。

 その企画が生きてくるという訳でしょ! それって来週会議に出す企画書よね? だったら週末友達とでも街をデート感覚で歩いてみればいいじゃない。

 実際動いた方が企画って纏まるものよ! ネットで検索して探すよりもね! 

 それよりも、こないだの取材記事の方は書けているの?」

 先輩の言っている事には納得する、しかし『デート』という言葉に私の心はまたドキリとする。

「あっちの記事はもう書けていますよ! 午前中に」

 私は、胸を張って、そこの部分だけは威張ってみたが、先輩は少し睨んでくる。

「だったら、さっさと出して、チェックするから」

 先輩はニコリと笑顔を作り提出を促した。『後の工程の為にも、さっさと提出しろ!』という事らしい。

 私は頷き、今立ち上げていた画面を閉じる。共有サーバーの井上先輩のチェック原稿用のフォルダに記事データーをコピーする。それを確認して井上先輩は私から去っていった。


 その時にスマフォが着信を伝える。

『さっそく今週末でも、どこかに出かけてみない?』

 清酒さんからのメールだった。

『うーん』と違った悩みをそこに感じる。同時に清酒さんなら、デートとか慣れていて良いアイデアも持っていそうにも思う。

 一緒に食事しているときに、記事の良い切り口が浮かぶ事が、今までもよくあった。

 デート企画と、清酒さんとのデート、これが同時に来たのは偶然なのだろうか? 天の助けなのか? 神様の質の悪い悪戯なのか? 運命ではない事は確かだと思う。

 デートだと思うから、変に気が張り妙な気分になるんだ。

 取材と思って楽しめば今までのように清酒さんと楽しく一日を過ごせるかもしれない。私はそう考え、コチラの事情を説明する為のメールを返信した。


井上さんは 16位です。

ほかに、イネさん イナエさん イカミさん イガミさん イウエさんという読み方もあるそうです。


 


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