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私はコレで煙草を辞めました?  作者: 白い黒猫
第四種接近遭遇
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ググってみて、さらに惑う

 五時を越えた段階で少し早いけれど夕飯の支度をする事にした。

狭い部屋の中で清酒さんと向き合って話を続ける事に異常なほど照れを感じたからだ。

『手伝おうか』という清酒さんに『いいの! 座ってゆっくりしていて!』という如何にもドラマで恋人が交わしそうな言葉を返して、更に照れる。

 タブレットでネットを見ているようで、時々私を見ているような清酒さん。その視線を感じやや緊張しながら、夕食を作る。


 今日、私は何を作るかを今週は色々考えた。

 大人の女性として、ここでカレーやシチューを作るという事はしたくない。

 また男性ウケを狙った肉ジャガとかオムライスとかもどうしたものかと思う。かといって新メニューを試すのには味の問題、失敗などのリスクがある。

 あえて特別感はなく、チョット珍しいけれど簡単でまあ美味しい得意料理を用意することにした。

 朝からブイヨンスープで煮込んでおいた豚ロース塊肉。それをスライスしたものをお皿に並べ、二種類のソースで頂くというものをメインとする。

 豚ロースの塊を煮た事で出来たスープにキノコと溶き卵を浮かべたスープ。冬瓜と干し海老を一緒に煮たものの餡かけ。それにアボガドとカニかまのサラダという感じの料理を作った。

 料理が美味しそうに見える、赤、黄色、緑の色がちりばめられていて、見た目もそこまで悪くない。若干酒のつまみという感じである事は気が付かなかった事にする。

 清酒さんがテーブルに並んだ料理をみて驚いた顔をしたが、すぐに目を細め嬉しそうに笑う。その表情を確認して私は心の中で『よし!』と小さくガッツポーズをする。

「こういう感じの料理って、なんかいいよね。すごく美味しそうだ」

 清酒さんの言葉に、『イヤイヤ』と答える。外食では味わえない照れくささとワクワク感のある食事が始まった。清酒さんの嬉しそうな顔が料理に手をつけた後でも変わらない事で、私の緊張は解ける。お口には合ったようだ。

「タバさんって、料理上手だね。どれも旨いよ」

 清酒さんの言葉が嬉しく、顔が赤くなるのを感じる。

「コチラがオニオンソースで、コチラがトマトソースなの、二つの味で楽しんでね」

 私は照れ臭さから、ソースの説明を始めながら清酒さんの方に器を寄せた。清酒さんは素直に自分のお皿に載ったスライスポークにそれぞれのソースをつけて楽しむ。美味しかったようで納得したように頷く。

 トマトソースといってもみじん切りしたトマトをマヨネーズで和えただけ。オニオンソースも……。

「それぞれで全然違う味わいになるんだね。このオニオンソースも大人っぽい味で面白い」

 料理に纏わる話題を楽しみながら穏やかな時間が進む。

 十五分程して、清酒さんは首を傾げる。

「あのさ、このオニオンソース、もしかしてお酒か何か入っているのかな?」

「分かります? 

 コレ赤ワインに摺り下ろしたタマネギ混ぜて醤油で味を整えて仕上げたソースなの!」

 しかし、清酒さんは顔を顰め手で顔を覆う。

「ゴメン、少し酔ったみたい。チョット横にならせて」

 といって本当にそのまま横になってしまう。

 酒に弱いという話は聞いていた。まさか調味料として使っているワインで横にならなければならない程酔っぱらうレベルだとは思わない。

 多分清酒さんが口にしたアルコールは、お猪口に一杯くらいの量だと思う。

 確かにそのソースの主成分はほぼ赤ワイン。しかしこれくらいで人って酔っぱらえるものなのだろうか?

 テーブルを引いて、清酒さんが寝る空間を広げてから、そっと近付き様子を伺う。

 顔が赤くて呼吸が少し荒い。

「清酒さん?」

 声をかけても返事はない。もしかして急性アルコール中毒になってしまった?

 私は青ざめる。怖くなって新しく買ったばかりのパソコンで『急性アルコール中毒』について調べてみる。

『脳の中枢部分までも麻痺して、呼吸機能や心拍機能を停止して死に至る』

『一~二時間で約半数が死亡』

 そんな文章が目に入り怖くなる。

 清酒さんの様子を伺う。コレは『ほろ酔い状態』『酩酊』『泥酔』『昏睡』どれなのか? 見極めようとするが、素人には分からない。

 血中アルコール濃度の問題とある。多分『急性アルコール中毒』ではないとは思うけれど、怖くて『119』に電話をしてみる。

 消防局の指令課員にかなり呆れられてしまった。この状態は『急性アルコール中毒』状態ではない教えられる。

 こういう状態になった人の手当の仕方を教えてもらい通話は終わった。

 私は清酒さんを横寝にさせて回復体位を取らせる。首もとのボタンはもう最初から外れていたが、念のため全部外しておいた。

 呼吸が楽になるようにベルトを抜き取りズボンもボタンを外し少し広げておく。

 ブランケットを取り出し清酒さんの身体にかけた。


 する事も無くなり状況に何か変化があったら大変とジッと横に坐り込んで、ただ見守るしかない。

 ブランケットから出ていた手を握るとその手が暖かく少し安らぐ。

 おでこに手をやるとやはり少し熱い気がする。私は熱を測るかのように自分のおでこを当ててみると、やはり私より熱が高いようだ。

 おでこを冷やした方がいいのだろうか? 私は冷え性の為に少し冷えた私の手をぴたりと当てたままにする。

 一向に目を覚まさない清酒さんに不安はどんどん募っていく。もしこのまま清酒さんがこのまま寝たきりになってしまったらどうしようか?

 私は責任をとって一生面倒みていき、清酒さんを見守っていくしかない! と覚悟を静かに固めた。


煙草さんが作った料理を拍手の方で作り方を紹介しておきました。

お酒に弱くなければ、どうぞお試し下さい。

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