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私はコレで煙草を辞めました?  作者: 白い黒猫
第三種接近遭遇
22/35

最後に残った謎

 私と玲奈さんは、濃厚な時間を過ごした事で、急激にその仲を深めた。お店を出て二人で抱き合ってしまうほど熱く深い関係に発展。

 お酒を呑むピッチが私よりも速かった為に、かなり足取りが怪しくなっている玲奈さんを自宅に送った。兄である悟氏に任せてから、私は上機嫌のまま自宅へと戻ったつもりだった。

 そこで最後の謎が残る。何故私が自宅でなく、清酒さんの部屋で目を覚ましたのか?


 ドゥーメチエを出た所まで話をして、清酒さんの顔をチラリと見上げる。

「あの、それで、何故、私は清酒さんの所にいるの? 私の記憶では、そのまま自分の家に戻った筈なのですが」

 酔っぱらったからといって、清酒さんの部屋に私が間違えて辿り着くという事はあり得ない。

 というのはまだ清酒さんの部屋に行った事がないために、場所を知らないからだ。

 清酒さんは『ウーン、危なすぎる』額に手を当ててと唸る。

「あのさ、本当に覚えてないのか? 君がいきなり電話かけてきたんだろ!」

 私は鞄を手繰り寄せ、スマフォを取り出し履歴を見てみる。昨晩の二十二時五十二分に清酒さんに十分程、電話をかけた形跡がある。

 私はどんな電話を清酒さんにかけたのだろうか? 必死で思いだそうとする。

「明らかに様子がおかしいから、迎えにいったら、一人で公園でハイテンションでお酒呑んでるし!」

 そういえば、あの帰りに喉が渇いてコンビニに行ったという事実を思い出す。

 そこで私は、何故か分からないけれどお祝いしたくなり缶チューハイを買ったかもしれない。そして……。

 縋るように見上げると、清酒さんはハァ~と大きく息を吐いた。

「最近、気が付いたのだけど。タバさんって、酔っぱらうと、俺に電話をかけてくるところがあるよね? ソレって俺はどう受け取れば良いの?」

 清酒さんの言葉に私は首を捻る。

 記憶を飛ばす程呑んだのはコレが初めて。なのでそこまでの酔っ払っていた時の事は苦労せずに記憶を辿る事ができた。

 こないだの同窓会の時も、あと友達とその前に呑みに行ったときもかけたかもしれない。

「確かにそういう所があるかもしれません」

 私はうなだれる。清酒さんが『過去に酒癖があまりにも悪く別れた彼女がいる』という言葉を思い出し、心が冷える。

「ソレって、誰彼構わずかけてしまうの?」

 その言葉に私は頭を思いっきり横にふった。そして二日酔いの痛みに襲われ頭を抑える。

「清酒さんだけです! なんか声が聞きたくなって」

 言ってから、コレはコレで問題のある言葉である事に気が付く。『清酒さん限定で迷惑をかけてます』というのも良い事ではないだろう。チラリと清酒さんの様子を伺うと、ブブッと笑っていた。

「ソレって俺の都合の良いように、受け取っても良いのかな?」

 そう言われて、私は首を傾げる。友達と呑んだ帰りは、凄く月が綺麗だったからついそれを教えたくて電話した。

 同窓会の時は昔の恋を思い出しその時のトキメキ気分を思い出し浸っていたから。そして清酒さんの声が聞きたくなって……昨晩は……覚えてない。

「多分、清酒さんが好きだからだと思う」

 清酒さんの顔を見るのが恥ずかしいので、ジッとテーブルに置かれた空のカップを見つめる。私はそうポツリとつぶやいた。

 言葉にしてみて、自分の気持ちがハッキリする。私って清酒さんの事が大好きだったんだと。頭に暖かいものを感じる。清酒さんが私の頭を撫でてくれている。

「そういう行動ってさ、今度から酔っぱらってではなくて素面で示して欲しいな」

 見上げると、いつもの柔らかい笑みを浮かべる清酒さんの顔があった。私はその表情が嬉しくて思わず笑みが込み上げてくるのを感じる。

 真っ直ぐ清酒さんの顔をみてコクリと頷いた。

「珈琲のお代わりはいる?」

 新しく注がれた珈琲を二人で飲みながら、穏やかな時間を楽しむ。

 暖かいのは熱い珈琲のお陰だけではない。清酒さんと一緒にいるからなのだろう。

「そういえばさ、私、昨日酔っぱらってどんな状態だったの?」

 落ち着いてきた事で、私は気になった事を聞いてみた。もう怒っている感じではないので、大丈夫だろうとも思ったから。しかし清酒さんは一瞬黙り込み、そして私の顔をジーと見てニヤ~と何故か笑う。

「聞かない方がいいかもね。覚えていないなら、それでいいのでは?」

 非常に気になる言葉だけを返して、まったく教えてくれなかった。その笑みの意味が分からず私は、ゾッとする。

 清酒さんの表情にではなく昨日の自分に対して怖くなったから。

 何をやらかしたのだろうか? そんな言えないような状態だったのだろうか?

「暫くは、お酒は止めようね。特にそんな厄介な因縁のある清酒はもう飲まないように」

 私はその言葉に頷き『はい!』と良い子の返事をする。『お酒は危ない!』 私はその言葉を強く心に刻みつけ、自分を戒める。私はコレで暫くの間、お酒を辞める事にした。

コレにて三章終わりました。

煙草さんがやらかしたことは、また、清酒さん視点の物語【スモークキャットは懐かない?】において描かれています。

この二人のバレンタインエピソードを2/14日に短編として公開いたします。

『義理チョコはギリギリな感じでお願いします』

この物語より11ヶ月ほど後の二人を楽しんで頂けたら嬉しいです。

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