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第三十話 宝探し





 雫をまるっと言いくるめて――もとい、懸命に励まして、それからようやくふたりは足を進める。

 その道中、羽織はざっとマッドについて説明を加えておいた。どうせバレること、変な場面で知って驚愕硬直なんてされたら連れて行く意味がない。

 まあ、雫は条家ではないし、口止めだけしておけばさほど問題はないだろ。結構、軽い判断だった。

 解説中、色々と突っ込まれたが、面倒なので軽くいなしたり受け流したり、あまり真面目に取り合わないでいたら雫のほうが諦めた。

 そんな感じで説明不足がところどころ――意図的に語らなかった部分も込みで――あったが、とにかく大まかにでも語り終えると。


「あらゆる意味で人に限りなく近いヒトガタ、か。まるでSFだな……」

「…………」


 感想がこれだ。

 雫は羽織のなんとも言えない視線に気づき、疑問を顔にだす。


「? なんだよ」

「いや……」


 発想が完全に同レベルで、なんか悲しかっただけだ。と言えるはずもなく、羽織は押し黙った。

 とか、そんな風に緊張感なく話をしていても足は動いていて。

 目的地に辿りついていた。

 見上げるそこは、どこにでもあるビジネスビル。ざっと観察したところ十一階建ての高層建築物だ。

 何の変哲もない、今からここに出勤すると言われても違和感ないビルディングである。

 まさかそんなビルが魔益師の側の建物とは誰も思うまい。条家は古式ゆかしい日本屋敷だったのに対し、幾分以上に近代的なここが、この町の“黒羽”支部だった。

 そして。


「なんで、ビルの高さが違うんだよ……」


 支部のビルから空中およそ七階辺りで渡り廊下が橋のごとく繋がった隣のビル。

 何故か隣に並んでいるというのに、そちらは十三階建てで、階数が違う。違うが、違うのは階数だけで外見外装はまったく同一、廊下で繋がっている点から見ても、間違いないだろう。

 こっちが今回の本命――マッドの待ち構える、否、浴衣が捕まっているであろう目的地だ。

 十三って縁起悪っ、とか。なんでマッドの方のビルのが高いんだよ、とか。まあ諸々の突っ込みはおいとくとして。

 羽織は振り返り、アホ面でビルを見上げる雫に忠告をひとつ。


「おい、いっこ忠告だ」

「忠告? 珍しいな」

「自覚はあるがな。

 ……いいか、マッドのヒトガタどもには気をつけろよ」

「いやそれは勿論わかってるぞ。何故、改めていちいち?」

「わかってなさそうだからだよ。

 あー、なんだ、魔益師の強さってのは魂の強さだ」

「? ああ」


 話が変わるが、やはり当然過ぎる当然なこと。雫は曖昧に頷く。

 羽織は断定のように、さらに言う。


「だが、人の魂は簡単に揺らぐ」


 単純に言って、魂の揺るがない奴は強い。揺るがないほどの意志をもつような奴こそが、強い。

 それはきっとどんなことにも共通しているのだろうが、魂魄戦闘においては特に言えることだ。

 ――恐れを抱けば魂の弱体を招く。確信をもてば魂の強化に至る。

 魔益師は魂という曖昧なものを根源とするのだから、感情の機微でさえ大きな変化があるものなのだ。それ故に、自己を律することが魔益師の大前提となる。

 嘘か真か知らないが、実力では数段劣る魔益師が相手の魔益師に信念で格段に勝っていたがために勝利を掴んだという、どこかの誰かの話を羽織も聞いたことがある。

 そして。


「マッドの創り出した子供たち――あいつらは揺るがない。感情がほとんどねえだけといえばそうだが、それは脅威だ、わかるな」

「ん、ああ……」


 既に体験した事実として、雫は深く頷く。

 無機質な眼光、動かない表情筋、背筋の凍るほどの無感情。

 まるで機械と向き合っているかのような、そんな熱のない殺意。冷めているから行動にノイズはなく、ムラも躊躇いもない。

 戦闘において、それは確実に勝利の要素となる。魔益師において、それは間違いなく強さの要因となる。


「ってもまあ、長所は長所だが、それでも決定的な弱点もある。

 ――経験不足だ。圧倒的なまでの戦闘経験のなさ。基礎能力は高いし、能力も高出力だろうし、パターンとしての戦法はあるかもしれねえ。だが、それだけだ。本当にそれだけだ。応用が全くない。臨機に応変できない。自分の戦法を意地でも固持する、不利でもやめない。だからパターンを見切れ、それで勝てる」

「……なあ」


 羽織が真っ当なことを言ってやっているというのに、酷く気の抜けた調子で雫は呼び掛ける。


「んだよ、真面目に言ってやってんのによ」

「いや、それよりも……私も戦う意味があるのか?」

「あ? なきゃつれて来ねえよ」

「だが……」


 雫は躊躇いからか一拍あけて。


「貴様の能力は、もうほとんど無敵だろう」


 だから私は戦う必要がないだろう、と雫は首を傾げた。

 雫としては認めたくないが、羽織の能力“万象の転移”は最強――とまではいかないにしても、強力無比なものだ。

 それを隠す理由も、まあマッドとやらのおかげで理解できたし納得した。だが、今回の相手は元より能力の詳細を知っているではないか。ならば隠す意味はなく、全力でことにあたればいい。

 その場合、自分は本当に足手まといにしかならないだろうし、だから戦力に数えられているとは思わなかった。同行の許可がでたのは、拒否が面倒だからとか浴衣を探す時の人手というくらいの意味だと雫はごく自然にそう考えていた。

 そういう感情が表情に丸々でていたのだろう、羽織はいやに渋い顔をさらして答える。


「無敵だ? んなわけねえだろ」


 自身を最強だと、そう確信するのは確かに魔益師として強さとなるが。

 だからといって単なる驕りでしかないなら、それは危ういだけだ。ちゃんと自分なりの根拠があり、絶対の自信があって、それを魂の底から信じ込めなければ、それは驕りだ。自信とは似て非なる、危うい感情に過ぎない。

 中途半端な認識は機能することはなく、間違った自負は刃を曇らせる。

 つまるところが、驕り昂った存在は常に敗北するのが世の常、ということだ。

 故に羽織は強者と自認しても、最強などとは欠片も思っていない。

 というか、羽織は“本当の最強”というものを知っている。知っているからこそ、それ以外を最強などと口が裂けても言えないし、身が裂けても称せやしない。

 まあ、雫はそんな羽織の内面など知らないので、能力の利便性だけを見て発言する。


「変なところでは謙遜するのだな……」

「事実だからな。あー、あとな、あんまりおれに頼んなよ? 今はおれ、全力だせねえし」

「それは貴様が能力を隠しておきたいからだろう? マッドとやらは貴様の能力のことを知っているのだから、隠す意味などないはずだ」

「……」


 一瞬だけ羽織は怪訝そうに眉を反応させるが、すぐに齟齬の原因に気付く。

 どうやら羽織が能力を使わない理由を、雫は勘違いしているようだ。羽織は自分の能力を隠したいがために能力を使わないのだ、と雫は思っている。

 真相はそうではないのだ。いや勿論できうる限り隠しておきたいのも本音だが、どちらかといえばその理由のほうがサブで、メインの理由は他にある。

 羽織が能力を使わないのは、そもそも――


「いんや、隠す隠さないじゃなく――そもそもおれは能力を“使えない”」

「は?」


 それは、どういう韜晦だ。無思考の内に、雫は口を動かしていた。

 羽織は、だが首を振る。韜晦ではなく、事実だと。

 脳内に多量のクエスチョンマークを乱立させて、雫は頭を抱える。


「意味が、わからんぞ。本格的に意味がわからん。本気がだせない? では数日前のあれはなんだったのだ?」

「んー、あそこまで力を出せるのは、精々年に一度くらい。で、先日使っちまったからもう使えませんってこと。今はできて“軽器の転移”くらいだろうな」

「はぁぁあああ!?」


 さらりととんでもないことを告げる羽織。雫の脳みそは理解が追いつけない。クエスチョンがエクスクラメーションマークに変質し、頭痛となって襲う。

 一瞬ふらりとなる雫であるが、堪えてともかく事実確認からはいる。


「いや、何故? 何故だ!?」

「まあ、あらましは置いとくとして。とにかくおれにはそういう認識があると思ってくれていい」

「あらましを置いておくなよ! そこが重要だろうが!」


 激しく問いたてるが、羽織は取り合わずにただ一言。


「黙秘」

「くっ!」


 つまるところが、話す気はないと。そういうことか。

 これでは雫としては手も足も出ない。何故って、口の上の勝負では羽織のほうがずっとずっと上手だから。聞き出すなんてできるはずがない。というか、羽織の隠し事なんて今にはじまったことではないし。

 仕方なく雫はそこを諦め、話をまだ聞きだせそうなものに変える。


「じゃあ、なんでそんな大事な年一回をあんなのに使ったんだ? そのせいでこの事態に発展したようなものだろう」

「……。イライラしてやった、誰でもよかった、今は反省している」

「どこの突発的犯罪者だ!」


 冗句はさて置き、羽織も言葉通り反省はしているのか、そっぽを向いて些か拗ねた口ぶりをする。


「別に、かれこれ十年ほどは本気なんざだしてなかったからな。久々にムカつく野郎が現れて、“軽器の転移”だけじゃあ殺し切れないと判じたんで、やっちまえばいいかと思ってな。ノリだよ、ノリ」


 羽織も常に冷静に見えて、それでいて後先考えない無鉄砲な男なのである。

 別に逃げればよかったのに、主のためとはいえあれほど高位の魔害物と真っ向から殴りあうなど、思慮が足りないと言う他ない。まあそれほどまでに怒り心頭だったということだが。

 そういう悪癖を棚上げして、羽織は偉そうに言う。


「ま、おれに頼るな、おれに助けを求めるな――てめえでなんとかしな」

「偉そうに言えたことか」


 全く、と雫は嘆息する。

 確かに頼りっぱなしはよくない、それはわかってる。だが今回は羽織のミスじゃないだろうか。

 不意に。

 ん? と雫は何事かに気付く。


「いや……待てよ? ということは、全力をだせない貴様と私のふたりだけで、マッドサイエンティストと数もわからないヒトガタどもを相手取る、のか?」


 まさかそんなことあるわけがありませんよね、あはは。冗談キツイですってマジで。雫の心はまさにそんな感じだった。

 だが、返答は無情無慈悲のひとことだけ。


「そーだな」

「無茶だろう!」


 切実な叫びだった。

 悲鳴か断末魔か、とかく重く耳残る叫びだった。

 羽織は、特段気負うことなく易く請け負う。


「別に戦う必要はねえさ。浴衣様だけ助けりゃいいんだからな。お前が風で探し当てて、とっととトンズラすりゃいい」

「……私をアテにしているのか」

「ああ」

「む、ぅ……」


 メチャクチャ素直に肯定されて、雫は困り果ててしまう。

 そんな感じで話題をすり替えることで、羽織は上手いこと雫の追求を逃れた。

 実際のところ、戦闘もなしでトンズラできるほどにマッドは甘くないだろうから、これは雫を連れて行くための方便である。

 考える間を与えない――羽織はスーツケースを背負いなおしビルへと足早に入り込む。雫は僅かに逡巡したが、その背を追いかけた。

 羽織は、邪悪に笑うのだった。






 ふたりは正面玄関から堂々と侵入する。

 自動ドアが開かれ、踏み込んだエントランスホールは流石に広い。いくつかのソファは置かれているが、他になにがあるでもなく質素な空間だった。ただし建物自体は小奇麗で豪奢、どこぞのホテルのようだった。

 まあ、ここまでは関係者以外も入ることはあるのだろうから、マッドの趣味を反映するわけにもいくまいか。いや、部屋の内装についてマッドに趣味があるのかと問われれば、知るはずもないが。


「――ふん? 誰もいねえな」


 広々としている割には、全く人の気配がない。

 これはつまり、本当にマッドしかここにはいないということなのだろうか。

“黒羽”の人間の幾人かほどはいるのかと思っていたのだが、ここまで無気配だとそれもなさそうである。

 まあ、あのマッドサイエンティストは普通に嫌われてそうなので、頷けなくもない。というか組織に属しているほうが違和感あるタイプの人種だ。

 もしかして嫌われて一緒の所にいたくないから、わざわざこの建物を新しく建てたのではないか、羽織はそんな愚行を働かせた。

 なんにしても、


「どういう理由があんのかは知らんが、よくもまあマッドのような科学者ひとりにビル一個くれてやれたもんだ。“黒羽”、繁盛してんなぁ」

「……おそらくは、総帥の意向だろう」

「?」

「“黒羽”の総帥は、戦力拡張に執心しているからな。これくらいの出費は問題にしないだろう」


 嫌に無感情に、雫は鬱陶しそうに吐き捨てた。

 どこか粘つくような感情が――雫には不向きなそれが、その言葉からは感じ取れた。


「…………」


 先ほど事のあらましを説明した時にも“黒羽”という単語には微かな反応はあったが。

 加瀬 雫と“黒羽”。

 以前所属していたことくらいは羽織も知っているが、それ以上になにか大ごと的なことがあったのではないか。

 羽織は別に詮索なんてしないが、少しだけ気にはなることであった。

 と。


『まあ、それはひとつ前の総帥の話だがねえ』

「「!?」」


 夕立のように突然、降りかかるニヤケ声。

 声の方向を向けば、ホールの奥の壁にはテレビが設置されていることに今更気付く。そこに映し出された映像はマッドサイエンティストの狂笑。

 その無駄な口の軽さで、マッドは続ける。


『まあ、知らないでも無理はないさ、総帥の代替わりはつい最近の出来事。外部には未だ漏れていまいよ』


 それをここでバラしていいんかい。羽織は驚愕から立ち直り、心底からゲンナリしてしまう。

 対して雫は、思ったよりも急激にその発言に反駁する。


「馬鹿な! あの男が負けたというのかっ!? そんなっ、そんな馬鹿な! ありえないぞ!」

『ふん? その口ぶり、君は“黒羽”に所属していたのかい?』

「……昔」


 ゆうに五秒は沈黙してから、軋むような音で雫は本当に小さくそう言った。

 それで納得したというように、マッドは大きく頷く。


『そうかいそうかい、それならば信じがたいのもわかるよ。とはいえ、君が信じようが信じまいが事実は事実として動かないが、ね』

「あの男が……」


 悲しいのか、嬉しいのか、雫は奇妙な表情を浮かべてそれ以上は黙った。

 それきりひとつ話が途切れ、それを感じてマッドは元の用事に立ち返る。


『それよりも羽織。私はひとりで来いと、言ったはずだがねえ』


 やれやれと別にそこまで困っていなさそうに、マッドは肩を竦めて見せた。

 ああようやく本筋になったのか、と羽織は一歩前へでる。いつもの強気な笑みを浮かべる。


「はっ、こいつはひとり分にも値しねえからな。せいぜい半人前だ、切捨てでひとりだろうが」

「おい!」

『そうかい、それなら仕方ないね』

「おぃい!」


 敵味方双方から半人前扱い。雫は渾身の力で突っ込む。

 あっけなく無視して羽織は言う。


「で、来てやったぜ、浴衣様はどこだ?」

『九条 浴衣かい。彼女なら今、とある部屋に軟禁しているよ』


 何故かおかしそうに、喉の底から押し殺したような笑い声を上げる。


『くく。それでだ、君たちにはその部屋を探してもらう』

「……それは、」

『そういうゲームさ。宝探し、といったところかな?』

「浴衣様を物扱いするんじゃねえ」

『おっと、すまないね。では……ふむ。囚われのお姫様をこの魔王から、見事救い出してみてくれたまえ』

「かっ! うっさんくせえの。

 ……そっちは、じゃあなにすんだよ」

『勿論、邪魔をするさ。今手元にいる私の子供たち、全員を君たちの拘束に動かす。その数五名』

「……なんだ、意外に少ねえな、てめえの子供」


 拍子抜けしたように、自然と呟いていた。

 魂を割いて創りだすヒトガタ――もっと多くいると羽織は踏んでいたが、流石にそこまで数はいないようだ。

 マッドはどこか憮然としてやや目線を逸らす。


『どう思っているのかは知らないけれどね、私の能力は手間も時間も多大にかかるのだよ。完成体と呼べるような個体は、七体ほどしかいない。その内、ひとりは本部で試用運転中だし、またひとりはそこのお嬢さんに倒されてしまったからね――残るは五体さ。

 まあ、魔害物の紛い物はこのビルに無数に放ってあるから、数の上ではまだまだ楽観できないのではないかい?』

「……ていうかお前、おれが死んでもいいのか?」


 ヒトガタならば、殺さずもできるだろうが。

 紛い物とはいえ魔害物には、そんな概念は存在しえないだろう。敵ならば、誰彼構わず殺しにかかるはずだ。

 だが、羽織の能力に興味があるのならば、羽織が死んではいけないのではないか。実はそういう考えもあって、羽織は余裕であったのだが、これでは羽織が死ぬ可能性もある。

 それで、マッドとして問題にならないのか?

 マッドは笑う。捻れて元に戻ることがないほどに歪んでしまった、異質な笑い方だった。


『構わないよ? だって羽織、君は死なないじゃないか』

「……あ?」

『死の概念が除かれているというならば、殺しても死なないはずだ。それを実証してみるのも、また楽しいじゃないか。だから――殺してみるのさ』

「っ」


 狂信。狂っているほどの確信。狂おしいほどの断定。

 マッドサイエンティストは確信している。

 羽織の能力であれば、それができると確信している。いくら羽織が否を並べ立てようとも、その確信は一ミリだって曲がりはしない。

 それが故に、羽織は殺しても死なないと自然に思考がいく。だから遠慮なく全戦力を展開できるというわけだ。

 本当に面倒くさい野郎だぜ――ため息を堪えきれず、それと難易度がまたひとつ上がったと羽織は判断しておく。

 それ以上なにも言うことがないのだと察したのか、マッドは締めくくるべく殊更に仰々しく腕を広げて、高らかに宣言する。


『――さあ、障害の全てを排して、お姫様のもとまで辿り着くといい。ゲームスタートだ』


 言葉と映像が途切れた。

 その瞬間。

 ガコンという音がして、


「ん?」

「なっ!?」


 羽織と雫の踏み締めていた床が、唐突になくなった。

 落とし穴である。


「危ねえな」


 羽織は床が落ち切る前にひょいっと穴から逃れ、


「ぅわぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」


 雫は穴へと真っ逆さまに落ちた。


「って、お前なにひっかかってんだよ」


 などという呆れの成分で構成された悪口も、落下する雫には届かないのであった。








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