ヒール・カンパニー:合法犯罪計画をコンサルティング!
下書きの短編です。今の時点では連載予定なし
「あそこのMAPに気をつけな、レイオン社のMAPはプライベートがねえ、見たもの聞いたもの全部どこぞのサーバーに記録しやがる」
「マップ? 地図ですか?」
「ちげーよ、メタルアームだよ」 「鉄腕?」
「知らねーのか? 昔の作家がアンドロイドだの自立ロボットだの呼んでたやつだよ。
昔の連中が色々な商品名に使ってるせいで、どれのことを言ってんだがわかんなくなったから今時はみんなメタルアームって呼んでるんだ。
両手があって、イエスノーって答える機能がついてればみんなメタルアームだ」
「そうなんですか……」
「そんなことも知らないとか、どっから来たんだよ」
「辺境のスペースコロニーです。老朽化が進んで人類科学の叡智の結晶なんて全く感じない奴です。ワープも無い程度の科学力なのにどうしてこんなに広がったんでしょうね、人類」
「へぇー、地球の底辺タクシードライバーにはわからない世界だ」
「……」
「おっと、何でメタルアームだの自動運転だのじゃなくて有人タクシーなんだって思ってるだろ? みんながみんな自動運転車を乗り回すと自慢にならねーだろ。
特権階級の皆様はあえて、ドライバーって言うブルシットジョブが希少価値なんだよ」
「で、宇宙からわざわざ地球に何をしに?」
「修理予算が足りないんですよ。何しろ老朽化した田舎ですから」
「なるほどなー。地球より火星の方が今はイケイケだと聞いているぜ?」
「宇宙に夢見る人が多いのはまだ地球なので」
「そいつは良かった。夢見る奴がいなくなったら人間を全員メタルアームにしても良いからな」
「メタルアームは夢を見ないので?」 「出来る機能を持ったAGIを搭載した奴なら見るんじゃない? でもそんなの単純労働させるにはもったいないだろ。MAP程度なら、もうちょっとグレードダウンしてる奴しか載せないよ。Pってなんの略語がわかるか? プロレタリア(労働者)だよ」
「ブルジョワはいるので?」 「経営者補佐のメタルアームは俗称でそう呼ぶらしいな」
「餓死と風邪程度の病気は今時根絶されている。正確にはそういう事態になる前に手持ちの端末のヘルスケアサービスが見つけて後は医療保険サービスの出番だ。
お蔭で、働かなくても生きるだけなら出来る。実際はやりたいことの一つもあったら働いて金を稼がないといけないがな」
「そんなの大昔から当たり前じゃないですか」
「おいおい、求人サイトでも見て適当に応募すりゃ日雇い程度なら出来るなんて思ってんじゃないよな? その程度の仕事はMAPにさせりゃいいだろ。
なんのスキルも持たねえカスみたいな底辺がやれる最後の合法の仕事はヴィランだ」
「……はい? ヴィラン(悪役)? 映画のエキストラ的な?」
「近いが、一応本物のテロリストだよ。ただし、一定の条件の下でやる限りは警察も捕まえないし、デカいことをやればやる程大金が手に入る。こいつらを捕まえる仕事もあるぞ。ヒーローって言う」
「???」
「要するに、今の時代、メンテさえしてりゃよほどの自然災害でも無い限り建物が壊れたりしないだろ。
つまり町がどんどん古くなっていくのに、建て替えられねえし再開発に困る。合法のテロリストが街を爆発させてくれれば再建の仕事にもなって好景気って奴だ。
それがヴィラン。誰も殺さず、最低でも犯行5分前に予告状を拡散してれば合法に破壊活動、強盗が許されるテロリストだ」
「……なんすか、それ、こっちは空気漏れに怯えたりして暮らしてるのに」
「そいつは良かったな。適度の恐怖がなきゃ人間張り合いがねえよ。どうせ安全装置は無数にあるんだろ?」
「だとしても油断したら本当に死ぬんすよ!?」
「ヴィランも油断したら死ぬぞ。何しろ爆弾にしろ、強盗にしろ自分で作って相手は自衛もするからな。俺、こう見えて昔ヴィランやってたことがあるから知ってんだよ。
悪事も才能が必要だぞ」
「……ヒーローってどんな奴らっすか? やっぱ映画みたいなスーパーパワーがあったり?」
「それっぽいことをする秘密道具はあるな。あれは免許制だ。底辺層でもちゃんと机にかじりついて丸1年勉強してついでに毎日マラソンする体力を必要とする。
逆に言えばそれが出来れば免許がもらえて秘密道具が買える。あとは適当な企業のそういう部署で雇ってもらえれば一応活動できる」
「つかぬことを聞きますけど、ヴィランとヒーローの相場って……」
「自分で計画を考えることが出来る奴はそれだけでBになる。ヴィランもヒーローもABCの3段階評価に±がつく。底辺はCマイナスだな。
で、Aは一回の仕事で300クレジット。ただし成功報酬。Bは200、Cは100が基本価格だ。強盗で得たものを売却した時の利益もヴィランなら全額自分ものだ。
まぁ、殆どの場合元の持ち主から買い取ってもらうんだがな」
「まぁ、すごい奴は旧世紀の犯罪娯楽映画みたいなことをするよ。十数年くらい前、カジノの金庫を破って現金を盗んだ奴はみんな拍手喝采だったくらいだ」
「ヒーローどもでさえ、目の色を変えたからな!」
「それって、保険会社が一番大変では?」
「そうかもな! それで?」 「それでって……」
「リストラしちまえば経営者一門は生き残れるんだから、それにそのまま大量の現金を使えば足がつくだろ。
カジノの金庫の現金なんて全部追跡されてるにきまってるからな。必然的に保険会社に半分くらいの金で買い取ってもらうのさ。追跡されてない現金で!」
「……もしもヴィランが人を殺したら?」
「そん時は合法テロリストから違法テロリスト、ヴィランじゃなくて、単なる犯罪者として警察が捕まえにくる。
軽い病気と餓死が無い世の中で人を殺すような凶悪犯にまともな人権なんか保障されねえよ。
現場判断で射殺さえされなければあとは裁判まで耐えるだけさ。まぁ、どのみち2人死んだら死刑だがな」
「ヴィランが武器を使うことは?」
「もちろん合法さ、人を殺さない限りはね」
「例えば、ヴィランが銃を使うことは?」
「その銃で殺さなきゃOKだな。まぁ、銃弾で人を殺さないのは難しいぞ。専用の非殺傷弾は高いし、命中率も悪めだ。それでも使う奴は多いが、だいたい最後の切り札扱いだ」
「ヒーローの側は武器を使っても?」
「もちろんOKだ。ヒーローも殺人はOUTの縛りがあるがな。こっちでも銃は同じだ。
高級どりのAプラスのヒーローの中には二丁拳銃がトレードマークの奴もいるがAプラスだからそういう真似が出来る。
……抜け道自体はあるぞ? ピストルクロスボウを自作すりゃヒーローもヴィランも銃っぽいもので戦える。弾丸も選べば殺傷力を抑えられるしな」
「あと、ヴィランも結局はチームワークだ。1人で何でもできる奴は実際には殆どいない。デカいことをやりたきゃ、純粋に人手が足りなくなる。
まぁ、ごくわずかな例外はMAPを大量動員して色々とやり遂げるんだが、そういうのはAの領域にしかいない。当たり前だよな。
犯罪計画で得る利益より計画にかかるコストの方がデカいパターンもあるからな。
……言っとくが、ヴィランなんて基本的にカスの底辺の仕事だ。連中にまともな論理的思考を期待するなよ。へーきで嘘をついて、へーきで逃げて裏切るからな」
「……そうなんですか……」
「まっ、現実は厳しいってこった。ついたぞ。地球統一連邦宇宙開発予算局。コロニーの改修予算どうにかなるといい――――伏せろォ!!」
「……………………………………………………………………………………一体何が……」
「あー畜生。おしゃべりに夢中になってて、ネットをちゃんと見てなかった。予告状出てんじゃねえか」
2人の男がいる。タクシードライバーと精一杯のフォーマルスーツに身を包んだ若い男の2人が。
「あぁ……」 「まぁ、運が悪かったな」
目の前に広がるのは瓦礫とサイレンが鳴り響く風景。
「というわけで、俺は今からこの危険地帯から離れるがお前さんはどうする?」 「どう……って」
「逃げるか、それとも頑張って突撃して予算を認めてもらえるようお偉いさんに泣きつくか? まぁ、お偉いさんどもは多分MAS……軍事用のメタルアームに守られながら
ヒーローどもが待機しているヒーローシェルターに移動中だろうけど」
タクシードライバーの男に対して出せる返事なんて一つしかない。地球に頼れる人間なんて元々いないのだから!!
「俺の名前はエドワード・ブラウン。人呼んで元B+ヴィランのエド・ボマー。よろしく!」
これは、やけくそになった少年少女に青年におっさんおばさんが合流して、合法犯罪計画コンサルティング会社を立ち上げるそんなお話。




