とある日の先輩と後輩と、知り合い
先輩後輩シリーズ。
後輩の知り合い視点。後半は先輩視点。
「あれがお前の大好きな伊折先輩?」
愛斗の肩に腕をまわして問いかけると、心底嫌そうな顔をされた。
「………違イマス」
「嘘下手すぎやん。どう考えたってあれっしょ」
「うるさい黙れヤリチン」
まわした腕を振り払われつつ吐き捨てられる。酷い言われように思わず笑った。
今日の愛斗は地雷系。ピンクのフリルブラウスに膝上の黒スカート。ニーハイ。
女の子だったら絶対ナンパしてた。こいつはお世辞抜きでめちゃくちゃかわいい顔をしてる。
男にしておくのはもったいない。
「最近はそんなにヤってないって。今も5人ぐらいしかキープしてないし」
「性病になればいいのに」
「ひど」
嫌悪を隠さないこいつの態度は好きだ。まあ別に誰に何を言われても気にするたちではないけど。
改めて目的の人物に視線を向ける。
愛斗の想い人、伊折先輩。俺は彼女より年上だから先輩ではないけれど。
正直、ぱっとしない印象。
特筆して目立つところがなく、平均並み。背中ぐらいまで伸びる暗茶色に染めた髪も、多少肉付きがいいスタイルもまあ、普通。
目は大きかったけど、控えめな顔立ちであまり記憶に残るタイプではない。
「じろじろ見んなどっか行け」
想い人を観察していた俺に苛立ったらしい愛斗が低い声を出す。
「いいじゃん見るぐらい。なんか地味な子だなって、どこが好きなん」
「アンタに教える必要性を感じない」
「えー冷たいなあ。今度紹介してよ、俺と愛斗の仲じゃん?」
「変な病気がうつるから嫌」
心外な。病気してないって。
わざとらしく口をとがらせる俺を冷たく一瞥して、視線を伊折ちゃんに向ける。
「俺だけ知ってればいい。誰にも教えない」
俺に言ってるわけじゃなさそうな、独り言のように呟く。
その声があまりにも愛おしそうで驚いた。
「じゃ、もう二度と話しかけないで。バイバイ」
俺が驚いてる間にひらひらと手を振ってその場を立ち去る。
待ち合わせだったであろう伊折ちゃんと合流するべく。
「…愛斗ってああいう感じなんだあ…」
仲良さそうに腕を組んで歩く二人の姿を遠巻きに眺めて、そんな言葉しか出なかった。
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「伊折先輩」
待ち合わせ時間の5分前。背後から声がかかって振り向く。
今日は地雷ファッションていうのかな、とにかく可愛らしい格好のマナがいた。
サラサラのハーフツインもスカートも女の私よりよっぽど似合っているし、足が綺麗すぎてちょっと目のやり場に困るぐらい。
「マナ、今日も可愛いねえ」
「ふふ、ありがとうございます」
褒めると少し恥ずかしそうにするところも可愛い。癒される。
今日はマナの好きな画家の展示会があるらしく、一緒に見に行く予定だ。
私は全然知識はないけど見るのは好きだし、単純に誘ってもらえて嬉しい。
「先輩、今日、腕…組んでもいいですか?」
少し言い出しにくそうに、珍しい提案をされた。
「もちろんいいけど…珍しいね?」
いつもは人前であまり手を繋いだり組んだりはしない。
二人でいるときは距離は近いけれど、それも気を許してもらえてるんだと思うと嬉しかったりする。
返事に困ったように苦笑いし、おずおずと私の腕に腕を絡める。
「ちょっと嫌なことがあって。なんていうか、気持ち悪いものと遭遇して不快だったから先輩で上書きしたいというか」
「え、気持ち悪いもの?大丈夫?」
「大丈夫です。先輩と腕組めればもうチャラです」
話の概要はつかめなかったけど、にっこりと甘く微笑まれればまあいいかと思ってしまう。
「よくわからないけど、災難だったね。もう見かけないといいね」
「そうですね…二度と見かけたくないです」
温厚なマナが珍しくトゲトゲしていて、本当に不快だったんだなあ。
よしよし、と頭を撫でれば機嫌を良くしたように目を細めた。
「行きましょ、先輩。展示会終わったらご飯しましょうね」
「そうしよ。どこがいいかなあ」
「個室がいいなあ、先輩とゆっくりしたいです」
「マナ個室好きだねえ、あとで探そう」
一切の経緯は知らず。可愛い後輩とのお出かけにぴったりな晴天で、私の気分もだいぶ良かった。
後輩の知り合い。名前はまだない。
おそらくちらほらと出るかと。
ただの幕間です。




