異世界で帰還魔法を使ったら異世界に転送されました
「じゃあ、帰還魔法使いますね」
女神はそう言った。
「よし頼む」
俺は軽い気持ちで頷いた。
異世界転移して三日目。
魔王とか勇者とかはまだ出てないが、とりあえずスライムは倒した。あとゴブリンも倒した。もう普通にバイトみたいなノリになってきている。
で、今目の前にいるのは、いかにも神っぽい光る存在。
「では、元の世界へお戻しします」
「やっと帰れるのか……」
正直ちょっと嬉しい。
異世界、飯はまずいしWi-Fiないし、やることが戦闘しかない。
「帰還魔法、起動」
女神が手を振った。
光が溢れる。
体が軽くなる。
あ、これ帰れるやつだ。
――そう思った瞬間。
ブツン。
「……え?」
光が消えた。
何も起きてない。
「戻らないんかい!!!!」
思わず叫んだ。
女神も首をかしげている。
「おかしいですね……帰還先設定、完了しているはずですが……エラーです」
「エラーで片付けるな」
「確認しますね……」
女神は申し訳なさそうに言った。
「たぶん、上が設定ミスしました」
上のせいにするな。
「私はまだ女神研修3日目です」
結構新人だった。
「修正しますね」
「頼む、早くしてくれ」
女神が再度魔法を起動する。
今度はすごい光だ。
空間が歪むレベル。
お、今度こそいける。
そう思った瞬間。
ピロン。
謎の音が鳴った。
『※混雑しています』
「は????」
「なにこのメッセージ」
女神も困惑している。
「転送先の世界が現在満員で……」
「満員って何!?ホテルか!?」
「少々お待ちください」
「異世界に待機列あるの初めて聞いたぞ」
数秒後。
また光。
今度こそ。
本当に今度こそ。
――バチン!!
視界が真っ白になる。
やった。
帰れる。
やっと――
ドサッ。
地面に落ちた。
「……ん?」
土の匂い。草。空。
見覚えあるようで、ない。
「……どこだここ」
立ち上がる。
目の前に看板。
【異世界Bへようこそ】
「来てるぅぅぅぅ!!!!」
結局来てる。
普通に来てる。
帰還じゃないじゃん。
移動じゃん。
後ろを振り返ると、さっきの女神が汗だくで手を振っている。
「すみません!そこ経由でしか帰れませんでした!」
「ハブ空港かよ!!」
女神は叫んだ。
「次の帰還魔法で元の世界行けますので!」
「信用できるか!!」
とりあえず周囲を見る。
異世界Aとちょっと違う。
建物が少し近代的……いや、近代的すぎる。
看板がある。
【冒険者ギルド・サポートセンター(第3支部)】
「支部増えてんのかよ」
その瞬間。
横から声。
「新規転移者ですか?」
振り向くと、スーツ姿の男。
完全に会社員。
「はい、異世界B転移局の者です」
「役所!?異世界なのに役所あるの!?」
男は淡々と説明した。
「こちらの世界では、転移・帰還の流れを一括管理しています」
「管理されてるの初めて知ったわ」
「ちなみにあなた、今“中継点”です」
「中継点?」
「はい。帰還魔法は必ず異世界Bを経由します」
「女神が知らなかったじゃねぇか!!」
男はメモを見ながら続けた。
「ただし、最近アクセス集中で……」
「また混雑かよ!!」
その瞬間。
空に通知が出た。
『※帰還魔法待ち時間:残り48時間』
「長ぇよ!!!!」
結局俺は、異世界Bで2日待つことになった。
しかもここ、特に何もない。
コンビニみたいな店はあるけど、全部異世界仕様で微妙にまずい。
暇すぎる。
勇者もいない。
スライムもいない。
ただの待機所。
「これもう現代の空港だろ……」
そう呟いた時だった。
隣の席のやつが話しかけてきた。
「あなたも帰還待ちですか?」
「まあな」
「僕3週間目です」
「長っ!!!!!」
もう終わりだこの世界。
その時、また通知。
『※帰還魔法アップデートのお知らせ』
「何をアップデートしてんだよ!!」
内容を見る。
・転送速度向上
・異世界Bの滞在快適化
・広告表示機能追加
「最後いらねぇ!!!!」
空にバナーが出た。
【今なら異世界Bプレミアム会員で優先帰還!】
「どこまで課金制なんだよ!!!!」
俺は空を見上げた。
たぶん元の世界に戻るまでに、あと3回くらい異世界を挟む気がする。
その時だった。
また通知が鳴った。
『※帰還ルート更新のお知らせ』
「またかよ!!!!」
俺はもう驚く気力も薄れていた。
空に新しいウィンドウが開く。
『現在の最短帰還ルートを再計算しました』
女神が横から覗き込む。
「おっ、改善されたかもしれませんね!」
「そのセリフもう信用できねぇんだよ」
画面が切り替わる。
そこには――
『異世界B → 異世界C → 元の世界』
「増えてるぅぅぅぅぅ!!!!」
「え、C?」
その瞬間、スーツ男が走ってくる。
「すみません!緊急連絡です!」
「今度は何だよ!!」
男は息を切らしながら言った。
「異世界Cが……最近開通しました」
「開通って何!?道路じゃないんだぞ!?」
「新興異世界でして、現在テスト運用中です」
「テストに人間巻き込むな!!」
女神が焦りながらマニュアルをめくる。
「えーと……異世界Cは……」
「読むの遅い!!」
画面が再び点滅した。
『※強制転送まで残り10秒』
「は!?待て待て待て!!」
「仕様です!!あと私まだ研修中なので責任取れません!」
「さっきまでこんな仕様なかっただろ!」
俺、いつ帰れるんだよ!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
異世界転移ものは数あれど、「帰るだけで異世界を増やされるタイプ」はあまり見ない気がします。
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