第八話 強い酒の前に力尽きる
お酒の話が出てきます。
誤った情報があったらごめんなさい。
ガルドさんの家は、宿屋から二分ほどの場所にあった。
ガルドさんは行商人ではなく、リムベルクで店を経営しているらしく、家を持っているそうだ。
奥さんと子供が二人いるらしい。
結婚しているなんて羨ましい。俺はもうアラサーなのに、浮いた話は未だにない。
「ただいま〜」
「お邪魔します」
ガルドさんの奥さんが、にこやかに迎えてくれた。
ガルドさんが事情を説明すると――
「主人を助けてくださり、ありがとうございます」
と丁寧に頭を下げられる。
こちらとしても、町まで乗せてもらえたのだからお互い様だ。
「ところで兄ちゃん、酒は飲めるかい?」
「……まあ、それなりには」
そう、実は俺は酒に強い。
飲み会では“飲める部下”として、上司に重宝されていた。
ビールは炭酸が強くて少し苦手だが、日本酒はもちろん、ウイスキーやラム、ウォッカのような強い酒でも少量ならば問題ない。
この世界の酒を、早速味わえるのか。
そう思うと、少しだけ胸が高鳴った。
やがて、樽が二つ運ばれてくる。
「こ、これを飲むんですか……?」
「当たり前だろ? 度数は控えめで六十パーセントくらいだ」
「ろ、六十……?」
おいおい!それは“控えめ”じゃないぞ!
日本酒でも強いもので二十パーセント前後。
ウイスキーで四十パーセント。
ウォッカが六十パーセントくらいだ。
つまり――これはほぼウォッカだ。
「なんだ兄ちゃん? 樽が足りないのか? 悪かったな、今持ってくる」
「いえいえ! 結構です! 十分すぎます!」
こんなの、どうやって飲むんだ……?
そう思っていると、ガルドさんは樽に蛇口のようなものを差し込んだ。
ひねると、中からワインのような液体が流れ出てくる。
「これは、何から作られてるんですか?」
「グーレプだな」
おそらく、前の世界でいうブドウのことだろう。
試しに一口飲んでみる。
――瞬間、喉が焼けるかと思った。
強すぎる。
イメージとしては、ブランデーをさらに濃くしたような感じだ。
「ははっ! 兄ちゃん、さてはそんなに強くねえな? 弱い酒もあったのによ」
……無理して強いなんて言うんじゃなかった。
少しだけ付き合いで飲んだあと、疲れを理由に休ませてもらえないかと聞くと、快くベッドに案内してくれた。
本当は風呂に入りたいが、どうやらそういう設備はなさそうだ。
仕方なく、そのまま横になる。
目を閉じて、三十秒後には――
俺は意識を手放していた。




