第三十三話 出発withおじいちゃん
次回から二話ほど閑話を挟もうと思います。
1000字ほどになるとは思います。
棚には、昨日並べた商品が綺麗に整えられている。
もう少しレナの仕事を見たい。
直後。
【提案:集客強化】
大声での呼び込みを――
「却下」
即答した。
絶対ろくなことにならない。
数分後。
最初の客が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
レナが自然に前に出る。
男は何も言わず、棚を見て回る。
ナイフを手に取り、重さを確かめる。
「軽い!」
「扱いやすさを重視しています。長時間でも疲れにくいですよ」
すぐに答えた。
しかも的確だ。
「強度は?」
「こちらの木材で試していただけます」
男は実際に切れ味を確認したあとに、レナに聞いた。
「いくらだ?」
「そちらの値段になります」
値札を見る男。
「安すぎないか?」
レナが少しだけ笑う。
「当店ではこの値段で販売しております。オーダーメイドも可能ですよ。」
その表情を見て、決めた。
任せても良さそうだ。
「じゃあ、そろそろ行くか!」
持ち物はすべてインベントリに入っている。
今、俺は手ぶらなわけだ。
街を出る前にガルドさんからグランマルクまでの地図を渡された。
「でもよお、流石に一人で行くには危ないぜ?」
「地図もあるのになにか他にあるんですか?」
「割とモンスターが多い道だからな。他の冒険者と一緒にいったほうが安全だろ。」
でも、都合よくいるとは限らないし、少しでも早く行きたいからな。
「今日の昼出発の冒険者が一人いるらしいぞ。どうせなら一緒にいけよ。」
今日の昼か。安全には確実になるからな。ここで死んでしまってはいけない。冒険者視点の意見もほしいから今回は急ぐことよりも安全を取ろう。
「その人はどこにいるんですか?」
「普通に酒場じゃねえのか?誰か来るかもしれないから待ってるだろ。」
その言葉を信じて酒場に行く。
「いらっしゃっせー」
真っ昼間というのに活気がある。
この世界の人、昼間からよく飲むな。
冒険者が誰なのかわからないから店員に話しかける。
「あの!グランマルクまで一緒に行ってくれる冒険者がいるって聞いたんですけど。」
「ああ!あのお客さんですか?」
刺された指の先ではおじいちゃんが一人で飲んでいた。
ほんとにあの人か?あの人が何キロも歩くことを想像できないのだが。
ひとまず、話しかけてみるか。
「あの、あなたがグランマルクまで行く冒険者ですか?」
近くで見るとおじいちゃん酔っている。
「うん?なんだい?お前が一緒に行ってくれるのか?」
「い、一応そのつもりなんですけど、」
話しにくい。
というかこのおじいちゃんむしろ足手まといになりそう。わざわざ一緒に行く必要あったのか?
ま、まあ、ここまで来たんだし人助けだと思って一緒に行くか。急がないと行けないんだけどな。
「できれば早めに着きたいので今からでも出発できませんか?」
「ああ、いいとも。一人話し相手が欲しかっただけだからな。」
話し相手って、まずは自分の身の心配をしなさいよ。ガルドさん曰く危険な道なんだから。
いや、ガルドさんがかなり盛っているだけで、おじいちゃんでも通ることができる道なのかも。
なにはともあれ、早めに行くことも許してもらったから出発しよう。
酒場を出たあと、なんとなく人の少ない方へ歩いた。
やはりなんとなく、インベントリを開いた。
時間が止まったままだ。
その中に、ソラがいる。
昨日と同じ姿。
倒れたまま、何も変わっていない。
いるのに、いないみたいな妙な感覚だ。
インベントリを閉じる。
【提案:戦闘準備最適化】
「あー、はいはい。今度は何だよ。」
【現在の装備は最適化されていません】
【再構築により性能向上が可能です】
「今のでもだいぶおかしい性能なんですけど。」
でも、さっき試した感じ、威力に振り回されてるのは事実だ。
違和感をなくすため、インベントリから短剣を取り出した。
見た目は普通。
でも中身はだいぶ別物。
重心のズレ。
刃の微妙な歪み。
素材の偏り。
「あー、ここか」
ちょっとしたズレが気になる。
ほんの少し、手元寄りに調整。
ついでに刃も均一にしておく。
粒子が集まって、また短剣の形になる。
軽く振ってみる。
今度は違和感が少ない。
ちゃんと自分で扱えてる感じがする。
「最初からこうしてくれたらいいのに」
【最適化には実使用データが必要です】
「はいはい」
もう一度振る。
今度はかなりしっくりきた。
【身体同期率:87%】
【更なる最適化が可能です】
【警告:負荷増大】
「それはやめとく」
時々とんでもない提案をしてくるな。
一息ついて、立ち上がる。
「……まあ、こんなもんか」
見送りにはレナ、ミラだけでなく、ガルドさんも来てくれた。お子さんも一緒だ。
「はやく帰ってきてまた酒でも飲もうぜ!」
若干のトラウマがあるので素直には頷けなかったが嬉しかった。
「気をつけてくださいね!」
レナも見送ってくれた。
さてと、もう行くか。
門を出る。みんなは手を振ってくれていた。
「おぬし、いい友を持っとるのお。」
おじいちゃんもそう言ってくれた。
だが、まずはソラだ。ソラを治療してまた戻ってこよう。後ろで門が閉まる音が聞こえた。




