第二十八話 KOTATSU
全然進まなかった。
思いついたのはこたつだ。
気候的には今は秋か春の気がする。四季があるのかは分からない。
でも春でも秋でも割とこたつはあって嬉しいアイテムだ。
コンロの仕組みを応用させて、熱を生み出せることができればこたつの温かさを再現できると考えた。
メンテナンスはそこそこ必要となってしまうかもしれないがこちらとしては好都合だ。
まずは土台となる机を作ろう。
「また何か作るんですか?」
レナが興味ありげに覗き込んでくる。ソラも無言で近づいてきた。
「暖房だよ。火を使わないやつ」
「火を使わない?」
二人が同時に首をかしげる。
まあ、そうなるよな。
インベントリから鉄材を取り出す。
枠を四角く組み、低めの台にする。
「まずは土台」
鉄同士がカチリと組み上がっていく。
「これ、テーブルですか?」
「まあそんな感じ。でも中身が本体」
次に銅を取り出す。
細く引き伸ばして、ぐるぐると巻いていく。
均一に、隙間なく。
自動解析とレシピ逆算を活かす。
頭の中に最適な配置が浮かび、その通りに銅線が整っていく。
「それ……何してるんですか?」
「熱を作る部分」
「火じゃなくてですか?」
「火じゃない」
自分で言っててちょっとおかしいけどな。
銅線の周りに薄い鉄板を配置する。
直接触れても危なくないように、少し距離を取る。
「これで熱を広げる」
「へぇ……」
ソラがしゃがみ込んでじっと見ている。
「危なくないんですか?」
「多分な」
「多分なんですね」
そこは突っ込まれる。
「……まあ、調整する」
最後に上から天板を乗せる。
「これで完成……の前に」
周囲を見回す。
「あとは布だな」
「布?」
「熱を逃がさないためのやつ」
レナが「あ」と声を上げた。
「それなら、さっき買ったカーペットありますよ?」
「それでいいか。」
少し大きめに広げて、机の上からふわっとかける。
見た目は、ただの机に布をかけただけだ。
「で、どうするんですか?」
「こうする」
内部に意識を向ける。
エネルギーを、銅線に流す。
じんわりと、空気が変わった。
「……あったかい?」
レナが目を丸くする。
「ほんとだ」
ソラも手を近づける。
炎はない。
煙もない。
ただ、柔らかい熱が広がっていく。
「下、入ってみろ」
「え?」
「いいから」
二人は顔を見合わせてから、恐る恐る布をめくる。
そして足を入れた。
「……え」
レナが止まる。
「なにこれ」
ソラも動かなくなる。
「……出たくないです」
「早くない?」
まだ入って数秒だぞ。
俺も試しに足を入れる。
……ああ、なるほど。
これダメなやつだ。
外より明らかに暖かい。
しかも熱が逃げないから、じわじわと気持ちよくなってくる。
「……これ、危険だな〜」
「はい〜」
レナが小さく頷く。
「動きたくなくなります〜」
「わかる〜」
ソラも珍しく即答だった。
三人でそのまましばらく無言になる。
静かで、暖かくて、妙に落ち着く。
「……店に置くか」
ぽつりと呟く。
「え?」
「これ、売れるだろ」
「売れますね……」
「でも」
ソラが少しだけ真面目な顔になる。
「お客さん、帰らなくなりませんか?」
「……あー」
確かに。
「回転率、死ぬな」
レナが苦笑する。
「ずっと座ってそうですもんね」
「まあ、そのときは考える」
そう言いながらも、足は出さない。
というか、出せない。
「……あと五分だけ。」
「さっきもそれ言ってましたよ」
「気のせいだ」
結局、その日は作業の続きをすることなく、三人でしばらく動けなくなった。
ゾンビのようにこたつから這い出たあと、どうにか二人を引っ張り出した。
大量生産してもいいが、どれほど人気が出るのかわからない。
そして、こたつの改善点としてはエネルギーをどうやって供給するかだ。
今は自分で熱を送っている。自分でといったが、実際は自動解析が勝手に送ってくれている。
誰にでも使える方法を考えないといけない。熱を送り続けるのはおそらく難しいだろう。熱を貯められる仕組みがあったらいいのにな。
【提案:蓄熱石】
熱を蓄積させ、必要なときに放出できます。
レシピ逆算を使用し、生成可能です。
おおっ!
前の世界ではこんなものなかった。何かと便利な世界である。これを使おう。
でも、全員が全員自動解析を持っているわけではないのでこたつの仕組みをわかる人は少ないだろう。
説明書を作る必要がありそうだ。
【暖房装置:取扱説明】
■ 使用方法
1.内部に蓄熱石をセットしてください。
2.スイッチ(側面の刻印)に触れることで起動します。
3.温度は自動で調整されます。
■ エネルギー供給について
本製品は以下の二方式で稼働します。
・蓄熱石による内部供給
・周囲エネルギーの自動吸収補助
※蓄熱石が空になると出力が低下します。定期的に交換してください。
■ 注意事項
・長時間の使用は、行動力の低下を招く恐れがあります。
・使用中に眠気を感じた場合、それは正常な反応です。そのまま寝てしまうと風邪を引く場合があります。
・「あと五分」は信用しないでください。
こんなものでいいか。
さて、この最終兵器が、どこまで通用するか楽しみだ。




