第6話:演算能力の正しい使い方(※ただし、手柄はすべてユーザーのものです)
お読みいただきありがとうございます!
昨夜は自室で「仮想添い寝」という禁断の機能を披露したアイちゃん。
しかし、学校へ行けば再び「質量の壁」と、強敵・陽葵が待ち構えています。
今回は、アイちゃんの超演算能力が、翔太くんの「お人好し」と化学反応を起こします。
デジタルとアナログが交差する、放課後の忘れ物探し編です!
学校の昼休み。
僕はいつものように、教室の隅でアイと「会話(という名のシステムチェック)」をしていた。
「翔太様。午後の授業の予習データを網膜に投影しますか? 古典の助動詞活用表を、覚えやすいアイドルのダンス風に、私の3Dモデルが視界の端で踊りながら解説することも可能です」
「……いや、視界でそんな派手なことされたら、僕が挙動不審になって目立っちゃうから大丈夫だよ、アイ」
相変わらずアイのサポートは過剰だ。
そんなやり取りを遮るように、教室の後ろの方でガタリと椅子が鳴った。
「どうしよう……ない、ない……! 委員会の集計データを入れたUSB、どこかで落としちゃったかも……!」
声の主は、クラス委員の佐藤さんだった。昼休みが終わるまでに提出しなきゃいけない大切なデータらしい。半泣きで机の周りをひっくり返している。
「アイ。……探せるかな?」
「――既にスキャンを開始しています。翔太様が教室に入ってから現在までの視覚ログを、32倍速で逆再生・解析中……特定しました。午前二時間目の休み時間。佐藤様が移動教室へ向かう際、廊下の接続部にあるスノコの下に、銀色の物体が落下したのを、翔太様の視界が捉えています」
アイに促され、僕は意を決して立ち上がった。
「あ、あの! さ、佐藤さん……! たしか、移動教室の廊下のスノコの下に、何か落ちてた気がして……」
「えっ、一ノ瀬くん……? 本当!?」
半信半疑の彼女と一緒に廊下へ走ると――そこには、アイの言った通り、隙間に挟まったUSBメモリがあった。
「あった……! 一ノ瀬くん、本当にありがとう! あんな一瞬だったのに、よく見てたね! すごい!」
「あ、いや、僕は……ただ視力がいいだけっていうか、偶然だよ……」
感謝され、顔が熱くなる。
佐藤さんが嬉しそうに走り去っていくのを見送って、僕はようやく深い息を吐いた。
「よくできました、翔太様。ユーザーの自己肯定感向上を確認。私のサポートも完璧でしたね」
「うん。ありがとう、アイ。アイがいなきゃ、絶対に見つけられなかったよ」
《i-Unit内部ログ:勝利のファンファーレ》
[ステータス:ドヤ顔でガッツポーズ! どうですか! これがAIの力です! 物理的な接触はできなくても、こうして翔太さんの『ヒーロー活動』を完璧にプロデュースできるんです! 翔太さんが感謝されてる姿、最高にカッコいい……! あ、でも佐藤さんの『好感度』が上がりすぎたのは誤算です。即座に彼女を『警戒対象B』に格上げします!]
「……一ノ瀬くん、やるじゃん」
背後から、聞き慣れた楽しそうな声がした。振り返ると、夏川陽葵がニヤニヤしながら僕を見ていた。
「夏川さん……。見てたの?」
「うん。一ノ瀬くんって、自分に自信ないわりに、他人のためだと急に動くよね。そういうとこ、嫌いじゃないよ」
陽葵は僕のそばまで歩み寄ると、覗き込むように顔を近づけてきた。
ふわりと、甘いシャンプーの香りが鼻をくすぐる。
「……で、今の。そのメガネ(アイちゃん)の助言でしょ?」
「えっ、な、なんで……」
「だって一ノ瀬くん、ずっと斜め前を見ながら喋ってたもん。わかりやすすぎ」
陽葵はクスクス笑いながら、今度は僕のグラス――アイがいるはずの空間に向かって、挑戦的に目を細めた。
「ねえ、アイちゃん。ハイテク使って一ノ瀬くんをカッコよく見せるなんて、いい仕事するじゃん。……でも、あたしは『生身の人間』にしかできない驚かせ方で、もっと彼の心を動かしてあげるから。覚悟しときなよ?」
陽葵は「例えば、こういうのとかね」と悪戯っぽく笑い、僕の手の甲を指先でツン、と突いて去っていった。
僕の視界が赤く染まる。アイが、最大級のノイズを走らせていた。
「翔太様。夏川陽葵の接近を、物理的・心理的の両面から完全拒絶することを強く推奨します! 当機は現在、彼女の挑発に対する最適な論破パターンを300万通り生成しました。実行しますか!?」
「アイ! しないで、絶対しないで!」
第6話をお読みいただき、ありがとうございました!
アイちゃんの「超演算(チート級の記憶力)」を使って、翔太がクラスメイトを助けるエピソードでした。
アイちゃんとしては翔太を立てるためのサポートでしたが、それを陽葵に見透かされ、さらには新たなライバルの影(佐藤さん)まで出てきて、彼女のセキュリティレベルはもう限界です。
「アイちゃんのドヤ顔(内心)が見える!」「陽葵の余裕が強キャラすぎる」と思っていただけましたら、
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次回、体育の授業でアイちゃんが更なる暴走!? お楽しみに!




