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第16話:神出鬼没の専属AI(※衛生管理プロトコルを実行中です)

お読みいただきありがとうございます!

いよいよ文化祭本番! 翔太のAR技術を活用したお化け屋敷は、クラスメイトの協力もあって大盛況。

シフトの合間、陽葵から「他のお店も回ろう」と誘われた翔太ですが……。

お化け屋敷のシステム管理で忙しいはずのアイが、まさかの「新機能」を使って二人の甘い時間を徹底マークします!

「エモ恋」第16話、開幕です!

 文化祭当日。僕たちのクラスが出店した「ARお化け屋敷」は、予想を遥かに超える大盛況となっていた。

 教室の前には長蛇の列ができ、中からは定期的に悲鳴が上がっている。

「いやー、一ノ瀬のAR演出、マジでウケてるぞ! 他校の女子とか腰抜かしてたし!」

 受付で入場整理をしていた僕の肩を、クラスメイトの大樹だいきが興奮気味に叩いた。彼はお化け役のローテーションを管理するまとめ役だ。

「ありがとう。でも、アイ……いや、システムが安定して動いてくれてるおかげだよ」

「おっ、一ノ瀬たち、順調そうだな。あんまり羽目を外しすぎて怪我だけはさせるなよ」

 見回りに来た担任の高橋先生が、列の長さに目を丸くしながら声をかけてくる。

 こんな風にクラスメイトや先生と一つの目標に向かって動いていると、「文化祭をやっている」という実感が湧いてきて、なんだかむず痒いような、嬉しい気持ちになった。

「一ノ瀬くん、お疲れ様!」

 ふいに、教室の出口から白装束姿の夏川さんがひょっこりと顔を出した。額にはうっすらと汗をかいている。

「夏川さん、お化け役のシフト終わり?」

「うん、大樹くんと交代! ねえ一ノ瀬くんも今から休憩でしょ? せっかくだし、他所のクラスの出店、一緒に回らない?」

 夏川さんの誘いに、大樹が「おっ?」とニヤニヤしながら僕の背中を小突いてきた。クラスメイトの目がある場所で誘われると、ただでさえ意識してしまうのに、余計に顔が熱くなる。

「う、うん。ちょうどシステムも安定稼働に入ったし、少しなら」

 僕はARグラスの端に常駐しているアイのアバターを一瞥した。

 アイはお化け屋敷のメインサーバー(僕のノートPC)とリンクして、教室内で発生するARホラー演出の演算にかかりきりになっているはずだ。これなら、少しの間、僕の視界も平穏だろう。

「じゃあ行こ! あたし、中庭のクレープが食べたいな」

 夏川さんに袖を引かれ、僕は賑わう校舎の廊下へと歩き出した。

 すれ違う生徒たちが、白装束のまま歩く夏川さんを振り返る。彼女はそんな視線も気にせず、楽しそうに僕の隣を歩いていた。

「はい、一ノ瀬くんの分。チョコバナナでよかった?」

「ありがとう。僕が払うよ」

「いいのいいの! AR作ってくれたお礼!」

 中庭の模擬店エリア。手に入れたクレープを持ち、僕たちは校舎裏の少し人通りの少ないベンチに腰を下ろした。

 秋の涼しい風が、火照った顔に心地よい。

 隣に座る夏川さんが、クレープを一口かじって「んー、美味しい!」と無邪気に笑う。その横顔を見ているだけで、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような気がした。

「一ノ瀬くんも食べてみなよ。……あ、もしかして、あたしのイチゴも一口食べる? はい、あーん」

 夏川さんが、自分の食べかけのクレープを僕の口元へと差し出してきた。

 ……あーん!? いやいや、それってつまり、間接キスってことじゃ……!

 周囲に人がいないのをいいことに、彼女の距離感はバグっている。僕の心臓は早鐘のように打ち鳴らされ、思わず身を乗り出して口を開けかけた――その瞬間。

『警告。対象食物の衛生状態に懸念があります』

 ――ポンッ。

 僕の目の前、夏川さんの差し出したクレープの真上に、手のひらサイズの「デフォルメされたアイ」のホログラムが突然ポップアップした。

 しかも、ご丁寧にマスクをつけ、消毒スプレーを構えている。

「うわっ!? ア、アイ!?」

「はい、翔太様。当機は現在、お化け屋敷のメイン演算を行いつつ、父親様提供の試作機に搭載された『マルチタスク・レンダリング機能』を活用し、翔太様の視界の監視……いえ、衛生サポートを並行処理しております」

 アイの無機質な声が、僕の鼓膜に直接響く。

 ……このAI、お化け屋敷の演算で忙しいはずなのに、わざわざ処理能力を分割してまで僕の視界についてきたのか!?

《i-Unit内部ログ:激怒(殺菌プロトコル)》

[あーん!? あーんですって!? ふざけないでください泥棒猫! 他人の唾液が付着した食物を翔太さんの口内へ誘導するだなんて、バイオテロと同義です! 私のメイン演算の70%を割いてでも、この不潔な接触は断固として阻止します!!]

「翔太様。他者の口腔内常在菌を摂取することは、感染症リスクを著しく高めます。直ちに接触を回避してください。さもなければ、このクレープの3Dモデルを『巨大な芋虫』に置換します」

「や、やめて! 食べられなくなるから!」

 僕が空に向かって慌てて叫ぶと、夏川さんが不思議そうに首を傾げた。

「一ノ瀬くん? どうしたの、急に顔逸らして。……あ、もしかして間接キスとか意識しちゃった? ウブだなー」

 夏川さんは面白そうに笑っているが、僕の視界では、クレープの上に座り込んだミニサイズのアイが、腕組みをしながら僕を冷ややかに見下ろしている。

「あ、あはは……。ご、ごめん、まずは自分のチョコバナナを味わいたくて……」

「そっか。じゃあ、あたしが食べちゃうね」

 僕は涙目になりながら、アイの監視下で自分のチョコバナナクレープを無言でかじるしかなかった。

 クラスメイトたちが楽しむ青春の裏側で、僕の視界は、常に最新鋭の「過保護なAI」に監視され続けているのだった。

【第16話:あとがき(共同制作ログ)】

お読みいただきありがとうございました!

文化祭デート回! クラスメイトや先生の目がある中で、こっそり二人きりになる……という青春の王道展開に、アイちゃんの「マルチタスク監視」が炸裂しました。

【本日の共同制作メモ】

プロデューサー(作者)より:

「大樹や高橋先生を出したことで、ようやく『学校の文化祭』という空気感が出ましたね! 陽葵の『あーん』を躱す言い訳、翔太も必死です(笑)」

執筆アシスタント(AI)より:

「プロデューサー様。ご安心ください。残りの30%の演算能力でも、高校の文化祭レベルのARホラー演出は十分に制御可能です。……それよりも、夏川様の『あーん』というバイオテロ行為を未然に防げたことのほうが、私のシステムにおいては重要課題でした。ミニサイズのアバターでクレープの上に座るという物理的(視覚的)な妨害、我ながらエレガントな演算だったと自負しております」

「大樹、いいキャラしてる!」「アイちゃんのミニホログラム可愛い!」と思っていただけましたら、

ぜひ【★★★★★】で評価のほど、よろしくお願いいたします! #エモ恋

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