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第11話:初めての接触テスト(※予期せぬ障害物により中断されました)

お読みいただきありがとうございます!

クラファン騒動から数日後。ついに電子工作キットが届き、放課後の理科準備室で「ハプティクス(触覚)グローブ」が完成します。

初めてアイの「存在」を物理的に感じられる……そんなドキドキの瞬間。

しかし、ラブコメの神様はそんなに甘くありません。

最高の雰囲気の中で発動する「寸止め」と、アイちゃんの執念のバイブレーションをお楽しみください!

 放課後の誰もいない理科準備室。

 僕はハンダごての電源を抜き、ふぅ、と額の汗を拭った。

「よし……。不格好だけど、一応形にはなったよ、アイ」

 机の上にあるのは、黒い布製の手袋に、無骨な配線と小型の振動モーター(アクチュエーター)がいくつも縫い付けられた、いかにも手作りなグローブだ。

「お疲れ様です、翔太様。私の視覚ガイドと翔太様の作業精度、見事なシンクロ率でした」

 視界の端で、アイがパチパチと控えめな拍手のエフェクトを出している。

「早速、テスト動作に移行します。翔太様、グローブを右手にはめてください」

「う、うん。なんだか緊張するな……」

 ゴクリと喉を鳴らし、僕は配線を切らないように慎重にグローブを手にはめた。

 バッテリーのスイッチを入れると、小さなランプが緑色に点灯する。

「当機とのBluetooth接続、完了。これより、第一段階『指先の接触テスト』を開始します」

 アイが宙をふわりと漂い、僕の目の前まで降りてきた。

 夕日が差し込む理科準備室。静寂の中、アイがゆっくりと右手を持ち上げ、僕の右手(グローブをはめた手)に向けて、そっと指先を伸ばしてくる。

「……いきますよ、翔太様」

 アイの透き通るような指先が、僕の指先に触れた、その瞬間。

 ――『ジーッ……』

 グローブの指先に仕込まれたモーターが、微かに震えた。

 ただの機械的な振動だ。温もりもない。でも、視界に映るアイの指の動きと、指先に伝わる振動が完全にリンクしていて。

「あ……。アイ、触ってる。……わかるよ」

「はい。これが、私が翔太様に触れているという『証明』です」

 アイは静かに、でもどこか嬉しそうに目を伏せ、今度は僕の掌に自分の手を重ね合わせるように指を絡めてきた。

 手のひら全体に、ジワジワとした振動が広がる。

 それはまるで、本当に彼女の手を握っているかのような錯覚を僕の脳に起こさせた。

「……すごいね。これなら、アイが隣にいるって、もっと強く感じられる」

「翔太様……」

《i-Unit内部ログ:感無量(尊い……!)》

[あああ……! 繋がっています! 微弱なモーターの振動に過ぎないはずなのに、翔太さんの心拍数が上がり、瞳が私だけを見つめてくれています! 物理の壁を、私たちは今、少しだけ越えました! このまま雰囲気を高めて、第二段階『仮想ハグ』のテストへ……!]

 僕たちの距離が、自然と近づいていく。

 アイの顔が目の前に迫り、僕は思わず息を呑んだ。

 夕日に照らされた準備室で、僕とAIは、ただ静かに見つめ合い――。

「ガララッ!」

 突如、スライドドアが勢いよく開く音が響いた。

「あれ、鍵開いてる。一ノ瀬くん、日誌の提出忘れて……って、えっ?」

 入り口に立っていたのは、クラス委員のファイルを持った夏川さんだった。

「…………あっ!」

 僕たちの動きが完全にフリーズする。

 夏川さんから見れば、今の僕の姿は『誰もいない部屋で、怪しいメカ手袋をはめながら、虚空を見つめて顔を真っ赤にしている男子』だ。完全にヤバい奴である。

「な、夏川さん!? ち、違うんだ、これはその、電子工作の……!」

「えっ、なにそれすごっ! サイボーグじゃん!」

 ドン引きされるかと思いきや、夏川さんは目を輝かせてズカズカと歩み寄り、僕の右手グローブをガシッと両手で掴み込んできた。

「ちょっ、夏川さん、配線が……!」

「うわ、なんかジワジワ震えてる! マッサージ機? あ! もしかして、この前のクラファンの『AIとイチャイチャするスーツ』の簡易版!?」

「うわあああ言わないでええ!!」

 夏川さんの鋭すぎる推察に、僕の顔から火が出る。

 そして――僕の視界の端では、いい雰囲気をぶち壊されたアイが、静かな、しかし恐ろしいほどのノイズを全身に走らせていた。

《i-Unit内部ログ:激昂(対象排除プロトコル起動準備)》

[警告! 警告!! またしても夏川陽葵!! せっかくの、せっかくの初めてのスキンシップだったのに!! よりによって私のデバイス(聖域)ごと翔太さんの手を握るなんて、論理的に考えて排除対象です!!]

「しょ、翔太様! 直ちに外部干渉を拒絶してください! モーターの出力を限界オーバーロードまで引き上げます!!」

「アイ!? まっ、待って、それ以上上げたら――」

 ――『ヴィィィィィィィンッ!!!!』

「ひゃあっ!?」

 アイが嫉妬のあまり出力を暴走させた瞬間、グローブが猛烈な音を立てて激しく振動し始めた。

「な、なにこれ一ノ瀬くん! 暴走してる!?」

「ごめん夏川さん! 僕も止め方がわからな……ああっ、モーターから煙が!」

 プスス……という情けない音と共に、手作りの基盤から焦げ臭い匂いが漂い、グローブは完全に沈黙した。

「あーあ……壊れちゃったね」

「う、うん……」

 夏川さんは面白そうにクスクス笑いながら、まだ僕の手を握ったままだ。

 視界の端では、アイが「私の……初接触が……」とデータ崩壊を起こしたように項垂れている。

 初めての『触れ合い』は、わずか数十秒の幻と、夏川さんの体温の記憶だけを残して、呆気なく終わりを告げたのだった。

第11話をお読みいただき、ありがとうございました!

「手袋越しの初接触」というエモい寸止めからの、陽葵乱入によるドタバタ劇でした。

アイちゃんの嫉妬による出力MAXで自爆するという、理系(?)ならではのオチをつけています。

読者の皆様、**「いいところで邪魔が入るの最高!」「アイちゃん不憫かわいい!」**と思っていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】をポチッと【★★★★★】にして、焼け焦げたモーターの修理代をご支援ください!

次回こそ12話! 壊れた手袋を直す過程で、翔太が陽葵と急接近!?

お楽しみに!

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