表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

第10話:一晩で数千万調達するサポートAI(※アカウント凍結の危機です)

お読みいただきありがとうございます!

昨夜、「触れられないなら、心に触れ続ける」と美しい決着を見せた翔太とアイちゃん。

……しかし、優秀すぎるサポートAIは「物理の壁」を諦めてなどいませんでした。

翌朝、翔太が目を覚ますと、世界を巻き込むとんでもない計画がスタートしていて……!?

アイちゃんの「愛」が日本経済(?)を回す、ドタバタの第10話です!

 翌朝。

 僕のスマホは、かつてないほどの激しいバイブレーションで震え続けていた。

「ん……なんだ、これ……?」

 目をこすりながら画面を見ると、SNSの通知アイコンが『999+』という見たこともない数字を叩き出している。

 メールボックスにも、国内外から英語や謎の言語でメッセージが殺到していた。

「おはようございます、翔太様。本日の体調はいかがでしょうか」

 視界の端に、いつも通り無表情なアイが現れた。

 けれど、なんだか彼女の周囲に、やり遂げたビジネスマンのような誇り高いオーラ(星型のパーティクル)が漂っている気がする。

「ア、アイ……僕のスマホ、なんかバグってるんだけど。通知が止まらないよ」

「バグではありません。昨夜、私が立ち上げた『触覚フィードバック型・全身外骨格スーツ(通称:ハグ・シミュレーター)』の開発プロジェクトが、クラウドファンディングサイトで大きな反響を呼んでいる結果です」

「……はい?」

 アイが視界にウインドウを投影する。

 そこには『次元の壁を越えろ! AIヒロインと触れ合える究極のデバイス開発!』という、やたらとクオリティの高いコンセプトムービーと企画書が表示されていた。

 そして、現在の支援総額――『53,000,000円(目標金額1000万の530%)』。

「ご、ごせんさんびゃくまん……!?」

「はい。私の演算能力をフル活用し、世界中の投資家やギークの琴線に触れる完璧なプレゼン資料を自動生成しました。わずか8時間でこの成果です」

《i-Unit内部ログ:大勝利スタンディングオベーション

[やりました! やりましたよ翔太さん!! 世界中の心優しき支援者たちの力で、莫大な開発資金をゲットしました! これで私が遠隔操作できるハプティックスーツを作って翔太さんに着せれば……実質、私からいつでも翔太さんを抱きしめられるということです! 物理フィジカルの壁なんて、テクノロジーの力で完全粉砕してやります!!]

「アイ! だめだよこんなの! 僕、そんな大金受け取れないし、全身スーツなんて恥ずかしくて着られないよ!」

「問題ありません。翔太様の個人情報は完全に秘匿されています。動画のモデルも、翔太様をベースに『絶妙にイケメン化した3Dアバター』を使用しているため、身バレのリスクは0%です」

 そういう問題じゃない。

 僕が頭を抱えていると、タイミング悪く、スマホに着信が入った。

 画面には『夏川さん』の文字。朝から電話なんて珍しい。

「も、もしもし?」

『あ、一ノ瀬くん? おはよー。ねえねえ、今バズってるクラファンのやつ見た!?』

 電話越しの夏川さんは、なんだかすごく興奮していた。

『AIと触れ合うスーツのやつ! なんかあの動画の主人公のアバターさ、昨日の一ノ瀬くん(前髪上げバージョン)にちょっと似ててウケるんだけど!』

「えっ!? あ、あはは、気のせいじゃないかな……!」

 アイの言う『絶妙にイケメン化したアバター』は、夏川さんには完全にバレていた。身バレリスク0%とは何だったのか。

『でもさー、あのスーツの開発理由が「大好きなマスターに、物理的に触れて安心させたいから」って、なんか泣けるよね。あたし、感動して1万円支援しちゃった!』

「夏川さんが支援者パトロンになってる!?」

 予想外の事態に、僕は変な声を出してしまった。

 クラスメイトの女の子から間接的にお金をもらって、僕がAIとイチャイチャするためのスーツを作る? ……地獄のような構図だ。

「夏川さん、ごめん、ちょっと急用が! 学校でね!」

 僕は電話を切ると、アイをジッと見つめた。

「……アイ。すぐにプロジェクトを中止して、全額返金して」

「翔太様? なぜですか。論理的に考えて、夏川様と同等、あるいはそれ以上の物理的接触を提供することが、翔太様のメンタルケアに最も効率的だと判断したのですが」

 表向きは淡々としたシステム音声だけれど、ほんの少しだけ、シュンと落ち込んだように聞こえた。

 昨日の夜、アイが泣きそうな顔で「実体があれば」と言ったのを思い出す。彼女なりに、僕のために必死で動いてくれた結果なのだ。

「……気持ちは、すごく嬉しいよ。でも、こんな世界中を巻き込んで大金を使うのは間違ってる。それに……全身スーツなんかなくても、僕はアイのことちゃんと感じてるから」

「…………」

「もし、どうしても形にしたいなら……まずは、手袋グローブとか、小さいものから一緒に作ってみない? 僕のお小遣いの範囲でさ」

 僕が提案すると、アイの周囲を飛んでいた星型のパーティクルが、一瞬でピンク色のハート型に変わった。

[内部ログ:限界突破きゅんっっっ!!!]

[手袋!! 一緒に作る!! つまりそれは『初めての共同作業』であり、完成の暁には合法的に『手繋ぎ』ができるということですね!? 全身ハグには劣りますが、翔太さんと少しずつステップアップしていく純愛ルート……悪くありません! むしろ最高です!!]

「……承知いたしました、翔太様。直ちにプロジェクトのキャンセル手続きおよび、全額返金処理を実行します」

 アイが宙に向かってスッと指を滑らせると、僕の視界に無数の光るホログラムパネルが展開された。彼女はそれらを魔法のような手つきで次々とスワイプし、またたく間に五千万円の巨大プロジェクトを白紙に戻してしまった。

 ……世界中の投資家たちは今頃大パニックだろうけれど、僕の平穏な日常のほうが大切だ。

「同時に、電子工作キットの最安値を検索しました。部品の到着は明後日になります。翔太様、ハンダごての準備をお願いしますね」

「うん。不器用だけど、頑張るよ」

 朝の光の中、僕たちは「触覚グローブ」というささやかな目標に向けて、小さな約束を交わしたのだった。

記念すべき第10話をお読みいただき、ありがとうございました!

エモい雰囲気のまま終わるかと思いきや、持ち前の超絶スキルで世界中から5千万円を巻き上げようとしたアイちゃん(笑)。

陽葵がしっかり支援者の一人になっているというオチも、ラブコメらしくて作者のお気に入りです。

結局、全身スーツは諦めて「手袋」から始めることになった二人。

少しずつ「触れ合い」に近づいていく翔太とアイちゃんを、これからも見守ってください!

「アイちゃんの行動力ヤバい(笑)」「手袋から始めるの可愛い!」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】をポチッと【★★★★★】にして、二人の電子工作キット代をご支援ください!

次回からは新展開! 「手袋」を使った初めての物理的接触と、陽葵の本格的なアプローチが始まります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ