14(ク)
気まずい一夜が過ぎ、ラテスの腹が縮んだ。
朝日が出てくる頃、腹がすっかり戻の状態になっていた。
そして昨日俺が神に投げつけた疑問、俺のホモか否かの問題。
かなりデリケートだけど、答えは微妙そのものだった。
俺の記憶、思考自体は、神は信者として読めるけど、深層にある愛慕や欲情は、
読んではいけない模様。
干渉すれば廃人になりかねないので駄目だそうだ。
『でも恐らく恋とか、そういうものではないのじゃ。
それが恋と呼べるなら、病んだ人が世に溢れておるよ』
好きではあるが、恋ではないということ。
つまりホモではなかった。
『記憶を見た限り、依存としか思えんが、
"好き"と言えるじゃろ』
最終的にそう結論付けられる。
依存というものに、俺はよくわからない。
ぼっちのまま死んだ俺に、そんな人間関係が今までに、一度もないから。
『何故そこまで気になるの?
同性に恋するの嫌じゃのかい?』
さてな、教育でそうなったか、親のせいでそうなったか。
『苦労しとるな、じゃが、
君のようなダメダメ男は、あの世界ではいっぱいおるのじゃろう?
ならば同性と恋しても別に良いじゃろ。
女は強者にしか恋しないしのう、最初から希望などないなら、潔く男を好きになっても、
別にいいじゃないか?』
そういうものか?
『だって女を追っても、結局君みたいに孤独死じゃろう?』
ぐはーー!わかった、わかったから、追い打ちはやめてくれ
駄弁りながら部屋の外へ出て、水を汲んできて、飲む。
胃に達する水に、俺は何も考えずに魔力を加えた。
早く吸収できないかなってくらいの気持ち。
魔力を加えた瞬間。
水は胃袋を経由して、急に血管に入った。
ん?なんだ今の。
もう一口を口に含む。頬が膨らむまで限界に。
魔力を加える。スッと水は消えた。
顔の血管に入り、頸へ、心臓へと戻った。
俺は部屋の隅に置いてあった木のバケツを引き寄せた。
昨日井戸から汲んだ水がまだ半分ほど残っている。
ごくり。
『どうしたのじゃ?』
ちょっとな。実験?みたいなもの?
『実験?なにそれ?』
神の疑問をそのままにして、
まず、手近にあった小さな陶器のカップを手に取り、それをバケツの中にそっと沈めた。
カップが水に浮かびそうになるのを押さえながら、縁まで水を満たす。
指先が冷たい水に触れる。
俺はカップを両手で包むように持ち、魔力をゆっくりと流し込んだ。
最初は慎重に、少し流すだけ。
すると——水面がわずかに震えた。
カップの縁に近い部分だけが、消えた。
消えたわけじゃない。
俺の皮膚を通して、直接体内に取り込まれている。
へえ?
魔力の量を少し強めた。指先がちょっと痛む。
すると反応が一気に加速した。水面が目に見えて下がり始める。
カップの中の水が、指先に触れている部分を中心に、静かに消えていく。
指先から腕へ、腕から肩へ、そして胸の奥へと、冷たくて澄んだ感覚が伝わってくる。
血管を直接満たしていく、まるで体内に新しい川が流れ始めたような感覚だ。
心臓が一度強く跳ねて、水を全身に送り出す。
カップの中の水は、十数秒で完全に消えた。
ヤバイヤバイヤバイ...!
神...神!これ、神にもできるの?
『な、な、なんじゃそりゃ!!!
ば、化け物じゃ!!!化け物がおるじゃ!!!
勇者様、助けてくれ!!!』
これはひどい。
もう一杯汲む。
魔力を流す。今度は指を手に触れない。
カップにも触れない。カップの少し上で手のひらで待つ。
すると、カップの中の水が一瞬で泡立つこともなく、音を立てることもなく。
俺の手のひらを中心に渦を巻き、急速に減っていく。
まるで巨大な吸引口が開いたかのように、水が俺の皮膚に吸い込まれていく。
だが今回の吸収にかかる時間は長くなった。
二十秒、三十秒——カップの中の水が半分を切ったあたりで、俺は少し息を荒くした。
体内に取り込まれる水の量が多すぎて、ちょっと気持ち悪い。
俺は自分の手を見下ろした。
濡れていない。指の間も手のひらも、水の痕跡がない。
皮膚が少し冷たいだけだ。
ああ、なるほど?
『そ、それ、それはなんじゃ?
何で水が消えたのじゃ?』
恐る恐る神はそう聞くが、俺も当然わからない。
俺は考えながら、もう一杯水を組んだ。
もう一回魔力を注入するイメージ。
今度は吸収じゃない。
操作をイメージする。でも何も反応がない。
吸収をイメージすれば、少し水が減った。つまり魔力は込めてる。
ではこうしよう。
指をカップの中に入る。
魔力を込める。指をカップの中から離す。
『何をしてるのじゃ?』
ーーーこうする。
宙をなぞるように指を少し動く。
すると、水が球体となり、自らが宙に浮いた。
首と同じ高さになるまで浮くと。
俺の体は震えた。
すっっげえええ!
すっごいでしょ
浮いたよ!
『そ、うじゃな...』
遊びがしまいにしようと思ったが。
もう一つの実験を終えれば戻そうと考えた。
ーーーーーーー
普通にできちゃった。
『わしの能力って、こんなにも怖いものなのか?』
そうみたい。
でもこれならわざわざ血を使わなくても良くない?
『そ、そうじゃな。
魔力を込めたら、恐らく血と同じ扱いになる。
しかし魔力は減るから、目まいもフラつきもするぞ?』
それはそれ。
けど血を使わないだけで精神的にいいんだ。
霧化。
細胞に入るため、血を分解する。
俺はこのプロセスを水に応用した。
すると水が霧状と化した。
それを操作して、体の周辺に固定する。
固定には成功したが、2秒しか持たなかった。
が、これは失敗を意味するではない。
時間は慣れれば長くできるし、霧化さえできれば十分にやばい。
血と同等な扱いの水を霧化、
そして俺は血を使って体を操れる。
即ち無敵ーーーとは言えないが、
少なくとも魔物が来ても勝てる。
ラテスを守れる。
でも実戦に使ってないから不安だ。
今度小動物を見つけたら実験体にするか。
『ペットか?』
そうとも言う。
さて、めでたくチート能力が獲得できたわけだが、朝起きて、目を擦るラテスは一言
「クライス、腹が減った、ご飯もうない?」
なのでご飯を買いにいく。
ルンルン気分でスキップしながら村へいく。
酒場の扉を開いて、餓鬼三人がその中にいた。
なぜいるのか、特に尋ねる気はないので、パパっと青い髪の娘に話しかける。
呼び方が悩んでると、笑顔で俺に答えた。
「チュビといいます。また昨日の食事ですか?
見掛けによらず大食いな方ですね」
腹が減ったからつい全部食べちゃった、はは
チュビは昨日と同じ量の食べ物を俺に持たせ、笑顔で手を振った。
「また明日ね」
愛想のいい娘。前世なら惚れてたのだろう、悲しいかな、女体化する身なんだ。
少し溜め息をついて、酒場を出ると、またしても餓鬼三人が現れる。
「おい!魔女、お前は魔女だろう!
昨日どこに消えたんだ!」
赤髪の男の子が俺に向かって指差す。
他二人は阻止しようか迷ってる顔。
多く見積もっても7歳ってところだ。
そんな子たちに虐められそうになってる。
さてはジャイアン気質だな?
俺は無言でリーダーの赤髪に睨みつける。
しばらく膠着し、赤髪の女が走ってきた。
「コラァ!人に迷惑をかけちゃ駄目って言ったでしょう!」
その姿を見た男の子は「やべ!」って言って、二人を連れて逃げた。
「すみません、最近、うちの子が冒険者ごっこにハマちゃってて」
赤髪の子供の母。
何がとは言わないが、凄く、大きいです。
大丈夫です、じゃあ俺はこれで帰るので。
目線を伏せて急いで山へ帰る。
案の定、またもや餓鬼たちにつけられた。
『【ステルス】』
姿を隠すと、餓鬼たちは草むらから出てくる。
「ちっ、また逃げやがった!」
「でも魔法なら呪文を唱えるはずだよね?
どう言う魔法なんだろう」
「か、帰りましょうよ、なんか怖いよ...」
三人は俺が消えたところを暫く調べて、その後村へと姿が消した。
ちょうど三人が消えて、俺が小屋へ戻る途中、運良くリスが見えた。
水筒に魔力を込めて、霧状にさせる。
霧でリスの体を囲い。体内に入ると、リスを操り、俺に手に乗せた。
出来た!
『おめでとう?
なんか怖いのじゃが...』
何がだ?
リスと言っても、この子は魔物でしょう?
えっと、この子は確か...思い出した。
確か毒入り果実を食べて、気絶して、起きるとまた毒入り果実を食べる魔物だ。
コアラと生態がマッチしてるから記憶に残ってる。
朝では実験できないので、夜まで自由にさせるか。体にずっと残れるから、マークにもなれるし。
サキュバスのこの力って、もしかして最強かもな




