表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

11(ク)



ラテスの体がある程度回復するにつれ、

その日の中に山を下って村を探すことを提案した。


ラテスは痩せちゃってる


骨の形をくっきり分かる程度に病的に痩せてる。

それで出血の上に軽く溺死だ。

今生きてるほうがよっぽど奇跡と言える

...だから栄養が必要だ。肉がいる、野菜も、健康なものが必要。



イグネットお嬢様のところへ帰りましょう!



「...いや、帰らない。

怖いんだ。


クライス、一緒にここで暮らしませんか?

街に行きたくない、クライスの気持ち、

僕は、奴隷に落ちて、ようやくにわかったよ。

何もできない。金があっても、それを守る力も、維持する力もない。


それなのに、あんな混雑な、危険な場所にいるなんて、

僕は怖い。とても心細いんだ」


ラテスは、この世界に転生したばかりの俺と同じく、

精神を病んでしまったようだ。

それもかなり重症。


すぐに癒えるものではない。


困った 。

ラテスの言う通りに街へ行かないなら、たぶん二人まとめて餓死することになる


どうすれば......おっとと、駄目だ

考え過ぎると血が足りなくなって心配されちゃう


仕方ない。


ラテス、

ここで待って、俺は、食べ物を...探してくるから


俺はラテスにそう告げて、彼を抱きしめた。


ーーーいい子にして、待ってね


まるで親が子を宥めるが如く。


「わかった」


病んだラテスはびっくりしたか、

幼い口調で返事をした。




小屋を出て、斜面に沿って山を下りながら溜め息をつく。


ウソをついた。

いい気分ではないが、必要なことだ。


にしてもこの病みっぷり、俺のときよりよっぽどひどいわ

俺なんて惰性なまま引きこもっただけだ


『でも、気持ちは分かるよ。

わしにはよーくわかるよ。

勇者様を取られたときのわしもそうじゃった

三年くらい病んでからの。

短い時でも、君と離れることがそれほどに傷ついたのじゃろう』


俺のせいもあるだろうけど、一番の原因は奴隷になったからじゃないかな...


はぁ...頭が痛くなる。

黙ってくれないかな、血が足りないんだ

食料、どうするかな、

せめて地図とかそういう魔法があれば、村を探すに苦労しないのにーー


『おるぞ?

わしは天才神サキュバスじゃから、人間の魔法は一通り覚えておるのじゃ』


あるなら早く教えろ、無駄口叩くな


『そんなに素っ気なくてもいいじゃろうに...

はいよ、君の頭の中に"あっぷでーと"したぞ?』


いたっ!


もにょっとなにかが脳に潜りこんできた。

一秒経つにつれて痛みが和らぎ、

はっきりとそれが何かを理解出来た。



でも魔法か、これ、どう使えってんだ?



『あの時と一緒じゃ。

脳に侵入する感覚と真逆なやつ、出すのじゃ』


出すって、魔力は少ないからなるべく使いたくはない....一秒だけ開いて閉じるとかできないかな


『マップ』


開いて、

ーーー 一瞬でも結構持っていかれた。

目がちかちかする。

気絶する前に神が閉じてくれた。


使い物にならないぞ?


『魔力量が馬鹿低いのじゃ。

それと、わしが覚えた。

この先五百メートルに人間の村があるのじゃ

案外小さいのう、この山』


え?神様ってそういうこともできるか。

ナビゲートかAI、

どっちがいいと思う?

あだ名、欲しくない?


『なんじゃそりゃ、

言っておくが、わしはただ手助けするお人好しなんじゃないぞ。

君はわしの目であり、鼻でもある、

男の匂いが嗅ぎたい、顔がもっとみたい。

そのついでに君を助けるだけじゃ、

わしは都合のいい道具じゃないぞ!』


地雷を踏んだっぽい。


けど五百メートルか、めちゃくちゃ近いな。

ふらふらと山を下って、麓に人の影。


おっさんが一人、農家みたい。

豚もいる。これは恐らく食料供給村だな、ラッキー!

茶色い豚は俺に向かって、ブヒ!と鳴く。

俺の村でも飼った人はみたことある、剛毛がすごいから触っても気持ちよくないが。


「おや、可愛らしい坊やじゃのう」


農家のおっさんが目を薄め、笑った。

一目で俺を男とわかったのか


この辺りに道を迷ってものです

腹が減ったので、食い物とか、売ったりしないか?


「ほっほっほ、小さな旅人じゃな。

ならば彼処の酒場に行けばよい、あそこは旅人に食い物を売っておる」


酒場に歩いて、あっちこっちに村の子供が陰で俺を覗いてる。


『うまそうじゃ』


おい、今なんつった?


『サキュバスがオスのことをうまそうって言っちゃわるいかのう?』


もういいよ



酒場に入って、店主は女の人だった。

青い髪をした美人。


すみません、食べ物を買いたいけど


と聞いたら、親切な笑顔で

ソーセージと野菜とパンとかを出した。

あ、お金...


「どうしました?」


ふと神の寝床の崩れかかった柱の隣りで見つかった銀貨を思い出した。


これで支払うことはできますか?


「お、ぎ、銀貨ですか!?

えっと、お釣りはたりませんから、銅貨でお願いします」


俺の全資産がこれだけです。

しばらくこのあたりで泊まるから、これは預かります。

白パンに換算すれば、何日になるのですか?


「一人分で白パンだけなら...一年?」


コインを握る手が震えた。


肉とか野菜とか込みなら?



「半年かな」


前払いでお願いします、まずは野菜とソーセージとパンを一袋


「...承知しました」



さて、ご飯を手に入れて、ルンルン気分で帰るつもりなのだがーーー


『つけられてますぞ?』


薄々足音が聞こえたが、

怖くて振り向けない。


やっばい、やばいやばいやばい


ど、どうしよう!?


『落ち着け、わしに任せな


ーーー【ステルス】!』


神ごとクルルは俺の頭の中でそう叫ぶ。

魔力は減っていない。

目まいもしない。


な、なにを?


(じゅ)じゃ。

悪魔にしか使えない、大気の魔法をそのまま使える魔法。

これは姿·音·気配すべてを隠し通す【呪法】

【ステルス】は勇者様が名付けたのじゃ、カッコいいじゃろう』


自慢げに紹介する神。


そして後ろから音が聞こえた


「あのお姉さん、どこに消えた?」


あれ?


ゆっくり振り向くと、子供が三人現れた。


「魔女だよ、きっと!」

短パンを着てる女の子が言う。


「ぼ、僕は駄目って言ったのです、祟りがきます!」

おどおどした男の子は泣きそうな顔でーーー

あ、泣いた。


「ちぇ、せっかく面白そうな奴が村にきたのに」

元凶っぽい背の高い(弟の三分の二くらい)は石を蹴って背を向けた。


「帰るぞ」

その一声に二人も頷いて大人しく帰ってくれた。



おい!と俺は声を上げるが、

子供三人は振り向くことはなかった。


この呪法ってやつ、もしかして、暗殺とかに使うなら無敵では?


『君は恐ろしいことを考えるじゃな』


何故かどん引きされた。



食べ物を小屋に戻ると、ラテスはベッドの上で身を縮めてる。


ラテス?


名前を呼んだら、微かに視線がこっちに、食べ物を積んでる袋に向いた。


グゥーーーと、ラテスの腹が鳴った。


「クライス、ご飯見つけたの?」


俺は袋の中からパンを取り出す。


ほら、パンだ。


それをラテスに渡すと、ラテスはそれを半分ほど齧って、そして俺に渡す。


「久しぶりにこんないいパンを食えた、ありがとうクライス。これでいい」


まだあるから、それ全部食って?


ラテスはパンに向かって、しばらく眺めた。


「全部?」



ラテスの食べ物だから、早く食って、体を治してくれ


「うん」

ラテスは残りのパンを全部口に入れて、丸ごと飲み込んだ。でもお腹はまだ鳴ってる。


続いて2個目のパンをラテスに渡ーーした瞬間なくなった。もぐもぐとラテスは袋を見つめてる。肉食獣の目だ。


これは...


三コ目、やはり秒でなくなった。

十コ買って、もし余ったら明日の分にするって考えたが、正解だったかも。


10コのパンも、20コのソーセージも、5コのりんごも、買ったもの、全部ラテスに食べられた。


膨らんだお腹でベッドの上に横たわり、満足げにげっぷをするラテス。

俺は一口も食べられなかった。


そんな食べっぷりを見ただけで食欲なくなったが...


『体力はまだ大丈夫じゃ、それより魔力じゃが...地図を生成に大半を使った、補充しないと明日の朝で死ぬのじゃ』


と言っても、精液はちょっと...


『ならば唾液、涙、汗、尿、何でもええから、体液を集めて飲め、それでも効率は低いが、回復するのじゃ』


まるで最悪の限りなもの提供してくる神。



死ぬって...

精液をねだるの恥ずかしいから死んだのもなんか、カッコ悪

いやどっちもカッコ悪いわ


魔力、適当に使うべきじゃなかった

せめてもう少し時間と覚悟がいれば...


俺はラテスの顔を覗き、深く溜め息をした

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ