1(クライス)
俺はクライス。
一応転生者のクライスだ。
今はしがない農民の子で、
特になんの才もなければ、親から期待された体力も並み。
どうやらチート転生ではないらしい。
7歳のときに、弟が産まれた、三ヶ月で1メートル級の怪物だ。
親に『土地はこの子が継ぐ、君は自由でいいよ』って言われた。
それくらい、俺は能無しってことでしょう。まあ、その代わり自由を手に入れたが。
平和な村、地味な生活、でものんびりしてて、前世よりかは落ち着いてる。
開拓村でも、食料を供給する村でも、どっちでもない。
何とかして農作物を作って、それを街に運んで、売って暮らす、細々村である。
身も蓋もなく言っちゃえば、希望はない。
なので若い人は早めにこの村から出て、街へいく。
俺はどうしたらいいか分からない。
将来とか考えても頭が痛くなるだけだ。
同い年に、ラテスという名の友達がいて、
いつものように、村の外れの丘の樹の下で駄弁りながら、
そんな話しを彼に言ったら、
「え?将来?何でそんなの考える必要があるの?」
って言われて、深く彼の将来が心配だ。
子供のときからそういうことを考えなくちゃ、無計画のまま、残酷な社会に飲み込まれるぞ!
って俺は深刻な顔で告げた
「んじゃあ、クライスはケイカク?とか、持ってんの?」
当たり前のように俺は頭を横に振った。
考え中である、だから参謀である君を呼んだ
「あのなぁ、僕はただの子供だ、君のように前世は持ってないし、
頭も普通だ、期待してるの悪いけど、そんな大層なこと、
産まれて考えたこともないぞ?」
因みに前世のことは、ラテスにだけ話してる、友達もコイツしかないしな。
この村、他の同世代はみな彼女を作って遊んでる。
みんな十歳だってのに、実にませてる。
「十二で家庭を持つんだぜ?そりゃ早めに嫁を口説くよ、
てか何でクライスはぼっちなんだ?」
俺の一歳の許嫁は弟の許嫁になったんだ。
だからてめえと話して暇を潰すんだろう。
「まあ、そう怒るなよ、
じゃあ何か?僕が君の彼女の代わりか?」
気持ち悪いこと言うな!
いつものように怒る振り。
ラテスは女に興味ない。ホモに近いものだ。
彼女が欲しくないのか?って聞いたとき、
「え?そんなものはいいよ、それよりもっと前世のこと教えてくれよ」
って言うし、ホモじゃないの証拠は、目が性欲に眩んでないから。
前世は何人かホモの知り合いがあるが、ラテスじゃアイツらのように性欲で俺を見てない、
なのでただのぼっちである。
あと、異常に俺の前世に興味がある。
それより将来のことだ、
じゃあラテスは何になるの?
「農民じゃない?」
、、、まあそうだよね、希望のない話だ、俺は農民にすらなれないポンコツ
「そんなに将来のことが悩むなら街へいけばいいじゃん」
それもいいけど、気力が湧かないというか、
なんだろうね、前世では街の中にずっと淀んだ空気を吸って、
最後は肺がん(タバコ吸わない派である)だったから、
なるべく人が集まる所に寄りたくないなって
「なるほど、病気が怖いからいかないのか」
まあそんな所
駄弁って、昼寝して、夕日が落ちてくる。
深いオレンジ色がラテスの顔を染まる。
「そんじゃ帰るか、もうすぐで暗くなるし。
今日もうちで泊まる、晩御飯は適当でいいよ?」
弟が俺の顔を見ると泣くんだ、一晩泣くんだ
泣くたび父母の好感度が下がる音がするんだ
俺はまだ十歳、捨て子にはなりとうない!
友達の所で泊まる他ないよ、俺には、、、!
「別にうちは両親いないから、好きなだけ泊めて」
ラテスの両親は、四歳のときにマモノに食われた。この村での土地はラテスのおばあさんのもの、もし農民をやるなら、
そのおばあさんのものに引き継げばいい。
そんなにやる気があるには見えないけど。
けれど、ラテスは街にも資産がそこそこあるらしい、ブルジョアである。
金持ちだから、彼女が欲しくないってなら、まあ理解はできる
「別にそんなじゃないよ、まあ似たようなものか」
泊めれる場所は君のところしかないんだ、ありがとう、ありがとうよ!
俺が女ならきっと君に惚れるよ。
「本当?じゃあ毎日ご飯作ってくれ」
いやもうしてるし、、、
ラテスのご飯は激マズなんで、
お腹壊すレベルなんで、俺が行かないと翌日のラテスからウンコの臭いがしちゃう。
まあ、俺だって前世は一人暮らしだから、料理には多少自信がある
料理以外は、荷物運び、配達、運転、だけだね
まあ、察する通りに、この世界で活かせるスキルは一つもない、
例のよってプログラミングとかで無双するなんてことはできない
だってフリーターだったし、家庭事情で高卒だったしな
頭脳も並み、スキルも並み、体は並み、どうすればいいのか、
悩んで悩んで、今日という今日も、もうすぐ暗くなる。
「じゃあ帰ろっか」
なぜか毎回帰るとき腕を組もうとする。
やっぱりホモなんじゃ、、、いや、
気のせいだ、きっと
ラテスの家でご飯を作ってると、ラテスは机の前で鼻歌してた。
それを聞いてると、一時的だが、凄く満足する。親にもいらない子された俺は、この時だけ、自分の存在意味を感じる。
あれだ、何かお父さんって気がしない?
たぶん。
まあ前は童貞だし、
彼女もいたことなかったし、
こうして父親の気持ちを味わえるのは、
悪くはない。
小さいけれど、幸せとも呼べるそんな日常にも、いつしか終わりがあった。
俺は知っている。
転生者として、いつか終わるのが、
セオリーなのだからーーー
なのだからーーー
なのーーー
あれ?なんもなくない?
2年も過ぎて何事もなかった。
ラテスとべったりのせいで、女の子たちに避けられた。
マジで何もなかった、悲しいほどに。
因みに俺の弟、5歳!180センチ以上!
俺より頭一つ高い、だが弟!
親は弟を見る目は仮に息子としたら、
俺を見る目はまさに無!
「クライス?
ラテスくんの家にいってきなよ、
家に息子のためのベッドが一つしかないから、
君はあの子と仲良しでしょう?
あの子の家で泊ってもらえな?」
って言われた。泣きそう。
そんなこんなで、家に居づらい俺は、
ほぼラテスと同居状態で二年が過ぎた。
俺が12歳の秋、いつもの夕暮れ時に、
ラテスはさらっと言った。
「僕は王都に行って、勉強したい」
晩飯何をしようかって考える俺は、
しばらくして、
シチューがいい?って尋ねた
「僕は、王都の学校で勉強したい」
ラテスは、二度目を言った。
じゃあそれにするよ!って俺は言った
「王都にーーーー」
俺はナイフでまな板を切った。
手が痺れる。
振り向くと、ラテスは真顔になってるし。
「、、、クライス?」
そう。
俺が大事にする日常は、こうして崩れさった
と思ったが、別に死んだわけじゃない。
大袈裟すぎたか
でも、え?王都に?
そっか、そうなのか。
暫くは沈黙、そして俺は健気な口調で別れを告げた
じゃあな、ラテス、王都で立派になるんだよっと。
「何を言ってるの?クライスもこないかって聞いてるよ」
え?俺も?、、、なんで?
「居場所ないでしょ、じゃあ王都に行けばいいじゃん」
いや、、、もう言ったはずだけど、人が多いところはちょっと、、、それに、勉強苦手だし、、、
「大丈夫大丈夫、クライスは頭いいから、きっと受けるよ!試験だけでもいいからさ、一緒に行こうぜ?」
俺、頭いい?
「うんうん!すっごくいいぞ!僕が保証する!」
そ、そうかな、、、いや、でも急にこんなこと、、、あ、そうだった、俺金ねえわ、ごめんいけないわ
「金なら僕が出す、一緒に来い」
金を、出す?
「そう。僕が、クライスの分の金を出す」
ええっと?金も?
ええ、失礼だけど、何が目的だ?
ラテスはにこっと俺を見つめる
「はあ、、、」
ラテスは深く溜め息をつく。
「一度しか言わないから、
よく聞いて」
ラテスの言葉に、俺は唾を呑んだ。
「クライスのご飯が美味しい」
そんなことだと思った、、、
でも俺よりうまい奴なんて山ほどあるだろうに、、、
「わかってないねぇ、クライスよ
一度にお腹と友情を満たしてくれる人は、
普通いないんだよ?」
つまり、俺は、大事、、、ってこと?
ラテスは大きく首肯して、
席から立ち上がり、俺の後ろに立った。
目と鼻の先に、ラテスがいる。
「試しでいいから、試験、受けようぜ?」
彼は、まるで悪魔のように、ニコニコしてる。
コック兼ペット枠と悟った俺は、
'なんだ、一人で行くのが寂しいのか'を喉の奥に飲み込んで、結局受けることにした
まあ、別にいいけど、どうせ落ちる
聞けば王都の試験、めっちゃムズいらしいし




