第四話 試験に難あり
マヤと勉強をしに来たアーリアはグランダリア国立魔法学校の中にある広大な図書館に目を輝かせた。ちょっと待っててと言ったマヤは小走りでどこかへ行ってしまった。その間、アーリアはそこら辺にあった魔導書をペラペラとながら見をした。中にはびっしり何語かで書かれており、おそらく魔法の説明をしているであろう文章を目の前にして冷や汗が流れた。
マヤが戻ってきて
「それは聖ダリアドール語ね。」
と、口を挟んだ。
聖ダリアドール語はこのグランダリア王国で話されている独自語で、魔法陣に書かれているような文字だ。そしてまたもや、アーリアは息を飲んだ。
広大な図書館から数冊分厚い魔導書を引っ張ってきたマヤはドサッと机に置いた。
「さ、勉強勉強ー!」
張り切るマヤを横目に喪失感に見舞われるアーリア。
「まず、多分アーリアちゃんはまだ何もできないと思うから基礎から教えるよ!」
「は、はい…」
まずは基礎だ。魔法を使うには魔力、宝石が必要だ。宝石は
魔物を倒すことで入手できる基本の資材だ。この宝石があることで魔力を大幅に上げることができる。その上、強い魔物からドロップした宝石ならさらに魔力を上げることが可能だ。
次は魔力。この世界の人間は生まれつき少量持ってるものだが、アーリアはただの人間なので宝石で地道に特訓するしかないのが欠点だ。目標の召喚士になるには平均にしては少量で済むが、アーリアからしたら零から百くらいだ。
アーリアは少し考えたあと、マヤに特訓してもらうことにした。
ダンジョンにきた二人は早速スライムを見つけた。マヤが倒して宝石をアーリアに渡す。
「はい、これでちょっと魔力が上がるはずよ!」
しかしまだ召喚魔法には足りないようだ。そのため、アーリアはマヤとヘレナを連れてダンジョンへ行くことになった。
アーリアたちはグランダリア王国北西にある『デナント遺跡』を目指した。デナント遺跡ではよくレベルの低い魔物が出現するので鍛錬にはちょうど良い場所だ。アーリアはまだ魔法が使えないので物理攻撃で行くことにした。ダメダメだった物理攻撃だが、レベルを一から上げるのにはしょうがないことである。それに、ピンチになればマヤが、怪我をすればヘレナが回復魔法で治してくれる。アーリアは二人を連れて遺跡の真ん中まで進むことにした。
ある程度進んでいると、突然小さなドラゴンが飛び出してきた。純白の羽に天使の輪、水色の体に羊のようなツノを持ったなんとも可愛らしいドラゴンだった。アーリアは申し訳なくてそのドラゴンを倒せずもたもたしているとマヤにきっぱり怒られた。
「そんなんじゃダメだよ!えっとね…かわいい見た目でも凶暴な子がいるからね!魔物ってのはね、どこにでもいるから倒してもまた会えるから!」
マヤの説得にアーリアは渋々頷いてドラゴンに剣を向けた。しかし、物理戦闘が下手なアーリアはとりあえず剣を振り回した。成長中のアーリアをマヤとヘレナは親の如く見守った。
「はああぁぁ!!」
ヘレナは心配で援助を出そうとしたが、頑張って戦うアーリアを応援するためマヤが静かに止めた。
なんとか倒したアーリアは宝石をそっと拾い、ポケットへ入れた。マヤとヘレナはまたもやキャッキャと喜び早速召喚士の勉強を始めることにした。
次回、第五話 図書館の住人