第三話 無能アーリアの任命
教会に戻ったヘレナとアーリアはどっと疲れたように腰を下ろした。
すると突然教会の扉が開き、金髪ツインテールの美少女が飛び込んできた。
「王女様!?どうされたんですか?!」
「王女様?!」
アーリアは驚いて一歩後ずさった。
「大変ですわ!うちのドラゴンたちの魂オーブが何者かに奪われましてよ!あ、あなた、勇者様ですの?!お願いです、魂を取り戻してくれませんか?!」
王女様らしき女の子はアーリアはを揺さぶって必死に説得する。
「わ、私が勇者?!」
王女様に勇者に任命され、断ることができないアーリアは自分がなんの力もないことに戸惑いを受けながらも承諾してしまった。
「ありがとうございますわ!このご恩はいつか返させていただきますわ!では!」
大きく手を振って去って行った王女様を見て、アーリアは少しだけ勇者としての力が沸いた気がした。
ヘレナとアーリアは特訓のためにとある場所へ行った。魔法学校だ。マヤが通う『グランダリア国立魔法学校』では魔法だけでなく、剣術なども磨くことができる。学年は三学年に分かれており、成績が良ければ飛び級もすることができる。魔法科と普通科があり、魔法科は入ることが非常に難しい。攻め守りができ尚且なおかつ、魔法の相当な技術が求められる。普通科では魔法ではなく、剣術や射術を学ぶことができる。その中にも数人、魔法と剣術を合わせた技を使える生徒もちらほらいる。魔法が元から使えなくとも、あとから特訓で身につけることも厳しいが可能だ。
アーリアはマヤと合流し、ヘレナと三人で適性技能を探すことにした。まずは剣士だ。素早い動きとパワーが求められる。アーリアは怖がって動けず、攻撃されてばかりだった。気を取り直して次は銃士だ。遠距離魔法で攻撃が可能であり、これは初心者でも上達可能だ。しかし、アーリアは力がなくまともに射撃できそうになかった。パワー系がダメなら支援系はどうだろうかと占い師に挑戦することにした。占い師は敵の行動を読み取り、仲間に知らせることができる。しかしアーリアは大事な水晶を割ってしまったりゴタゴタだったのでやむを得ず却下された。
アーリアに頭を抱えるヘレナとマヤ。するとマヤがパッと顔を上げ、思いついたようにアーリアに口を開いた。
「アーリアちゃん、生き物は好きかしら!」
「え、ま、まあ…」
「…もしかして…あれですか…?」
ヘレナも勘付いたようにマヤにコソコソと話す。
「ええ、召喚士よ!」
召喚士は魔物を呼び出し、一緒に戦う支援系とも攻撃系とも言えるちょうどいい立ち位置の職業だ。
「召喚士…やってみます。」
アーリアは一度先ほどと同様やってみることにした。すると、まだまだ未熟だがさっきよりはできている気がした。と言っても魔法科なので入学するのに難しい職業だ。
「…やります…!」
アーリアがそう言った瞬間ヘレナとマヤは驚きと期待の顔をした。
「ほんとーー?!」
「やってみますか?!」
そう言って二人はキャッキャと跳ねて喜んだ。アーリアは少し戸惑いながらも二人を見つめて微笑んだ。次は試験だ。試験対策はマヤが徹底して教えてくれるそうだ。
次回、第四話 試験に難あり