第二話 訳あり修道女《シスター》
アーリアが街を歩いていると一人の女性とぶつかった。
「わっ…!申し訳ありません…!」
ふらふらと歩く彼女を見過ごす訳にはいかず、近くのカフェで話を聞くことにした。彼女はヘレナと名乗り、王邸近くの教会で修道女シスターとして働いてるそうだ。ヘレナの話によると、最近この辺りで殺人事件が多発しており、それはもう残酷な状況のようだ。
「信者様からたくさんの祈りの申し立てが来ており、しかも殺人事件が…もう怖くて…」
俯いて涙目で話すヘレナにアーリアはどうにかしてあげたかったが、なんの能力もないただの人間であるアーリアは慰めながら話を聞くことしか出来なかった。
しかし殺人事件は怖いもの。アーリアはヘレナに祈りをしてほしいと頼んだ。ヘレナは快く受け止め、今夜、ヘレナの教会で会うことになった。
その夜、アーリアはヘレナの教会に向かった。その時、静まり返った夜の街に遠くで銃声のようなものが響くのが聞こえた。アーリアは顔を引き攣らせ、急いでヘレナの元へ走った。冷や汗を流しながら教会に駆け込んだアーリアにヘレナは急いで駆けつけた。
「…どうされたんですか?」
「じゅ、銃声が…!外で…!」
慌てた様子でアーリアは説明した。今も鳴り響く銃声、アーリアは震え上がり、ヘレナに抱きついた。
「どどどどーしましょうヘレナさぁん〜!」
涙目で訴えかけるアーリアにヘレナはちょっと考えてから口を開いた。
「…私にお任せを。」
「え…?」
アーリアは涙を拭き、ヘレナに詰め寄る。
「あ、危ないですよ…!そんな…こと…!」
止めるアーリアを振り切り、教会の外へヘレナは出る。
「任せてください。私、強いですから。」
そう凛々しい顔で言うヘレナに後押され、アーリアは頷いた。
外へ出ると街は闇のように暗く、店を探すだけでも精一杯だった。アーリアはなんとなく人の気配を感じながらヘレナに抱きついて進んだ。
すると突然路地裏からナイフが飛んできた。ヘレナはアーリアを庇ってギリギリで避けることができた。
「誰かいるの?!」
ヘレナが声を上げると路地裏から黒髪ウルフヘアのメガネの小柄な可愛い子がニヤリと笑い、こちらへ歩いてきた。
「な、何がしたいんです?!」
ヘレナが必死に訴える。戦う準備は万端かのように十字架を握りしめる。
「あーあ、面白くないなぁ。もっと泣いてくれないとつまんないじゃん。」
犯人が口を開いたと思ったらこんなとんでもないことを言い出した。
「…は?!」
唖然とする二人。
「な、なんなんです…?!も、もしかして暗殺者…?!」
ヘレナが思いついたように怯えた顔で言う。しかし犯人は首を振って話し出した。
「はっ、そんな仕事のためだけに殺す輩と一緒にすんな。俺は快凛、好きでやってんだ。邪魔しないでくれ。」
平然とした顔でそんなことを言う快凛に恐怖しかなかった。
二人が抱き合って震えていると快凛はニヤリと笑って突然ナイフを投げる。アーリアの首を掠ったナイフは床に落ち、アーリアも首を押さえて崩れ落ちる。
「アーリアさん!!」
ヘレナが駆けつけるが、アーリアは蹲うずくまるばかり。ヘレナが反撃しようと十字架を突きつけた時には快凛はもういなかった。
その後、アーリアはリザから回復薬を買ったことを思い出し、ヘレナに知らせ、飲むことに成功した。飲んだ瞬間、体の底から回復したような感覚で傷も一瞬で治った。
「す、凄い…!」
アーリアは心の中でリザに感謝しながら急いでヘレナと教会に戻った。
次回、無能アーリアの任命