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11/13

本気で恋した俺たちに、未来はあるか。

 恋愛審問会から一夜明けた朝。


 王都はまるで、別の国になったように静かだった。

 浮かれていた民衆も、興奮のあまり徹夜したのか、今は夢の中だろう。


 


 だが。


 


「ミラ様を、こちらにお渡し願おうか」


 


 ルクレシア家の直属兵が、王宮前に現れたのは、そのわずか数時間後だった。


 


「無効になった政略結婚など関係ない。我が家は家訓に従い、彼女を帰国させる」


「……まだ、諦めてなかったのかよ」


 


 廉は王宮の庭先で、その報告を受け、無意識に拳を握りしめる。


 


「廉、お願い。冷静に……」


「ミラ、ここで譲ったら、何も変わらない。あんたの意志を、また誰かに奪われるんだぞ?」


 


 ミラは目を伏せた。


 彼女の表情には、もう迷いはない。


 


「だったら、闘いましょう。今度は、言葉じゃなく——心で」


 


====


 


 午後、王都広場。

 魔導塔により、王国全域同時中継が開始された。


 


 題して、《恋愛至上国家 最終決戦》

 その内容は——


 


 「恋愛偏差値」ではなく、「愛情度∞」が生み出した本気の恋が未来を決めるのか?


 


 ミラを取り戻そうとするルクレシア家。


 それを阻止しようとする廉とミラ。


 国王・カルロス三世が提案した“最終選択イベント”は——国民投票だった。


 


「この国の主権は恋にある。だからこそ、恋の未来は、国民の手に委ねようじゃないか!」


 


 完全にノリと勢いで喋っているが、それを許す空気になっているのが、この国の凄いところだった。


 


 廉は正直、胃が痛かった。


 


「なんだこの国……真面目にやって損した気分になるな……」


「でも、真面目にやったから、ここまで来られたのよ」


 


 ミラの横顔は、静かに輝いていた。


 


====


 


 【投票スタート】


 王国全土に広がる魔導パネルが、一斉に開票を始める。


 


 《質問:ミラ=ルクレシアは、恋愛至上国家の自由な恋愛を象徴すべき存在か?》


 


 YES → 廉との未来へ。

 NO → ルクレシア家へ返還。


 


 開始数分。最初はNOが上回った。


 だが、徐々に流れが変わり始める。


 


「俺、あの告白、録画で見たけど……あんな目、演技じゃ無理だわ」


「政略より、自分で決めた恋を応援したいよね……」


「何より、あの二人の手のつなぎ方、ガチすぎる……」


 


 市民の声が、次第に熱を帯びていく。


 やがて、パネル上のゲージが大きく揺れ、【YES】が50%を超えた瞬間——


 


 【新ステータス発動:共鳴愛情度リンクハート


 


 魔導モニターが、またしても輝きを放ち、廉とミラの心拍がシンクロしていくように、光が彼らを包んだ。


 


「これが……俺たちの答えなんだな」


「うん。演技でもスキルでもない。心がひとつに重なった証よ」


 


 そして、最終投票結果が告げられた。


 


 【YES:74.2%】


 


 勝利。いや、解放だった。


 ミラはもう、誰にも縛られない。


 


====


 


 王宮にて。


 カルロス三世は、スコーンを齧りながらニヤニヤしている。


 


「いや〜、想像以上だったよ、君たちの恋は! 面白い! 感動した!」


「お褒めに預かり光栄です……陛下、服の前開いてます」


「おっと、失敬。いやあ、恋って偉大だねぇ。国の法律よりも強いなんて!」


 


 彼のノリで何もかも進んだ感は否めない。


 だが、それでも——


 


「ありがとう、陛下。貴方のおかげで、僕たちは……自由になれた」


 


 ミラが深く頭を下げる。


 


 その夜、二人は王宮のバルコニーに立った。


 星々が、まるで祝福するように輝いている。


 


「……まだ信じられないな。こんな世界でも、本気の恋が通じるなんて」


「私も。あの時、恋なんて全部虚構って思ってた」


「……今は?」


「今は、君だけは本物だって、胸を張って言える」


 


 二人の視線が重なり、そっと手が伸びた。


 もう、演技じゃない。


 触れた手は、まるで心そのものだった。


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