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告白は擬人化してからにします!  作者: 椋木美都


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 第二十三話『トゥ・ア・ニュー・ステップ』

こうしてアラクシュミィお姉ちゃんは魔王の妃となり、魔界で暮らすことが生涯確定した。


2人のラブラブを見送った師匠はハース様と魔王城見学へ。


そして私は――


『そこまで密集している訳ではないが・・・はぐれないよう手を繋いでもいいか?』


「ふぁい」


――レヴェナントさんと城下町を観光していた。デートだわっしょい!!


「ち、ちなみにあの・・・髪型変じゃないですか?香水もちょっとつけてるんですけど臭くないですか?」


『シーグリッド嬢はいつも綺麗だ。澄んだ青空のような髪が揺れる度、夜しかない魔界を始めて惜しいと思った。匂いも甘い花のようで・・・気を抜くと見惚れてしまいそうになる』


「・・・・・・」


私はレヴェナントさんが好きだ。魔物だけど優しくて面倒見が良くて、耳が溶けて腰が砕ける程に声が良くて格好いい。そんな彼が、魔界にいる時だけ擬人化できることを知った。


背が高く、褐色の肌に鍛え上げられた体躯。バーガンディの瞳に見つめられるだけで胸が高鳴り、薄すぎず厚すぎない理想的な唇が微笑むだけで愛しさが募る。少し癖のある黒髪も顔ごと抱きしめて撫でさすりたい。


――くらくらする・・・駄目っ!また気絶する気か私!?


『シーグリッド嬢大丈夫か!?呼吸が荒いし顔も真っ赤・・・これは何の状態異常だ!?』


「い、いえ大丈夫です。口説、いや褒められ慣れてなくて、照れただけです。あはは・・・」


――魔王も美形だったけど・・・私の好みはやっぱりレヴェナントさんだ!男らしい精悍な顔立ちが素敵すぎる・・・!


つい頬を染めてうっとりと見つめてしまう。こんな明らかに気がありますみたいな眼差しを向けてしまったら本人に気づかれると分かってるのに・・・。分かってても止められなかった。


『ならよかった。実は女性を褒めたのはシーグリッド嬢が初めてなんだ。てっきり月並みな表現だと思われたのかと・・・』


「いえっ!ほ、本当に、凄く嬉しいです!呆れてなんていませんからね!」


――むしろ褒める女性は私だけにしてほしいなんて・・・まだ言えないよね。


安心づけるように手を強く握って語気を強める。レヴェナントさんもそんな私を見て顔を綻ばせた。


『ありがとう。シーグリッド嬢は俺に色んな感情を教えてくれるな』


――あぁぁぁぁ・・・今日なら尊く死んでもいい・・・いや死ねない・・・。


『そうだ。お姉さんと話さなくていいのか?』


「いいです大丈夫です!居所は割れたし、いつでも話せるって分かったので・・・」


姉は昔から私で遊ぶのが大好きな人だった。子供ながら頼りになる存在として慕っていたけど――正直生死を彷徨った思いでしか記憶にない。


――嫌いって訳じゃない・・・というか、嫌い通り越しておっかないって印象が勝つって感じなんだよね。上手く言語化できないからレヴェナントさんには言えないけど。


それに貴重な二人っきりの会話時間をお姉ちゃんで占めたくなかった。私は自然な流れでレヴェナントさんのことを聞き、私のことも話す。魔界の街は思っていたよりずっと栄えていて、彼が勧めてくれた竜肉の串焼きも普通に美味しかった。


「楽しい・・・魔界って素敵な世界ですね!」


――『シーグリッドが魔物化してレヴェナント君にアプローチかける手はないの?』


――『この羽はぁ、アーミィが魔族になった証!』


師匠とお姉ちゃんの言葉が脳裏をよぎる。今この瞬間だけ・・・私が人間をやめることも悪くないのかなと思ってしまった。


『シーグリッド嬢は、お姉さんが魔王陛下の正妃になったと聞いて・・・どう思った?』


「うーん。よくよく考えるとお似合いかも。って思いました。魔王・・・陛下が夫なら安心というか、包容力高そうですよね。色んな意味で」


『ふっ・・・そうだな。アラクシュミィ嬢が暴走しても陛下なら抑えられる』


レヴェナントさんは異種族間の恋愛について私がどう思っているのかを聞きたかったらしい。私はこの回答次第で彼の好感度が大きく左右する局面だと直感した。


「種族が違う?それがどーしたっていうんですか!例え価値観が違ったとしても、最初から相容れないとしても・・・この世界に有り得ないことは有り得ません。私は個人の恋愛観に対しても無差別を貫いていきますよ。レヴェナントさんが初めて助けてくれた時だって・・・す、素敵な魔物さんだなってドキドキしましたもん」


――よし。ちゃんと『私はレヴェナントさんのことを恋愛対象内として見てますよ』アピールできた筈!は、反応はどうだ・・・!?


ぐるぐる回る思考を頬に触れた手が止める。はっと顔を上げると、視界いっぱいに美形が映ったああああああ・・・。


『シーグリッド嬢の言う通り・・・恋愛観は無差別であるべきだ。それなのに、俺は勝手に魔の存在が現人(うつつひと)と愛で交わることは無いと思い込んでいた。陛下の告白を聞いても尚、気でも触れたのかと叫びたくなるくらい・・・俺もまだまだ未熟だな。2人の関係を受け入れるには時間が必要みたいだ』


そんなことない。と即座に否定して。貴方の気持ちはよく分かる。と共感して。前代未聞の発表なんだからそう思うのは当たり前。だと肯定して――。私には師匠みたいに相手を思い通りに動かすことも出来ないし、お姉ちゃんみたいに相手を惹きつける力もない。


――でも。だけど・・・レヴェナントさんがショックを受けていることくらい分かる。私の言葉が届いてる自信は全くないけど、何も言わないよりはマシ・・・だよね?


あわよくば、私を恋愛対象内に置いて欲しい。そんな願いを込めて――皆の元へ戻る間ずっと、互いの恋愛観について議論したのであった。


「ねぇシーグリッド」


魔王城の中で合流してすぐ、師匠は神妙な面持ちで私の傍に近づく。


「――魔族因子は人間が容易に取り込めるような物質じゃない。高確率で拒絶反応を起こし、肉体が変形して死に至るケースが殆ど。アラクシュミィは本当に本当に、極めて稀なケースだ。魔物化する方がまだ容易だよ。理性と知能を引き換えに力と形態変化(フォルムチェンジ)を手にして、命に別状はない。そうなってしまったらもう・・・()()はシーグリッド・トゥルースとは呼べなくなっちゃうけどね」


「だから魔物にはなりませんって」


「でもアラクシュミィを見て魔族になるのも有りって思ったでしょ?」


「な訳ないじゃないですか・・・すいません」


「自供が早いな」


つい意味のない否定を返してしまい、明後日の方向に目を逸らす。師匠はやっぱり私の考えてることなんてお見通しだった。


「師匠は私が魔物になったら嫌ですか?」


「それは()()()()()()()()()()()()が死ぬことを意味するからね。そりゃ嫌だよ」


「でも元が私なら愛せません?」


「シーグリッドが自分で魔物になりたいと――強く望むなら。私はその選択自体を否定したりしない」


けど。と言葉を切り、師匠は暗いブラウンの瞳に悲しみを混ぜた。


「凄く寂しいよ・・・住む世界が違ってしまうのは。シーグリッドはこのまま、普段いる世界で元気に生きてて欲しい。勝手なこと言ってごめんね」


師匠の声が心の奥にストンと落ち、漠然とした迷いが氷釈(ひょうしゃく)する。改めて思った。私はレヴェナントさんと同じくらい――師匠のことも特別なんだ。


「・・・しょーがないですねー。世界が敵に回るまで、私は地雷魔導士のシーグリッドとして生きてあげますよ」


「ありがとう」


「まぁレヴェナントさんが向こうで暮らそうって言ってくれたらその限りじゃないですけどねぇ・・・」


「シーグリッド顔顔。崩壊してるよ。ハース君とかに気づかれる前に戻して」


鼻を伸ばして言うと、小さく笑ってお礼を返される。そんな私達を――虧月(きげつ)が静かに見下ろしていた。

ソニア「私の魔法?この(ワンド)形態変化(フォルムチェンジ)できるから色んな攻撃魔法使えて便利だよ。そんな訳で・・・(大型メイスに変えた(ワンド)を構える)」

シーグリッド「え?あの、それを私に向けてどうするんてすか?」

ソニア「折角だから次の任務地までぶっ飛ばしてあげようと思って。さー行くよー」

シーグリッド「待って待って待って!ください!あの件についてはちゃんと謝ったじゃないですか!」

ソニア「有言実行が私の座右の銘だから。それにハース君はもう数十キロ彼方まで飛ばされたよ?いくら弟子が可愛いからって見逃す訳にはいかないな」

シーグリッド「それが可愛がっている弟子にすることでギャアアーーーッ!」

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