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告白は擬人化してからにします!  作者: 椋木美都


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 第二十一話『巡合バトルフェイズ』

お姉ちゃんは無傷で残った者を睥睨し、成長して大人びた顔を歪める。


「えーこれも駄目ぇ?思ってたよりしつこいじゃーん!アーミィの大大大っ嫌いなコックトローチみたぁい!」


「それはどうも。紅蓮色の髪にシーグリッドと同じ褪紅色(たいこうしょく)の瞳・・・貴女がアラクシュミィ・トゥルースだね」


褪紅色(たいこうしょく)?」


「ごめん。薄いピンク色って意味」


「姉・・・と聞こえましたが、彼女が魔原子爆弾の製造者で間違いないですか」


ぎこちなく頷く。するとようやくお姉ちゃんは私を認識し、細めていた目を丸くした。


「えぇ!?シーリィ?何で魔界にいんの?てか久しぶりー!超大きくなってる!あはは面白っ!」


「それはこっちの台詞・・・ってお姉ちゃん!」


約5年ぶりの再会。恐らく20歳になったお姉ちゃんには、昔と明らかに異なる点が1つあった。


「その翼・・・何?」


魔導士は自力で空を飛ぶ術を持たない。浮遊するには師匠のように魔道具を用いるか、ハース様のように元から空を飛べる種族に乗せてもらうしかない。


――重力系の魔導士とかは副次的な効果で滞空できるみたいだけど・・・お姉ちゃんは背中から生えた翼で空に留まっている・・・。


お姉ちゃんは背を見せ、漆黒の翼を見せびらかした。


「あっこれぇ、アーミィが魔族になった証!アーミィ結婚したの!」


「は?」「ええっ?」『なんだって!?』


――け・・・え?結、婚?


「え・・・えええーーーっ!?」


私達がパワーワードに圧倒された中、師匠まで武器を構えたまま驚いていることに驚く。というか何でこの2人はバチバチだったんだろう。


「結婚って誰と!?いつ!?」


「一昨日っ」


「「一昨日!?」」


久しぶりに会ったお姉ちゃんは魔族になっていて、3日前に誰かの妻になっていた。こんな情報過多ある?


「ねぇ聞いて?この女、アーミィのダーリンに言い寄ってたの!ダーリンも私に隠れて逢引しててさぁー酷くない?」


「えーーと。師匠がお姉ちゃんの旦那さんを誘惑してたの?」


「そうっ!」「してないよ」


両者の意見が食い違っております。現場からは以上ですと報道して帰りたかった。なにこの状況!


『要するに・・・アラクシュミィ嬢が自分の夫とソニア嬢が2人で会話している現場を目撃し、逆上してソニア嬢を始末しようとしていた・・・で合っているか?』


「そうだけどぉ・・・デイズペア如きが気安くアーミィの名前呼ばないで?近々公告されると思うけどね、アラクシュミィ嬢じゃなくて――アラクシュミィ魔王妃殿下とお呼びなさい!」


「ということは・・・貴女の結婚相手というのは」


「そう!魔王ヘルゼビオ!アーミィのマイスウィートダーリンっ!」


「・・・」


あまりの衝撃発言に呼吸の仕方を忘れる。それは師匠とレヴェナントさんとハース様も同じみたいだった。


「聞いてないよ人間を妻にするとか・・・何それぇ・・・道理でヘルゼビオ君の態度が不審だった訳だ・・・隠しおってあのバカ魔王・・・」


『確かに彼女から魔王の魔力を感じる。あの翼も恐らく・・・体内に魔族因子を取り込んだことで生えたんだろう』


「この羽わぁ、アーミィとダーリンが愛し合った証でもあるの。なんか改めて思うと・・・ね。ちょっとだけ恥ずかしいな・・・」


お姉ちゃんは頬を赤らめ、そそくさと翼をしまった。そして私より頭一つ分の身長差でそっと抱きしめられる。


「結婚式やる時はシーリィも呼んであげる!折角会えたんだから。ね?」


――魔族の妻・・・体内に魔族因子・・・ってことは・・・。


「う、うん・・・じゃあさ、お姉ちゃんってその・・・魔王と会ってあの、アレしたの?」


「・・・」


「!!」


笑顔で返され、否定も肯定もしないところが大人だなと思ってしまった。


「今!聞くべきことは!そこではない!でしょう!」


「えーやだ童貞?急に大きな声出すとかキモーイ」


「誰が童貞ですか!違います!!」


「まさか・・・!シーリィの彼氏?顔つきからして狷介(けんかい)そうね」


「違います!」「狷介(けんかい)は合ってるけど彼氏じゃない!」


同時に否定したら笑われたしハース様に射殺すような目で睨まれた。ハース様は咳払いしてお姉ちゃんと会話を試みる。


――内心凄いブチギレてるだろうな・・・さっきまで普通に機嫌よさそうだったのに!お姉ちゃんの馬鹿!


「・・・まずは初めまして。私は『世界の悪性(ウェルトマリグナント)』第2幹部、ロジオン・ハースです。貴女の妹の上司でもあります。後ろに控えているデイズペアは私が召喚した魔物です。以後お見知りおきを」


そうなの?と言われてそうなの。と返した。お姉ちゃんはさして興味なさそうな目をしている。だが次にハース様が放った言葉で、お姉ちゃんの態度が急変した。


「アラクシュミィ嬢が間女だと喚くソニア嬢も『世界の悪性(ウェルトマリグナント)』第3幹部です。貴女の妹とは師弟関係だそうですよ」


「・・・は?」


ピリついた空気が流れ、背中に緊張感が走る。お姉ちゃんは血走った目つきで師匠を補足した。


「そう。貴女がアーミィのシーリィを連れ去った・・・ふふっ!随分と駕御(がぎょ)がお上手ね。シーリィを悪の組織に引き込んだだけじゃ飽き足らずダーリンまで誑かすなんて・・・お前は炮烙(ほうらく)してデイズペアの餌にしてしまいましょう」


套言(とうげん)だな。そういうの他で聞き飽きてるからもういいよ」


挑発を皮肉で返されたお姉ちゃんは激昂し、高らかな嬌笑(きょうしょう)をあげた。


「よしんば臆断(おくだん)だったとしてもぉー。アンタがダーリンに唾つけたのは事実!死刑判決は下されたのっ!」


――ヤバイ!


「師匠!さっきみたく守ってください!」


お姉ちゃんはキレると魔原子エネルギー弾や魔原子ミサイルをぶつけてくる。どれも威力は災害級で、死ぬ気で身を守らなければさっきのように――コンマ数秒の間で肉体ごと消滅してしまう。


――一か八か『パンドラの病原』を設置して・・・!


「魔原子砲弾『グレイブルの鹵掠(ろりゃく)』――『実射(アンシュトース)』!」


お姉ちゃんの魔法が放たれた瞬間、全ての威力を封印型地雷に閉じ込めるつもりだった。それができるかは賭けだったけど。師匠に守ってもらうだけじゃなくて、これ以上レヴェナントさんがいる魔界を破壊したくなかった。


「・・・あれえ?」


「っなんで!?『実射(アンシュトース)』・・・『実射(アンシュトース)』しない!?」


お姉ちゃんは師匠がどこに逃げてもいいように、高威力の魔原子砲弾を直接放った。しかし師匠や私が対処するまでもなく『グレイブルの鹵掠(ろりゃく)』は不発に終わる。私とハース様、レヴェナントさんは勿論、お姉ちゃんまで目を白黒させたまま固まっていた。


「『髑髏の杖(スカルワンド)』――『最初の(エアスター)行き止まり(・ザックガス)』」


師匠が持つ杖が怪しく光り、淡々とした声が響いた。お姉ちゃんは自分の身に起きた異常を把握したのか、未だ木の上にいる師匠を歯嚙みする。


「今の貴女は無能だよ。『最初の(エアスター)行き止まり(・ザックガス)』は対象の魔法を無効化する。シーグリッド、今のうちにお姉ちゃんを拘束して」


「きたぁぁぁ!流石師匠!さあさあ恨みはないけどちょっとは大人しく――」


なってくれ馬鹿姉と叫びかけた私を、お姉ちゃんはたったの2文字で完封した。


「しぬ?」


「あっスミマセン・・・」


「シーグリッド!?」


レヴェナントさんの背に隠れて蹲る。暴君な姉に逆らえる妹などこの世に存在しないのだ。


「ならレヴェナント君手伝ってよ。アラクシュミィの動きを封じて」


『っそれは・・・いや。分かった』


「いえ。レヴェナントが手を下すまでもありません。彼女は後の魔王妃殿下なのでしょう?アラクシュミィ嬢を拘束したことで罪に問われたら困ります」


レヴェナントさんの躊躇を見抜いたハース様が前に立ち、お姉ちゃんの足元に魔方陣を出現させる。


「私が召喚するのは何も生物だけではありません。出でよ・・・『ストゥープの椅子』」


ハース様は世界的に有名な呪具の名を唱え、手を使わずにお姉ちゃんを椅子に縛り上げた。

アラクシュミィ・トゥルース(20歳)

魔法・・・核融(ニュークリア・)(フュージョン)

・魔放射能や核弾頭、膨大なエネルギー等を生成することができる。本人も己の魔法の威力は自覚しており、普段は熱線ビームを放ったり衝撃波を飛ばしたり物理的に圧力をかけたりしている。どれも当たると即死級の魔法である。

・各国では『魔原子核』の研究が進められている。彼女でしか生み出せない『魔原子核』という物質は、数々の難病を治療する手がかりとなった。『魔原子核』が生み出すエネルギーを産業の発展に貢献させている国もあるとか。応用で夜光塗料や断熱材と似た性質の物も創造可能。

・コックトローチ撲滅旅の途中、偶然出会った騎士からの助言(世界中のアレを消すよりこの世界から消えた方が早い)を曲解して魔界へ行くことを決意したそう。

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