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告白は擬人化してからにします!  作者: 椋木美都


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 第九話『腹を割って話す日』

――ってそうだ!ハース様と仲良くなんなきゃ・・・!


私は息を吸い、真偽判別のセンサーに引っかからないよう慎重に言葉を選んだ。


「それでも(レヴェナントさんの為に)仲良くしたいって思ってるんです!私は一度決めたことは簡単に取り消せるタイプじゃないんで。長期戦になってでも!まずはハース様に名前で呼んでもらえるよう頑張るんです!」


――それでレヴェナントさんを擬人化させてみせる!


『パチパチパチ・・・』


『ピポピポーン!』


私の想いは――人外には伝わったようである。では人間性が欠けている召喚術士にはどうか。


「・・・何故私の名前を?」


「師匠が仲良しになれるアドバイスしてくれまして。そう言う師匠は好きな男性以外あまり名前で呼びたくないみたいですけど。あ、名前で呼んでくれた暁には私もハース様のことを名前で呼びたいです!」


――嫌だけど。仕方なーくだけど。


『・・・!』


「ぁ」


僅かに反応したライデさんの存在に気づき、縋るような想いが顔に出る。無意識の内に胸の前で両手を組んでいた。


『――ピポピポーン!』


ライデさんはニコ!と目を細めて笑い、〇の記号を頭から出した。ラ、ライデ様・・・!


「・・・ここは人の入れ替わりが激しい。私が直接手を下さずとも、6番目はいつ消えてもおかしくないんですよ」


――え。それって・・・。


「私のこと心配してくれるんですか?」


「は?そんな訳ないでしょう」


『ブッブー!』


「え?」「ライデ!」


ハース様は咄嗟のあまりライデ様を消してしまった。だがその行為は完全に裏目に出ている。


――なーんだ!本気で嫌われてるんじゃないなら・・・もっと調子に乗っていいってことだよね!?


「任務の中で私の実力が評価されれば、いつかハース様も認めてくれますか?」


「チッ」


『ロジオン・・・シーグリッド嬢がここまで開けっ広げに伝えてるんだぞ。お前も少しは素直になったらどうだ』


「先程の獣人といい、6番目は他種族を抱き込むのがお上手なようですね」


『おい』


「言われた通り本心を述べたまでですが?」


脳内でレヴェナントさん擬人化バージョンを想像し、そこに声を吹き込んで悶える。どこか呆れたような・・・砕けた口調で話す彼に愛おしさを感じた。


――ハース様の前では兄貴分、私の前では・・・どれくらい気を許してくれるかなあ。


そんなことを考えていたお陰で、ハース様の皮肉は全く効いていなかった。上機嫌のまま受け流していると、話題は意外な方向へと流れる。


「――その妙なピアスも、さては件の獣人からもらったものですか」


「は?」


「獣人が異性にプレゼントを贈るというのは一種の求愛行動に当たります。何も考えずに受け取ると後に困るのは6番目ですよ」


『へえ。シーグリッド嬢はモテるなあ』


――は??待って待って違う!!


レヴェナントさんに誤解されてはたまらない。私は即座にハース様の誤解を解いた。彼は釈然としないといった表情で続ける。


「ソニア嬢ねぇ・・・『SAT』――Aは6番目のミドルネームですか?」


「いえ私にそんなものはありません。師匠のことだから何か意味がありそうですけど・・・全然心当たり無いんですよね。聞いても教えてくれなかったし」


――というかこの距離でよくピアスの文字見えるな。


脱線を指摘される覚悟で質問すると、ハース様の視力は5.0らしい。知的クールキャラで組織1眼鏡が似合いそうなお人なのに意外。と思ったけど口には出さなかった。


「どうせ『視力良すぎて逆に気持ち悪い』と思って――」


「話の腰を折っちゃってすいませんしたー。で、結局ハース様は何の話をしたかったんですか?」


『ロジオンが今まで出会ってきた人間がしないような行動や態度ばかりとるシーグリッド嬢を逆に怪しんでいるらしい』


――はーあ?


ポカンと口を開ける。ハース様は『勝手に全部言うな』と言わんばかりの目つきでレヴェナントさんを睨んでいた。


「レヴェナントに臆せず話すのも敵意を感じさせない振る舞いも――どうせ演技に決まってます。ソニア嬢の弟子という点も不可解極まりない」


「それは・・・どうしてですか?」


「貴女の師には秘密が多すぎる。未だ私達に自分の手の内を明かしてくれません。底が知れない魔力量に得体の知れない魔法を使う・・・ソニア嬢は一体何者なんですか」


確かに師匠は謎多き存在だ。基本は傘の形をした魔道具を使用しており、あの人自身の魔法はここぞという時にしか使わない。魔力だって普段は制御している為、勘が鋭い人じゃなければ師匠を過小評価してしまいがちだ。


「私もまだ師匠が本気で戦ってるとこは見たことないです。たまーにでっかい鎌を出したと思ったら、蒼穹竜(そうきゅうりゅう)を一撃で屠りましたし」


「は?あの伝説の竜と呼ばれる蒼穹竜を・・・!?確かに先月そういった報せを耳にしましたが・・・」


『俺達は別種である天穹竜(てんきゅうりゅう)の攻撃を防ぐだけで精一杯だったのにな・・・』


動揺を隠せずにいるハース様とレヴェナントさんに同意する。師匠はきっと。いや絶対私達が理解しがたい次元の域に属しているんだ。例え道連れ覚悟で特攻したって、私は師匠に傷一つつけられないと思っている。


「師匠はいつも私に優しい言葉をくれますけど・・・『強くなった』とは1回も言ってくれないんです。多分それは、圧倒的に強い自分が言っても皮肉にしか聞こえないからだと勝手に予想してます」


「私はソニア嬢に直接『強い』と言われましたけどね」


「ええっ!」


聞くと、ハース様は以前師匠に『ナンバー2の座を狙う気でいるなら全力で相手する』と啖呵を切ったらしい。すると笑みを含んだ声で『ハース君は強いから。さっき見せた、マグマを凍らせる威力の魔法を何連発したって足りない。別に自然破壊してまでその地位は欲しくないから』と答えたそう。


――しっかり挑発で返してくるあたり師匠っぽい・・・。


「それを言われた日は、ソニア嬢と一緒に火山の噴火による被害を抑えるといった任務の後でした。任務中、彼女は氷雪系の大魔法で噴火自体を止めてしまったんです」


「魔導士って自然災害に干渉できるんですね・・・」


『あれは圧巻だったな。ソニア嬢はマグマを全て溶岩石に変え、空間魔法で近場にある採石場に置いたんだ』


そんな芸当ができるのは師匠だけだと思う。そしてそんなナンバー3の実力を目の当たりにしたハース様(ナンバー2)がビビらない訳がない。


「1400℃のマグマを一瞬で凍らせられるソニア嬢が、私を『強い』と言ったんです。ライデに真偽を確かめてもらったので間違いありません」


『そこからソニア嬢に少しだけ心開きはじめたんだよ。ロジオンは褒められるとすぐ態度変えるから』


自慢げに言うハース様と、それを揶揄うレヴェナントさんを見て――私は全てに気づいてしまった。


――ハース様は・・・師匠のことが好きなんだ!


ご愁傷様。と最初から叶わぬ恋をしているハース様に合掌する。師匠は別世界にいる男性に絶賛片思い中らしい。今は訳あって離れ離れになっているんだとか。


――話を聞く限りじゃ、師匠はその人のことずっと一途に想ってるのが伝わってきたし・・・無理だね。うわハース様可哀想・・・っ!


「ハース様がよければ、師匠に関する私が知っている限りの情報をお出ししましょうか?といっても大したことあんま知らないですけど」


「何ですかその生温い眼差しは。急に素直になって不気味ですね」


「いえ・・・何か色々腑に落ちてスッキリしたというか」


――そういえば師匠からピアスもらった話した時も不機嫌そうにしてたし・・・うわヤキモチ焼かれた!あれは嫉妬だったんですね!?


点と点が繋がり、気持ちいい物質が脳内に撒かれる。私の中でハース様に対する親近感が急上昇した。

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