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古の記録

灰の宮で遭遇した巨大な影との戦いを経て、真奈たちは紅月の鍵に関する記録を手に入れる。その古びた書物には、鍵の真の力と、魔界に潜むさらなる脅威についての手がかりが記されているようだった。真奈、ラザール、イグナスの三人は、新たな目的地へと向かうことを決意する。

「この文字、なんとなく読めそうな気がする……。」

廃墟を出て宿営地に戻った真奈は、膝の上に古びた書物を広げていた。そのページには、魔界特有の古代文字がびっしりと書き込まれている。

「本当に読めるのか?」

イグナスが横から覗き込み、眉をひそめた。

「俺にはチンプンカンプンだがな。」

「紅月の鍵に選ばれた影響だろう。」

ラザールが焚き火の向こうから静かに言った。

「鍵は魔界そのものと深く繋がっている。お前がこの文字を理解できるのは、それが原因かもしれない。」

真奈は不安げにページをめくりながら、何かに導かれるように一節を読み上げた。

「『鍵を持つ者が三つの試練を越えたとき、紅月の真実は開かれる』……?」

「三つの試練か。」

イグナスが顎に手を当てて考え込む。

「一つ目は、この灰の宮での影との対峙だったと考えていいんだろうな。」

「他の二つがどこにあるかが問題だな。」

ラザールは腕を組み、真剣な表情を浮かべた。

「だが、この記録には鍵となる手がかりが隠されているはずだ。」

真奈はページの端に描かれた地図らしきものに目を留めた。

「これ、場所を示してるんじゃない?」

ラザールが立ち上がり、真奈の隣に腰を下ろした。

「確かに。この紋様は魔界北部の『黒焔の谷』だ。」

「黒焔の谷……」

真奈は聞き覚えのない地名に首を傾げる。

「その地には、封印された古の魔力が眠ると言われている。だが、危険な場所だ。」

イグナスは苦笑いを浮かべた。

「どのみち、俺たちの旅に安全な場所なんてないけどな。」

翌朝、一行は黒焔の谷を目指して旅を再開した。険しい山道を抜け、冷たい風が吹き荒れる中、進んでいく。

真奈はふと立ち止まり、周囲を見渡した。

「ラザール、この辺り、他の場所と少し違う気がする……。」

ラザールも立ち止まり、警戒するように辺りを見回した。

「確かに……魔力の流れが不自然だ。」

突然、足元の地面が揺れ、黒い霧が立ち込め始めた。

「またかよ!」

イグナスが剣を抜き、真奈をかばうように前に出る。

「影の集いが言ってた『試練』の一つがここにあるのかもな!」

黒い霧の中から現れたのは、炎を纏った巨大な鳥の姿だった。その目は紅月の色に輝き、一行を鋭く睨みつけている。

「なんだあれ……?」

真奈は恐怖を抑えながら、ラザールに尋ねた。

「『焔の番人』だろう。」

ラザールが剣を抜き、構える。

「この谷を守る存在だ。試練を乗り越えるには、あいつを倒さなければならない。」

焔の番人は鋭い叫び声を上げ、真奈たちに襲いかかった。

「真奈、俺たちが時間を稼ぐ!お前は鍵を使ってあいつを封じる方法を探せ!」

ラザールが叫びながら、番人の攻撃をかわす。

「わかった!」

真奈は懸命に書物を開き、焔の番人に関する記述を探し始めた。

イグナスは剣を振るい、炎の羽を払いのける。

「こいつ、硬すぎるな!ラザール、どうする?」

「持ちこたえろ!」

ラザールが地面に踏ん張りながら応戦する。

一方、真奈は焦る気持ちを抑えながら、ページをめくり続けた。すると、ある一節が目に飛び込んできた。

「焔の番人は紅月の光でその力を封じられる……!」

真奈は立ち上がり、鍵を掲げた。

「紅月の光って……これのことだよね!」

鍵が赤い輝きを放ち、周囲の霧を払いのけていく。

「その調子だ、真奈!」

イグナスが焔の番人の攻撃をかわしながら叫ぶ。

鍵の光がさらに強くなると、焔の番人は動きを鈍らせ、やがて苦しそうに鳴き声を上げた。そしてついに、その姿は霧のように消え去った。

戦いを終えた一行は、谷の中心にある祭壇へと進んだ。そこには、紅月の紋様が刻まれた石碑が立っている。

真奈が鍵を石碑に触れると、またしても光が溢れ出し、古代文字が浮かび上がった。

「『試練を乗り越えし者よ、次なる地へ進むべし』……。」

真奈はその文字を読み上げた。

ラザールが祭壇を見つめながら言った。

「次は……中央の荒野にある『霊峰ゼフィラ』だ。」

「また険しそうな場所だな。」

イグナスが肩をすくめて笑った。

「だけど、ここまで来たら後戻りなんてできないだろ?」

真奈は深呼吸し、小さく頷いた。

「うん。次も絶対に乗り越えるよ。」

ラザールはその決意を讃えるように微笑んだ。

「お前のその強さが、俺たちを支えている。」

中央の荒野にそびえる霊峰ゼフィラには、紅月の鍵にまつわるさらなる秘密が隠されている。

しかし、その地で待ち受けるのは、魔王の残滓の最も深い影だった——。


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