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影の集い

紅月の鍵の新たな力に目覚めた真奈は、試練の地を突破。だが、旅の行く手には未だ多くの謎と試練が待ち受けている。旅路を再開した一行は、魔王の残滓が魔界に暗い影を落としていることを知る。

霧の立ち込める薄暗い森を進む真奈たち。紅月が夜空に沈みかけ、朝が近づくにつれ周囲は一層静まり返っていた。

「何だ、この異様な静けさは……。」

ラザールが辺りを見回し、険しい顔をする。

イグナスも剣に手を掛けつつ笑みを浮かべた。

「こういう時は、何か嫌なものが出てくるのが常だよな。」

真奈は少し怯えながらも前に進もうと意を決する。

「でも、立ち止まってたら進めないよね。先に行こう!」

その勇気ある言葉に、ラザールは小さく微笑み、イグナスは肩をすくめて言った。

「頼もしいな、お姫様。」

しかし、その直後、森の奥から低い唸り声が響き渡った。一行は緊張を走らせる。

唸り声に導かれるように進むと、霧の中に黒い影が浮かび上がった。複数の人影が現れ、その中心には一際異様な雰囲気を纏った男が立っていた。

「よそ者か……珍しいな、この地を踏むとは。」

男は不敵な笑みを浮かべ、真奈たちを値踏みするように見つめた。

「お前たちは何者だ?」

ラザールが低い声で問う。

男はゆっくりと一歩踏み出し、赤黒い外套を翻した。

「我らは『影の集い』。魔界に遍く影を纏い、真実を探る者たちだ。」

「影の集い……?」

真奈はその名に聞き覚えがなかったが、その不穏な雰囲気に身震いする。

「紅月の鍵を持つ者よ。」

男は真奈を見据え、微笑んだ。

「貴様が噂の少女か。我らが主もその存在を注視している。」

「主……?」

ラザールは目を細め、剣の柄を握りしめる。

男は肩を揺らして笑った。

「この先で分かるだろう。だが、その力が真に魔界の救いとなるか、それとも破滅を招くか……。」

彼らはそれ以上のことを語らず、霧の中に消え去った。

その場に残された一行は、しばし沈黙を保った。

「影の集い……聞いたことがある。」

イグナスが難しい顔で呟く。

「奴らは古くから魔界にいる謎の集団だ。権力にも属さず、ただ影から動いている。」

「俺も名前しか知らないが、危険な存在であることは確かだ。」

ラザールが真奈を守るように立ち位置を変える。

「私が……何か悪いことをしたのかな?」

真奈は俯き、震える声で言った。

「違う。」

ラザールは即座に否定した。

「お前の存在が魔界にとって大きな意味を持つからこそ、彼らは注目している。それだけだ。」

イグナスは苦笑しながら言葉を続けた。

「まあ、あんまり深く考えるな。俺たちはお前を守る。それだけさ。」

不安を抱えながらも旅を続ける一行。森を抜けると、そこには広大な廃墟が広がっていた。

「ここは……。」

真奈は息を呑む。

「『灰の宮』だ。」

ラザールが口を開いた。

「かつて、紅月の力を巡る争いで滅びた王族の居城とされている。」

「居城って、ここに何かがあるの?」

真奈が問うと、ラザールは慎重な表情で頷いた。

「その可能性はある。だが、ここに近づく者は皆、何かに囚われて戻らないと聞く。」

「それでも進むんだろ?」

イグナスが軽く笑いながら言った。

「俺たちはそういう連中だからな。」

廃墟の中央に進むと、そこには奇妙な祭壇があった。周囲には古代文字が刻まれた石碑が立ち並び、不気味な光を放っている。

「これは……紅月の力に関係があるの?」

真奈が石碑に触れると、突然光が弾けた。

「気をつけろ!」

ラザールが真奈を引き戻した瞬間、石碑の間から黒い霧が立ち昇り、巨大な影が現れた。

影はゆっくりと形を取り、巨大な獣の姿を現した。その目は血のように赤く光り、一行を睨みつけている。

「また面倒な相手だな……。」

イグナスが剣を抜き、構える。

「この影は、紅月の力に反応している。」

ラザールが冷静に状況を分析する。

「おそらく真奈の力を試す存在だ。」

「私の……?」

真奈は怯えながらも鍵を握りしめた。

「お前ならできる。」

ラザールが真奈を見つめ、力強く言った。

「お前の心が鍵を導く。俺たちが後ろで支える。」

その言葉に勇気をもらった真奈は、鍵を高く掲げた。鍵が紅い光を放ち、獣の影と対峙する。

「怖くない……怖くなんかない!」

真奈の声が響き渡り、光が一層強くなる。

光と影の激突が起こり、周囲は閃光に包まれた。

光が収まると、獣の影は消え去り、祭壇には一冊の古びた書物が現れた。

「これは……?」

真奈が手に取ると、そこには古代文字で何かが記されていた。

「紅月の鍵に関する記録だ。」

ラザールが書物を手に取り、静かに読む。

「おそらく、次に進むための手がかりが記されている。」

真奈はその書物を見つめ、強く決意した。

「もっとこの鍵のことを知って、魔界の未来を変える手助けをしたい。」

ラザールは微笑み、優しく真奈の肩に手を置いた。

「お前ならできる。そのために俺たちがいる。」

紅月の鍵の秘密に迫るため、真奈たちは新たな目的地へと旅立つ。

しかし、記録に記された真実が、彼らをさらなる危機へと誘うことになる——。


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