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魔王の真意

紅月の鍵の力で裂け目を封印した真奈。しかし、その代償として身体に刻まれた紅月の紋章は彼女の力を蝕んでいた。一方、ゼフィルは最後の一手を隠し持ちながらその場を去る。絶望と希望が交錯する中、真奈たちは次なる目的地「深紅の神殿」へ向かう決意を固める——。

真奈が一度力を使い果たした後、旅の一行はしばらく静けさの中にいた。ラザールは馬車を操りながら、真奈の寝顔をちらりと見つめる。彼女は疲れ果て、イグナスが用意した毛布にくるまれて眠っていた。

「……大丈夫か、真奈?」

イグナスがラザールに声をかける。

「そりゃ、大丈夫じゃないに決まってるだろうさ。あんなに力を使ったんだ。普通の人間ならとうに壊れてる。」

ラザールはイグナスの言葉に黙り込んだが、拳を固く握った。

「それでも、彼女は耐え抜いた……。俺が守ると決めたんだ。絶対に。」

「王子様の決意は立派だけどさ、そのためにはゼフィルの尻尾を捕まえないとな。」

イグナスが軽口を叩きつつも、真剣な表情で地図を見下ろす。

「次の目的地は深紅の神殿。ゼフィルの足跡を追うには、あそこを通るしかない。」

「深紅の神殿……そこに何がある?」

「古い伝承では、魔界の『最初の王』が封印されていると言われている場所だ。」

イグナスは地図を指でなぞりながら説明する。

「ゼフィルが次に狙うとしたら、あそこだろうな。封印を解いて何かしでかすつもりだ。」

数日後、一行は「深紅の神殿」と呼ばれる場所に到着した。古びた建造物は圧倒的な威圧感を放ち、入口には無数の魔法陣が刻まれていた。

「嫌な空気だな……。」

イグナスが剣を握り直しながら周囲を見回す。

真奈はまだ完全に回復していないが、自分の足で立っていた。

「ここに入れば、何かが分かるかもしれない……。」

ラザールは彼女をじっと見つめ、低い声で言った。

「無理はするな。何かあればすぐに俺の後ろに隠れろ。」

真奈は少し微笑み、

「ありがとう。でも、私も役に立ちたいの。」

と答えた。

一行が神殿の中に足を踏み入れると、突然、冷たい風が吹き抜けた。壁一面には不気味な紋様が浮かび上がり、誰かの低い声が響いた。

「よくここまで来たな……。」

「ゼフィルか!」

ラザールが声の方を探すが、姿は見えない。ただ声だけがこだまする。

「封印が解かれれば、この魔界は真の姿を取り戻す。お前たちの行動など、時間稼ぎにしかならない。」

その瞬間、床が崩れ落ち、一行は別々の部屋に引き離されてしまった。

真奈が目を覚ますと、そこは暗く冷たい部屋だった。周囲には無数の鏡が並び、その中に彼女自身の姿が映っている。しかし、それは普通の鏡ではなかった。

「私……?」

鏡の中の真奈が動き出し、不敵な笑みを浮かべた。

「あなた、本当にこの世界を救えると思ってるの?」

「何を言ってるの?」

真奈は混乱しながらも、一歩後ずさった。

「あなたはただの普通の中学生。こんな世界に巻き込まれるべきじゃなかったのよ。そう思ってるんじゃない?」

その言葉に真奈は胸が締め付けられるような痛みを感じた。自分の弱さを見透かされているようで、目を逸らしたくなる。

「それでも……私はみんなを守りたい。」

「守りたい?そんな覚悟で何ができるの?」

真奈は涙をこらえながら答えた。

「私は……怖いけど、みんながいるから頑張れるの!それだけは嘘じゃない!」

その瞬間、鏡が砕け散り、部屋の扉が開かれた。

一方、ラザールは別の部屋で巨大な魔物と戦っていた。黒い鎖で拘束されながらも、彼は必死に剣を振るい続ける。

「ゼフィル……貴様の思惑通りにはさせない!」

鎖を断ち切り、魔物を倒すと、彼もまた扉の向こうへと進んだ。

イグナスも罠だらけの迷路を抜け、真奈やラザールと合流する。

「全員無事か?」

ラザールが確認すると、イグナスは苦笑いを浮かべた。

「まあな。だけど、ここから先はもっと厄介そうだ。」

一行が神殿の奥へ進むと、そこには巨大な魔法陣と共に、ゼフィルが待ち構えていた。

「よくここまで来たな。だが、お前たちの足掻きはここで終わりだ。」

ゼフィルは魔法陣に手をかざし、封印を解こうとしていた。その中央には、巨大な棺が浮かび上がっている。

「それが……最初の魔王……?」

真奈が呟いた。

ゼフィルは笑みを浮かべながら言った。

「そうだ。この魔王の力さえ手に入れば、私は真の支配者となれる。そして、この腐敗した魔界を作り変えるのだ。」

ラザールが剣を抜き、ゼフィルに向かって突進する。

「そんなことはさせない!」

ゼフィルもまた魔法で応戦し、激しい戦闘が繰り広げられる。イグナスがラザールを援護しながら叫ぶ。

「真奈!お前の力が必要だ!」

真奈は恐怖を感じながらも、紅月の鍵に手を伸ばした。

「みんなを守るために……!」

鍵が再び光を放ち始め、ゼフィルの魔法陣に干渉していく。その力により、封印は一時的に弱まったが、完全には消えない。

「終わりだ!」

ゼフィルが最後の呪文を唱えようとした瞬間、真奈の鍵から放たれた光が彼を飲み込んだ。

封印の解放を阻止したかに見えたが、神殿が崩壊を始める。一行は無事に脱出できるのか。

そして、最初の魔王に隠された真実とは——。


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