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ゼフィルの野望

影喰らいの塔で発見した石碑から、真奈の「紅月の鍵」と魔界の歴史に深い繋がりがあることが明らかになった。一行は石碑の情報を手掛かりに、ゼフィルの目的地とされる「終焉の裂け目」へ向かう。しかし、その道中、真奈たちの前にさらなる試練が待ち受けることに——。

塔からの帰路、一行は魔界の荒野を進んでいた。冷たい風が吹きすさび、紅い月が薄雲に隠れて明るさを失っている。真奈は背負う使命の重さに胸を押し潰されそうになりながらも、必死に歩を進めていた。

「……ねえ、ラザール。」

真奈はその重苦しい沈黙を破るように口を開く。

「ゼフィルって、何をしようとしてるの?」

ラザールは真奈を一瞥し、しばらく考え込むように歩みを止めた。そして、静かに口を開く。

「ゼフィルが追い求めているのは、『魔界の再生』だと聞いている。だが、その方法が問題だ。」

「方法?」

「彼は"紅月の鍵"を使い、封印されし力を解放しようとしている。その力は確かに魔界を救うかもしれない……だが、同時に魔界そのものを滅ぼす可能性もある。」

イグナスが軽くため息をつき、肩をすくめた。

「まあ、平和のために全てを犠牲にしようってヤツは、どこにでもいるもんさ。」

「それって……」

真奈は拳を握りしめた。

「ゼフィルは、魔界のためだって言いながら、本当に滅ぼしてしまうかもしれないってこと?」

ラザールは頷き、険しい顔をする。

「だからこそ、奴を止めなければならない。」

その時、遠くから不気味な叫び声が響いた。

「敵だ!」

イグナスが即座に剣を抜き、ラザールも身構える。

暗闇の中から現れたのは、無数の魔物の影。ゼフィルの操る軍勢だった。

「真奈、下がっていろ!」

ラザールが指示を飛ばす。

「でも——」

「守りを固めろ!」

真奈は言葉を飲み込み、紅月の鍵を構える。自分の力を完全に制御する自信はまだなかったが、恐れている場合ではなかった。

魔物の群れは、風のように速く、一行に襲いかかる。ラザールとイグナスは見事な連携で次々と敵を倒していくが、敵の数は一向に減らない。

「真奈、頼むぞ!」

イグナスが叫びながら、迫りくる魔物を剣で薙ぎ払う。

「うん!」

真奈は紅月の鍵を掲げ、力を解放した。光の奔流が魔物たちを貫き、一時的に戦況を優位にしたかのように見えた。

しかし、その光に反応するかのように、さらに強大な敵が姿を現した。それは、全身を漆黒の鎧で覆った巨大な魔物だった。

「何だ、あれは……!」

真奈の声が震える。

「"深淵の守護者"か……厄介なヤツが出てきたな。」

ラザールが剣を握り直し、前に出る。

「イグナス、真奈を守れ。こいつは俺がやる。」

「おいおい、無茶するなよ!」

「命令だ。」

ラザールの言葉にイグナスは一瞬口をつぐみ、その後真奈に向き直った。

「俺たちで援護するぞ。」

「……分かった!」

ラザールは深淵の守護者と対峙し、目を光らせた。

「ゼフィル、お前がこんな手を使うとはな……。」

守護者は重い斧を振り下ろし、地面を割るような衝撃を与えてきた。ラザールは素早く動き、間一髪でその一撃をかわす。

「さすがに手強い……だが!」

彼は剣に力を込め、一撃を繰り出す。しかし、守護者の鎧は尋常ではない強度で、剣は表面をかすめるだけだった。

「くそ……!」

真奈はそんなラザールの姿を見て、いてもたってもいられなくなった。

「私も手伝う!」

「真奈、ダメだ!」

イグナスが彼女を引き留めようとするが、真奈は鍵を握りしめ、ラザールに向かって叫んだ。

「私だって戦える!一緒に戦わせて!」

ラザールは少し驚いたような表情を見せたが、すぐに頷いた。

「……ならば、俺の後ろから援護しろ。無茶はするな。」

真奈の放つ紅月の力と、ラザールの剣技が見事に噛み合い、ついに深淵の守護者を追い詰める。

「これで終わりだ!」

ラザールが渾身の一撃を放ち、守護者の鎧を貫いた。巨大な魔物は苦しげな咆哮を上げ、ついに消滅する。

しかし、その瞬間、守護者が放った最後の攻撃がラザールをかすめた。

「ラザール!」

真奈は駆け寄り、彼の傷を見て目を見開いた。

「大したことはない。」

彼は立ち上がり、剣を杖代わりにして歩き出す。

「だが、急がなければ……ゼフィルに追いつけなくなる。」

戦いの傷を癒す間もなく、一行は「終焉の裂け目」を目指して進む。そこでゼフィルが何をしようとしているのか、未だ分からない。しかし、真奈は確信していた。

(ゼフィルを止めなきゃ……魔界が滅びる前に。)

紅い月が再び雲間から顔を出し、その光が一行を照らしていた。次の戦いが、彼らを待ち受けている。

ゼフィルの目的地に辿り着いた一行。

しかし、そこに待っていたのは、彼の壮大な野望と、真奈自身に関わる衝撃の真実だった。


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