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紅月の選択

紅月の神殿で巫女としての力を覚醒させた真奈は、新たな力を手に入れる。しかし、その力は魔界を救う希望であると同時に、大きな代償を伴うものであることが示唆される。真奈、ラザール、イグナスの三人は次の試練の場へと進むが、彼らを待ち受けるのはさらなる運命の選択だった。

光の道を歩む真奈、ラザール、イグナスの三人。その先に広がっていたのは、幻想的な空間だった。星空のような天井には無数の光の粒が瞬き、足元には鏡のように澄んだ湖面が広がっている。

「ここが……次の試練の場か?」

イグナスが呟きながら周囲を見渡す。

「雰囲気は穏やかだが、油断するな。」

ラザールが鋭い目つきで警戒する中、真奈は何かに導かれるように湖の中央へと歩みを進めた。

「真奈?」

ラザールが声をかけるが、真奈は立ち止まらない。その瞳には強い意志が宿っている。

「待って、何か聞こえる……」

真奈は立ち止まり、耳を澄ませた。

その瞬間、湖面が波立ち、空間にひび割れが走るようにして現れたのは一人の女性だった。

女性は長い銀髪を持ち、その姿はどこか真奈に似ている。柔らかな微笑みを浮かべながら、真奈に語りかけた。

「ようこそ、紅月の巫女。私はルナリエ、この世界の意思を司る者。」

「この世界の……意思?」

真奈が困惑するように尋ねる。

「そう。魔界を紡ぐ生命の根源にして、紅月の本質そのものと言っていいわ。」

ルナリエの言葉に、ラザールとイグナスも警戒を強める。

「お前がこの試練の主か?」

ラザールが剣を握りしめる。

「落ち着いて、ヴァルディアの王子。私は争うつもりはないわ。」

ルナリエは静かに手を広げた。

「ただ、真奈に選んでもらいたいの。」

「選ぶ……?」

真奈は戸惑いながらも、一歩前に進む。

「紅月の力は、魔界を救う希望であると同時に、世界を壊す力でもある。それを使うかどうかは、すべてあなたの意思に委ねられているのよ。」

ルナリエは手をかざし、湖面に映像を映し出す。それは、紅月の力が暴走し、魔界全土を覆い尽くす凄まじい光景だった。大地は裂け、魔族たちは悲鳴を上げ、すべてが光に飲み込まれていく。

「これは……!」

真奈が息を呑む。

「もし紅月の力を完全に覚醒させれば、魔界を再生させることができるでしょう。でも、その過程で多くの命が失われる危険も伴うわ。」

「そんな……」

真奈の顔が青ざめる。

「逆に、その力を封じれば、魔界の現状を維持することはできるけれど、長い時間をかけて滅びに向かう可能性が高い。」

ルナリエの声はどこまでも穏やかだったが、その内容はあまりにも残酷だった。

「じゃあ、どっちを選んでも……」

真奈は涙ぐみながら唇を噛む。

「そう、どちらも簡単な道ではない。それでも、あなたが決めなければならない。」

「待てよ!」

ラザールが一歩前に出る。

「なぜ真奈だけにそんな選択を押し付ける?これは魔界全体の問題だろう!」

「彼女が紅月の巫女だからよ。」

ルナリエは冷静に答えた。

「でも、あなたたちも彼女を支える存在。だから意見を述べるのは自由よ。」

ラザールは歯を食いしばりながら真奈を見た。

「真奈、俺たちも一緒だ。どんな選択をしても、俺はお前を守る。」

「俺もだ。」

イグナスが続ける。

「難しい選択だろうが、真奈ならやれる。」

二人の言葉に真奈は涙をぬぐい、静かに頷いた。そして、目の前のルナリエを見つめる。

「私は……決めました。」

真奈は紅月の鍵を強く握りしめた。

「この力を完全に使うことが、たとえ多くの犠牲を生むかもしれなくても……私は魔界を救うために戦います!」

その言葉に、ラザールとイグナスは驚きながらも誇らしげに頷いた。

「そうか。」

ラザールが微笑む。

「なら、俺たちもその道を共に進むだけだ。」

「よし、やるしかないな。」

イグナスも剣を構える。

ルナリエは満足げに頷き、湖面が再び光に包まれる。

「あなたの決意、しかと受け止めたわ。紅月の巫女、これからの試練も乗り越えて。」

光が消えた瞬間、三人は元の神殿へと戻っていた。しかし、真奈の手には新たな力が宿った鍵が握られていた。

紅月の巫女として真奈が選んだ道。それは新たな戦いの始まりを告げるものだった。

果たして彼女たちは魔界を救えるのか——。


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