表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/129

紅月の予兆

カリスとの激闘を終えた真奈たち。彼女の力によって霧の呪いは浄化され、魔界に一時的な平穏が訪れたかに見えた。しかし、戦いの後、再び不気味に浮かび上がる紅い月が次なる試練を予感させる。

戦いが終わった翌日、真奈たちは一夜の休息を取るため、近くの森にある静かな隠れ家に身を寄せていた。鳥の鳴き声が遠くで響く中、真奈は目を覚ます。

「……あれ?みんなは?」

小さな小屋の中には誰の姿もない。彼女は急いで外に出ると、ラザールが森の中で剣の手入れをしているのが目に入った。

「ラザール!」

彼女が声をかけると、彼は振り返り、珍しく穏やかな笑顔を見せた。

「おはよう。疲れは取れたか?」

「うん、なんとか。でも……昨日のこと、まだ頭の中が整理できてなくて。」

真奈は紅月を見上げながら言葉を続ける。

「私が放った光って、なんだったんだろう?あの力、どうして私に……」

ラザールは剣を置き、真奈の隣に座る。

「真奈、お前が異界から来た“鍵”である以上、まだ知らない力が眠っているのは当然だ。だが、それがどういう意味を持つのかは、俺にもわからない。」

「そうだよね……私、もっとこの世界のことを知りたい。」

その言葉に、ラザールは真奈の決意を感じ取り、頷いた。

「その気持ちがあるなら、きっと道は開ける。だが、焦る必要はない。」

その時、イグナスが大きな声を上げながら森の奥から戻ってきた。

「おーい!お二人さん、のんびりしてる場合じゃないぜ。」

「何があったんだ、イグナス?」

ラザールが立ち上がると、イグナスは険しい顔で言った。

「近くの村に行ったんだが、どうも妙な噂を耳にした。紅月の力が以前より強まっていて、人々が幻覚を見るようになってるらしい。」

「幻覚?」真奈が驚いたように聞き返す。

「ああ。幻覚に囚われた者たちは、自分の最も恐ろしい記憶や後悔を何度も見せられるんだそうだ。そして、気がつけば……その村から消えてしまうらしい。」

「消える……?」

イグナスは真奈を見つめ、真剣な表情で続けた。

「これがただの噂で済めばいいが、どうも紅月が絡んでる気がしてならない。あの月が何かの引き金になってるんじゃないかと思うんだ。」

3人は早速、問題が起きているという村を目指すことにした。村に到着すると、そこは活気を失い、重い空気が漂っていた。

「まるで……誰かの力で縛られてるみたい。」

真奈は村全体の異様な雰囲気に気づき、足元が震えるのを感じた。

村人たちは彼らを警戒するような目で見つめるが、一人の老婆が近づいてきて口を開いた。

「あなたたち……もしかして、この村を助けに来てくれたのかい?」

ラザールが一歩前に出て答える。

「ここで何が起きているのか教えてくれ。」

老婆は静かに語り始めた。

「紅月が昇るたび、村の者たちが苦しみ始めるんだよ。幻覚を見たと言って暴れる者、怯える者……そしてそのまま姿を消す者もいる。」

真奈は老婆の手を取り、真剣な眼差しで尋ねた。

「それを止める方法はわかりませんか?」

老婆は首を横に振り、涙を浮かべた。

「わからない……ただ、一つだけ噂がある。この村の北にある廃墟に“月影の石”というものがあるそうだ。それが関係していると。」

老婆の言葉を頼りに、真奈たちは村の北にあるという廃墟を目指す。道中、真奈はふとラザールに尋ねた。

「ラザール、私……怖いよ。もし幻覚を見せられたら、私にも何か隠していることがあるのかな?」

「誰にだって、恐怖や後悔はある。だが、真奈、お前はそれに立ち向かえるはずだ。俺が信じている。」

彼の言葉に背中を押され、真奈は少しだけ勇気を取り戻す。

やがて一行は廃墟にたどり着く。そこには、かすかに輝く不気味な石が祀られていた。

「これが“月影の石”……」

真奈が手を伸ばそうとした瞬間、石から強い光が放たれ、一行はそれぞれ異なる空間に引き裂かれる。

「真奈!イグナス!」

ラザールの叫びも届かない。真奈は暗闇の中に立たされ、一人ぼっちになっていた。

「ここは……どこ?」

その時、耳元で囁くような声が聞こえた。

「お前はここにいるべきではない。戻るべきだ……元の世界に。」

真奈の目の前には、現実の世界にいる家族や友人の姿が浮かび上がる。

「みんな……私……戻れるの?」

だが、それと同時に魔界で出会ったラザールやイグナス、そして彼女を助けてくれた人々の顔が心に浮かぶ。

「……でも、私はここでやるべきことがある!」

真奈は幻覚を振り切り、立ち上がった。

「たとえ怖くても、私には守りたいものがある!」

その瞬間、彼女の体から再び眩い光が放たれ、暗闇を切り裂いた。

光の中で目を覚ました真奈は、ラザールとイグナスと再び合流する。

「真奈、無事か!」

ラザールが駆け寄ると、彼女は強く頷いた。

「うん。私、大丈夫……だけど、この石は何かもっと深い謎を抱えている。」

すると、月影の石が不気味に輝き始め、廃墟全体が揺れ始める。

「おい、どうやら次の試練が待ってるらしいぞ!」イグナスが苦笑しながら剣を構える。

紅月の下、真奈たちの旅はさらなる困難と未知の力によって新たな段階へと進んでいく。

月影の石に隠された真実が、魔界の運命を大きく揺るがす——。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ