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運命の選択

忘却の森での試練を乗り越え、真奈たちは「真実の泉」に到達した。そこでルーシアの幻影を通じて呪いの核心に迫る真実を知った彼ら。だが、その解決には重大な犠牲が伴うとされており、彼らは改めて運命に立ち向かう覚悟を迫られる。次なる目的地は、魔界の心臓部「灼熱の聖域」——紅月の呪いを解くための最終地点だった。

「これが真実……なのね。」

真奈は泉からの啓示に動揺しながらも、心を落ち着けようと深呼吸をした。その内容は、魔界を覆う呪いを完全に浄化するには、彼女自身の存在が鍵になるというものだった。

「私が……この呪いを解くためにここに呼ばれた……?」

「だが、それには代償が伴う。」

ラザールが険しい表情で付け加えた。泉の啓示によれば、真奈が人間界に戻ることができなくなる可能性が高いというのだ。

「真奈、お前には決断する権利がある。この旅をここで終えることだってできる。」

ラザールの声には優しさが込められていた。しかし、彼の内心では、もし真奈が魔界に残る決断をすれば、それが彼女の人生を縛ることになると分かっていた。

「……私は逃げたくない。」

真奈の声には迷いがなかった。

「みんなのためにここまで来たのに、最後の瞬間で背を向けたら後悔すると思うから。」

ラザールとイグナスはその言葉に驚いたように目を見開く。しかし、彼らの中に芽生えたのは彼女への尊敬だった。

啓示に従い、真奈たちは「灼熱の聖域」へ向かった。魔界の心臓部とされるその地は、紅い光に包まれ、常に炎が渦巻いている過酷な場所だった。

「ここは……ただの火山じゃないよね……?」

真奈が息を呑む。

「灼熱の聖域は、魔界のエネルギーが最も凝縮された場所だ。ここに紅月の呪いの核が眠っている。」

ラザールの言葉にイグナスが続けた。

「ただし、核を浄化するには、聖域そのものの力を制御しなければならない。それがどれほど危険か……俺たちも予測がつかない。」

聖域に足を踏み入れた瞬間、強烈な熱波が3人を襲った。しかし、それ以上に彼らを苦しめたのは、紅蓮の炎が作り出す幻影だった。

「また幻影か……!」

ラザールが剣を抜き放つ。

目の前には、彼の過去を象徴するような光景が広がっていた。幼い彼が、弟とともに王族として厳格な父親に叱責される姿だ。弟はその厳しさに心を壊し、呪いの起点となる悲劇の一端を担った存在だった。

「父上……俺が間違っていたのか?」

ラザールはその幻影に問いかけるように呟いたが、すぐに首を振り、剣を振り下ろした。

「真奈、イグナス、先を急ぐぞ!」

一方、イグナスもまた、自身の過去の傷を突きつけられていた。戦場で失った仲間たちの幻影が現れ、彼を責める。

「俺がもっと早く気付いていれば、お前たちは死ななかった……!」

だが、彼は自嘲気味に笑い、幻影に背を向けた。

「けど、俺は前に進むって決めたんだよ。ラザールや真奈とともに。」

最後に、真奈もまた、母親や友人たちが彼女を呼び止める幻影に直面した。

「真奈ちゃん、戻ってきて……!」

「……ごめんね、でも私はこの世界でやらなきゃいけないことがあるの。」

真奈は涙を拭い、母親たちの幻影に別れを告げる。そして、3人は試練を乗り越え、聖域の中心へとたどり着いた。

聖域の中心には、巨大な紅い結晶が鎮座していた。それこそが、紅月の呪いの核だった。

「これが呪いの核……!」

真奈は一歩前に進む。

「ここで浄化の儀式を行えば、紅月の呪いを解くことができる。ただし……その力の代償として、お前の存在が魔界に縛られる可能性がある。」

ラザールの声には再び迷いが感じられた。

「真奈、もう一度聞く。これを本当にやるつもりか?」

真奈はラザールを振り返り、微笑んだ。

「ありがとう、ラザール。でも、私は決めたの。みんなを救いたいって。」

彼女の手が結晶に触れると、眩い光が溢れ出した。同時に、紅月の呪いが結晶から放たれ、浄化されていく。

浄化の儀式が進む中、真奈の体に異変が起こり始めた。手が透明になり、次第に魔界そのものと一体化していくかのようだった。

「真奈!」

ラザールが叫ぶ。

だが、真奈は優しく微笑み、彼を見つめた。

「大丈夫、ラザール。私は……平気だから。」

しかし、その時、彼女の身体に再び人間らしい感触が戻った。結晶が完全に浄化された瞬間、真奈が魔界に縛られることなく存在できる力が解放されたのだ。

呪いは解かれ、紅月は消え去った。しかし、真奈たちは聖域を出る際、不気味な気配を感じる。

「……何かがまだ潜んでいるのかもしれない。」

ラザールが低く呟く。

平穏を取り戻した魔界に、新たな危機が忍び寄る——。


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