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古の試練

紅月の祭壇で見た過去の幻影——魔界を紅い月で覆う呪いが、かつて王族であった女性ルーシアの悲願の歪みから生まれたことを知った真奈たち。ルーシアの願いを叶えるため、彼女は祭壇で浄化の力を発揮したが、呪いは完全には解かれず、さらなる試練が待ち受けていることが示唆された。次の行き先を示す手がかりを得るべく、3人は魔界の中心地へと向かう。

浄化の儀式を終え、疲れ切った真奈たちは一度ヴァルディア宮へ戻ることにした。ラザールの居城であり、魔界の中枢でもあるその宮殿は、紅月の呪いによって荒れ果てた土地の中で唯一安定を保つ場所だった。

宮殿に到着すると、迎えの侍従たちが一斉に膝をつき、ラザールに敬意を示す。

「王子、祭壇での進展をお聞かせください。」

執事然とした壮年の魔族が一歩進み出て言う。

「祭壇は浄化の兆しを見せたが、完全ではない。さらなる試練を越える必要がある。」

ラザールは重々しい声で答えた。

真奈はその光景を見つめながら、自分の存在がこの地にどれほどの重みを持っているのか、改めて実感する。

その夜、宮殿の書庫で新たな手がかりを探していた3人は、一冊の古い書物を見つけた。そこには「古の試練」と題された記述があった。

「これは……紅月を鎮めるために必要な儀式の詳細だ。」

ラザールが呟き、書物を指でなぞる。

「『真実の泉を訪れよ。そこに隠された真実を解き明かせ。』って書いてあるけど……これ、どこにあるの?」

真奈が首を傾げながら問いかける。

イグナスが地図を広げると、古代文字で示された泉の場所が浮かび上がった。

「どうやら魔界の最深部、忘却の森にあるらしいな。だが、この森は危険な迷宮のような場所だと聞いたことがある。」

「ならば行くしかない。」

ラザールの言葉に、真奈は強く頷いた。

翌朝、3人は早速忘却の森へ向けて旅立つ。道中、荒廃した風景が広がる中、真奈はふと足を止めた。

「魔界って、こんなに荒れ果てていたんだ……。」

「紅月が現れる前は、もっと緑が豊かで穏やかな土地だった。だが、紅月の呪いがすべてを変えた。」

ラザールの言葉に重みがあった。

真奈は胸が締め付けられる思いで空を見上げる。紅く染まる空はどこか悲しげで、彼女の決意をさらに強めた。

忘却の森に到着すると、薄暗い霧が一面に広がっていた。木々は奇妙にねじれ、どこを見ても同じ景色が続く。

「これじゃ迷子になりそうだね……。」

真奈が不安げに呟く。

「そのために俺がいる。道案内くらいお手の物だ。」

イグナスが軽口を叩くが、その表情は引き締まっている。

しかし進むごとに、彼らは奇妙な現象に巻き込まれ始めた。

突然、真奈たちの前にそれぞれ違う光景が現れた。

「お母さん……?」

真奈の前には、日本の家のリビングが浮かび、そこには母親の姿があった。

「真奈、帰っておいで。こんなところにいちゃダメよ……。」

真奈の足が自然と一歩前に進む。しかし、その瞬間、ラザールの声が響いた。

「動くな、真奈! それは幻影だ!」

振り返ると、ラザールとイグナスもそれぞれ幻影に囚われている。ラザールの前には、幼少期の彼に厳しく語りかける父王の姿。イグナスは、かつて命を救えなかった仲間たちの幻影に囲まれていた。

「これは……私たちの心の弱さを試しているのかもしれない……!」

真奈は震える足を踏ん張り、自分に言い聞かせた。

「私はここで立ち止まるわけにはいかない……! ラザール、イグナス、負けないで!」

その声に応えるように、ラザールが父王の幻影に剣を振り下ろし、イグナスも仲間たちに別れを告げた。

試練を乗り越えた3人の前に現れたのは、澄んだ水面を持つ小さな泉だった。その水面に映ったのは、ルーシアの姿。

「……ここが真実の泉。」

ルーシアの映像は静かに語り始めた。

「真実を知ることは時に苦しみを伴う。しかし、それを受け入れることでのみ、未来を切り拓くことができる……。」

その言葉と共に、泉の水が赤く染まり、真奈たちに何かが伝わってきた。それは紅月の呪いを解くための最後の手順——そして、その代償が示されていた。

「……これが、真実。」

真奈は泉から顔を上げた。その瞳には確固たる決意が宿っていた。

「次の場所に進もう。この呪いを、必ず解いてみせる。」

「ああ。」

ラザールが力強く頷く。

「お前たち、やる気は十分のようだな。それなら俺も付き合ってやるさ。」

イグナスが笑顔を浮かべると、3人は次なる目的地へ向かうべく再び旅立った。

真奈たちが知った真実とは一体何だったのか? 呪いの核心へと迫る旅が、さらなる危険を呼び寄せる。

未来を掴むための決断が迫られる——。


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