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紅月の謎

試練の守護者との戦いを終え、遺跡から出た真奈たちは、一面に広がる赤い月光に包まれる魔界の空を見上げた。その美しさの中にはどこか不気味な不安が漂っている。

「紅い月……こんなに近くに感じるなんて。」

真奈は手をかざしてつぶやいた。

「魔界において紅月は、力と破滅を象徴する特別な存在だ。俺たちの運命はすべて、あの月と繋がっている。」

ラザールが月を見上げながら低い声で語る。

「でも、この月は昔は違ったんだ。」

イグナスが付け加えた。

「違った?」

真奈が驚いて問い返すと、イグナスは頷きながら説明を始めた。

「遥か昔、この月は蒼く輝いていたらしい。魔界の住民たちは、その光の下で平和に暮らしていたんだ。」

「じゃあ、どうして今は紅いの?」

その問いにラザールは少しだけ言葉を詰まらせた後、口を開いた。

「蒼い月が紅く染まったのは、魔界を二分する大いなる戦争が原因だと言われている。その詳細は歴史書にも明記されていないが、月が紅く染まったとき、魔界全土に禍々しい力が広がり、いくつもの大陸が崩壊した。」

「それが……私の力と関係あるの?」

真奈は自分の手を見つめ、先ほど守護者の試練で解放された力を思い出した。

ラザールは真奈を真剣な目で見つめた。

「おそらくな。お前の中には、紅月を元に戻す力が眠っているのかもしれない。それが魔界を救う『鍵』としてお前が召喚された理由だ。」

その夜、近くの森で野営を張る一行。焚き火の光が魔界の冷たい空気を温めていた。

「しかし、あの守護者が真奈を試すとはな……。お前、本当にただの中学生か?」

イグナスが笑いながら真奈を茶化した。

「私だって分からないよ!」

真奈は頬を膨らませながら答える。しかし、その瞳にはどこか不安が宿っていた。

「お前の力が解明されるのは時間の問題だ。だが、敵も動き出しているのは間違いない。」

ラザールが険しい表情で呟いた。

その瞬間、闇の中から低い声が響いた。

「その通りだ、ヴァルディア王子。」

焚き火の光に浮かび上がったのは、黒いローブをまとった謎の男。彼の周囲には不気味な霧が漂っている。

「誰だ!」

ラザールが剣を抜き、即座に構える。

「フフ、そんなに威嚇するな。私はただ、お前たちの旅を見守っていただけだ。」

「見守るだって? ふざけるな!」

イグナスが即座に反応するが、男は冷静に笑みを浮かべた。

「紅月の謎に近づくのはお前たちだけではない。お前たちが鍵を持つなら、私たちにはその鍵を開ける手段があるのだよ。」

真奈はその言葉に凍りついた。

「お前たち……って、誰なの?」

「いずれ分かるさ、小娘。だが、その前にお前たちの覚悟を試させてもらう。」

その言葉と同時に、地面から無数の魔物が姿を現した。

魔物たちは牙を剥き、一行に襲いかかる。

「真奈、下がれ!」

ラザールが剣を振るい、次々に魔物を切り伏せる。イグナスも軽快な動きで敵を翻弄しながら剣を繰り出していく。

「どうしていつもこうなるの!」

真奈は叫びながら、必死で後方に下がる。

しかし、魔物の一体が真奈に向かって突進してきた。恐怖で体が固まり、声も出せない。

「真奈!」

ラザールが駆け寄るが、間に合わない。

その瞬間、真奈の体が再び光を放った。魔物はその光に触れた途端、消滅してしまう。

「また……この光……!」

ラザールは光に包まれる真奈を見つめながら、剣を握る手に力を込めた。

「間違いない。お前の力は本物だ。そして、それを狙う奴らも次第に動き出している。」

魔物を退けた後、ローブの男は静かに微笑んだ。

「なるほど……確かに強い力を持っているな。」

「お前の狙いは何だ!」

ラザールが男に詰め寄るが、男は答えないまま霧とともに消えていった。

その場に残されたのは、男が呟いた言葉。

「紅月はその姿を変える。鍵を握るのが誰であろうとな。」

ラザールとイグナスは険しい表情で男の消えた場所を見つめる。

「奴の言葉、どういう意味なんだ?」

イグナスが疑問を投げかけるが、ラザールは答えず真奈に目を向けた。

「真奈、先に進むしかない。お前の力で、この謎を解くんだ。」

真奈は迷いながらも深く頷いた。

「私にできることがあるなら……必ずやり遂げる!」

紅月の秘密に近づく真奈とラザールたち。敵対する勢力の影が濃くなる中、ついに彼らは真実に触れる。

さらなる試練が待つ場所へ——。


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