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深緑の谷の秘密

真奈たちは「深緑の谷」へと足を踏み入れた。その地は、霧深く静寂に包まれ、かつて古代の魔族たちが重要な儀式を執り行っていたという遺跡が残る場所だった。だが、その奥には恐ろしい罠と真実が彼らを待ち受けていた——。

深緑の谷へ向かう途中、一行は濃い霧に包まれた森に入った。森の中では木々が奇妙な形にねじれ、枝がまるで生き物のように蠢いているように見える。

「なんだ、この森……ただの自然じゃないぞ。」

ラザールが警戒しながら剣を抜いた。

「霧の中、何かが私たちを見ているような気がします……」

真奈も、嫌な予感を抱きつつラザールの後ろを歩いていた。そのとき、突然霧が濃くなり、周囲の視界が完全に遮られる。

「イグナス! 真奈!」

ラザールが声を張り上げるが、彼の声は霧の中でかき消される。真奈は一瞬にして周囲から仲間の姿が消え、自分が孤立してしまったことに気づいた。

「真奈……」

突如、どこからともなく聞こえてきた低い声に、真奈ははっと振り返った。だが、そこには誰もいない。

「私の名を呼んだの……誰?」

彼女の問いに応えるように、霧の中から一人の女性の幻影が現れた。その姿は、黒いローブを纏い、真奈とは異なる凛とした美しさを持つ女性だった。

「お前が異界の少女か……」

その女性はどこか憂いを帯びた声で続けた。

「お前は、私たちの願いを果たすために召喚された。しかし、その力はお前をも蝕むだろう。」

「えっ……? どういう意味?」

真奈が困惑する中、女性の姿はふっと消えた。そして、その場に残されたのは、古びた石板と不気味な文字が刻まれた円形の台座だった。

霧が徐々に晴れていくとともに、ラザールとイグナスが真奈を見つけた。

「真奈! 無事か!」

ラザールが駆け寄り、彼女の肩を掴む。

「……私は、大丈夫。でも……さっき、誰かの声を聞いたんです。」

真奈は女性の幻影と、台座に刻まれた文字について話した。ラザールは険しい顔をしながら台座を調べる。

「これは古代魔族の文字だ……『受け継ぐ者よ、ここに祈りとともに誓え』と書かれている。」

イグナスが軽く口笛を吹きながら言った。

「おいおい、随分と物騒な場所だな。誓えって、何をだ?」

ラザールは真剣な顔で答える。

「おそらく、この台座に触れた者が何かを選択する必要があるんだろう。そして、その選択は……軽いものではなさそうだ。」

ラザールの言葉通り、台座に触れた瞬間、一行は新たな空間へと引き込まれた。それは霧とは対照的に眩い光に包まれた場所で、周囲には星々が煌めいていた。

「ここは……?」

真奈が目を見張る中、再び女性の声が響く。

「真奈、ここは試練の場。この魔界を救う力を本当に持つ者かどうか、試されるのだ。」

すると、目の前に巨大な魔物が現れた。それは黒い体毛に覆われ、燃えるような赤い瞳を持つ獣だった。

「お前の心の弱さが、この魔物を呼び出した。乗り越えたければ、自らの恐怖に向き合え。」

恐怖に立ち向かう

「私が……呼び出した?」

真奈は震える手で胸の紋章を押さえた。恐怖が心を支配しそうになる中、ラザールの声が背後から響く。

「真奈、お前は一人じゃない。俺たちがいる!」

その言葉に力をもらい、真奈は深呼吸をして立ち上がった。

「私……負けない!」

真奈が決意を込めて叫ぶと、紋章が再び光を放ち始めた。その光は魔物を包み込み、闇を浄化していくように輝きを増していく。

魔物は苦しむように咆哮を上げ、ついには跡形もなく消えていった。

魔物が消えると、再び台座のある場所に戻ってきた一行。そこには新たな鍵が浮かんでいた。鍵を手にした真奈に、女性の声がもう一度語りかける。

「お前は、確かに力を持っている。だが、それはお前自身を壊す危険を孕んでいることを忘れるな。」

真奈はその言葉の意味を理解できないまま、鍵を握りしめた。

「真奈……」

ラザールが優しく彼女の肩に手を置く。

「これが終わったら、必ず真実を探ろう。お前が安心できるようにな。」

彼の言葉に、真奈は小さくうなずいた。だが、彼女の心にはまだ、答えの見えない問いが残されていた。

古代魔族の遺跡を脱した真奈たちに、新たな敵が迫る。その敵が語る、魔界の裏切り者の正体とは……?


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